第43話 俺が何をしたって言うんだ、あんまりだ

「ほらププ!! 今みんな洗ってるんだから、邪魔しないで待ってろよ!」


「ププちゃん、俺と先に湯船に入ってよう。今日は何のおもちゃで遊ぶんだ?」


 俺と晴翔は今、お風呂なのに海水パンツを履いている。何故そうなったか? いや、最初はタオルを巻いて、ラビ達の相手をしていたんだよ。で、まぁ、男同士だから、タオルが外れた所で問題はなかったんだけど。


 お風呂に入ったばかりは、しょんぼりしていたラビ達。でも少しして、俺がみんなを洗うために泡を立てていたら、その泡が空中に飛んで。


 それに最初に反応したププちゃん。自分も魔法で泡を出し、最初は普通のシャボン玉のような泡を出していたけど、だんだんと星やら三角やら、色々な形を作り始め。5分もしないうちの全員が遊び始めた。


 風呂場なのにあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。そしてツルッと滑り、そのまま向こうへ。そしてその滑りでも遊び始め。

 そんなラビとププちゃんとクーちゃんを、捕まえようとする俺達を無視して、まだ綺麗にしていないのに、湯船に浸かろうとするブーちゃん。


 と、みんなでバタバタ動いていたら、タオルが邪魔だろう? でも途中で、タオルを外している時に、母さんがお風呂の中を何かの理由で覗いてきたら?

 前にあったんだよ。協会から緊急の電話だって。こうしてみんなでお風呂に入っている時にさ。で、まぁ、うん。

 

 またそうなると困るって事で、急いで水着姿に交代で着替えた。そして今は、ププちゃんがいると泡で遊んじゃうから、ププちゃんはハルトに任せ。最初にブーちゃんを洗っている所だ。


 実はお風呂大好きなブーちゃん。1週間に2回はお風呂に自ら入りに行き、俺にいい加減上がれって怒られるまで、湯船に浸かっている。

 どんな深さにお湯を張っていても、本人は半分位まで上手にお湯の中に沈んで、後はぷかぷか浮いているから問題はない。よく調節して浮かんでられると思うよ。


 それでさっきから、何度も洗わないで入ろうとするから、先にブーちゃんを洗うことに。ラビ達はオケにお湯を入れてやって、船のおもちゃで遊んで待ってもらっている。


「ブーちゃん、こんな感じで良いか?」


 かなり石鹸を泡立てて、ブーちゃんの体をゴシゴシやってやれば、さらに泡立ち。その後ブラシをかけてやれば、気持ちよさそうな顔をしている。


『にょお』


「ん? 背中をもっとか?」


 注文を受けて、背中をブラシで擦ってやると、満足したのかうんうん頷いた。ブラシには煩いブーちゃんである。ブラシっていうか、お風呂全般において煩い。


 こうして洗った後は、ププちゃんの魔法で、噴水のように温めのお水を飛ばしてもらい、一気にブーちゃんの泡を全て洗い流したら、1匹目終了だ。


 踏み台をゆっくり上がり、ドボンッ!! とお腹をお湯に打ちつけながら入るブーちゃん。そしていつも通りプカプカ浮かび。毎回お腹を打ちつけるけど痛くないのか? と思う。


 続いて、ラビとクーちゃんを同時進行で洗っていく。クーちゃんは石鹸が初めてだったから。いや、手と足は石鹸で洗ったけど。体全体は初めてだったから。ラビにお手本になってもらって体を洗うことに。


 目に石鹸が入ると染みて痛くて大変だから、顔を洗う時は絶対に目を瞑ることとか、舐めても苦いだけで、良いことはないとか。

 ラビの説明をクーちゃんはちゃんと聞いて、これはダメ? これなら良い? といろいろ質問していた。


 そうして出来上がった、2匹の大きな泡ボール。なんか今日はよく泡立って、ラビとクーちゃんは、大きな泡のボールみたいに。


 これがいけなかった。洗わなくていいププちゃん。晴翔と遊んでいたけれど、自分も泡ボールになりたいと飛び出してきて。俺が先に泡立てていた石鹸の中へダイブ。そうして自分でも泡を出したもんだから。風呂場の中に一気に泡が溢れて出した。


 それに喜んだのがラビとクーちゃん。またバタバタと走り出しちゃって。俺と晴翔はそんなラビ達を止めようと、膝下まで溢れた石鹸で滑らないように、動こうとした。けれど……。


『わあぁぁぁ!! みえない~!!』


『きゅい!? きゅいぃぃぃ!!』


『かおについちゃったー!? め、あけられないよぉ!?』


『きゅい! きゅい!!』


『ぷぷぷー!!』


『め、あけたら、イタイイタイになっちゃう!! タクパパたすけて!!』


 ドタバタし過ぎて、頭から全部泡だらけになってしまったクーちゃん。そのせいで慌てて、さらにその辺を走り始めちゃって。俺は何とかクーちゃんを止めようとした。


 けれど俺の後ろに行ってしまったクーちゃんは、俺がすぐに振り向けなくて、オタオタしているうちに、俺の方へ寄ってきて、そのまま俺にぶつかり。俺にぶつかって安心したのか、クーちゃんは俺にしがみ付こうとしてきた。だけど泡で手も足も滑るもんだから。


 掴んだのは俺の海水パンツだった。ようやく掴めた物に、クーちゃんは思いきり、むんずと力を入れ、そのまま海水パンツを引っ張り。そのせいで俺は海水パンツをズラされ、というか脱がされ。


「あなた達、煩いわよ!!」


 それとほぼ同時にドアを開けた母さん。煩いと注意しに来たらしい。


 一瞬俺と晴翔と母さんの動きが止まったが、すぐに母さんはラビ達を怒り、その後俺のことを見てくすりと笑うと、そっとドアを閉めて……。


 その後、無言で海水パンツを直す俺。そうしてププに遊んでいないで全員の泡を洗い流せと言い、泡が綺麗に流されると全員を風呂に入れた。


「まぁ、うん、ドンマイ」


 晴翔が俺の肩を叩く。


「家族だって、俺は男なんだ……。俺が何をしたっていうんだよ。今日はみんなのためにポーション配信をしただけだろう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る