第31話 追放した人達の現在(3)

「よし! 討伐完了だ!!」


「修也、今回もうまく行ったな」


「ああ、これでだいぶ俺達の評価も上がるだろう」


「こんなに上手くいくなんてね。人が違うとこんなに変わるなんて。あいつが辞めた時も楽になったとは思ったけど」


「ええ、それ以上ですね」


「これもやっぱり、上川さんが俺達に力を貸してくれたおかげだな。そしてお前のおかげだ。本当に助かるよ、武」


「いいえ。俺は荷物持ちなだけですよ。全ては修也さん達の力です。さすがリーダーが自ら声をかけた人達です。リーダーはなかなか、自ら他に声をかけることはないんですよ」


「あら、そうなの。ほら、修也。やっぱりそうなのよ。これで証明されたじゃない。私達の実力は相当なものだって」


「おい、あまり調子に乗らない方が良いぞ」


「そうですよ。調子がいい時ほどしっかりしなければ。足元をすくわれるかもしれません」


「あら、ごめんなさい。私ったら」


「皆さん、なんて素晴らしいんでしょう。少し前に我々のギルドから追放された人達とは大違いです」


「何だ? 追放された奴らがいたのか?」


「はい。皆さんのように最初はとても調子が良く、どんどんレベルを上げていったんです。ですが今の皆さんと同じような会話が少しずつ増えてくると、だんだんとミスが多くなり。最後は自分達の力を過信し過ぎて、ギルドに大きな損失を与える事に」


「そんなバカな奴らがいたのね」


「そうなんです。リーダーのおかげで、すぐに持ち直すことはできましたが。ですがその人達と違い、あなた方はちゃんと自分を律することができている。それはとても素晴らしいことです。きっとリーダーは、そういうところが気に入って、あなた方をギルドへ勧誘したんでしょう」


「ふっ、そうか」


「私達は自分達のことを、しっかりと分かっていますからね」


「まったく、本当にあの疫病神を追放して良かったわね。あいつがいたら今頃まだ、ギルドに入れていなかったかもしれないえわ。あいつの力不足のせいでね」


「誰か追放を?」


「ああ、こっちの話しだ。しかしどこにでも、役に立たない奴はいるもんだな。さぁ、そろそろ外へ出るぞ」


「どうする? そのまま協会へ行くか?」


「ああ、今日は予定よりも早く終わったからな」


「ねぇ。早く終わったんだから、協会の後は自由よね」


「ああ、そうだが?」


「今日はこれから、買い物に行く予定なのよ。新しい洋服を買おうと思って」


「何だよ、また洋服かよ」


「何よ。私達は期待されているのよ。それなら普段からしっかりと自分を見せなくちゃ。それには外見も大事よ。あなたも少しは外見を気にしたら?」


「何だと?」


「おい、止めろ。協会の後は各自、自由にしていい。何をするのも自由だ。だが自分達がどんな存在なのか、忘れずに行動しろ」


「分かってるわよ」


「でしたら私はやはり、高級魔法薬店へ行きましょうかね」


「俺は武器屋だな。新しい店ができたんだよ。しっかり売っている物を確認しないとな」


「やはり素晴らしい!! 俺はなたた達に同行できて幸せです!!」


「よし、外へ出るぞ」


 荷物持ちの武を、もしもの時のために先に歩かせ、俺達も歩き始める。今日もギルドから出されている、それぞれのノルマの素材を全て集め、さらに多くの貴重な素材を手に入れる事ができた。


 俺達がオジットギルドに入ってから数週間。俺達はさらに力をつけたと実感できるほど、実績を残せている。まぁ、オジットギルドに入った時は少し驚いたが。


 各グループごとにノルマがあり、そのノルマがクリアできないと、ペナルティーとして、自分達が持っているアイテムや素材を没収される。

 しかもそのノルマがキツいため。俺達が入ってからまだ数週間なのに、2人の人物が追放されたくらいだ。そにため、もしかしたら俺達も、と一瞬最悪な事態を想像したが……。


 オジットギルド、ギルド長の上川さんが、俺達のパーティーに加えてくれた武は、今までの荷物運びとして、1番使える人物で。少しならば戦闘をできるため、俺達は動きやすく、難なくノルマを達成できた。


 それだけじゃない。ノルマ以上の成績を次々と上げたことで、俺達は数週間ながらにして、ギルドの上位に入ることができたんだ。これで次の試験では、良い成績を収めることが出来るだろう。


 まったく、こんなに順調に全てが動くとは。本当にあいつを追放してから、良い事ばかりだ。これで俺達の計画も進むというもの。


 俺達が何のために、オジッドギルドに入ったのか。周りにバレる事なく、だがこうしてギルド内での知名度は上がり。また俺達の配信を見て、一般人の俺達に対する知名度もさらに上がって、今のところ良い事ばかりだ。


 と、俺達の前を歩いていた武が話しかけてきた。


「すみません修也さん。お話しが」


「何だ?」


「明後日の討伐なのですが、その日は現場へ直行して良いでしょうか」


「何だ? 荷物はどうする?」


 いつもダンジョンに行く日は、ギルドで俺達の荷物を全てこいつに渡し、俺達は最低限の荷物しか持たずにダンジョンへ向かう。その方が初めから全力で動けるからだ。使うか使わないか分からない荷物を、持たせるという感じだな。


 だが直行ということは、俺達の荷物は持てないという事。前日に持たせても良いが、こいつの用事のために、俺達がわざわざこいつに会いに行くのもな。


「妹の診察が朝からあるのですが、どうしても母が朝早くは付き添えず。母が来るまで私がやりたいと。ですので病院から直接ダンジョンに、行かせてもらえればと思ったのですが」


 こいつには病弱な妹はいて、よく世話をしに病院へ行っている。本音としては妹なんて放っておけと思うが、ここは良い顔をしておかないとな。


「ああ、それなら構わないぞ。妹を優先しろ。いつもお前には世話になってるからな」


「ありがとうございます!!」


 ふんっ、良いよに使われているとも知らないで。そうだな、俺がギルドを立ち上げる時は、こいつも連れて行くか。荷物運びの能力は高いからな。


「いやねぇ、あんな事言っちゃって」


「ふっ、これも計画のうちですよ」


「チッ、次は荷物を持ってかなきゃならないのかよ」


 さて、次のノルマもすぐに終わらせて、俺は新たな魔獣でも捕まえに行くか。

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