第9話 俺のメインスキルと家族との出会い
「何だよ」
『にょおぉぉぉ』
「やって欲しいって?」
『にょおぉぉぉ!』
「昨日、動きすぎたからやって欲しい?」
『ぬにょおぉぉぉ!!』
「動きすぎって、確かのあんなに動いたのは初めて見たが、それでもあそこまで歩いて、ぬいぐるみを取っただけだろう」
『のおぉぉぉ』
ブーちゃんがお腹を出して寝転ぶ。
「あ~、疲れた、って。あれくらいで疲れるんだったら、お前達カプリシャスキャットは、あの何があるか分からない危険なダンジョンで、どうやって生きてるんだよ。いや、ブーちゃんが特別動かないだけなのか? はぁ、分かった分かった、やってやるから。ラビ達も一緒にやるか?」
『きゅう!!』
『ぷぷ~!!』
「よし、じゃあ、順番だ。まずはブーちゃん」
準備が終わって家に帰ってきた俺達。夕方まで俺と晴翔は配信関係の仕事をして、ラビ達は自由に過ごした。そして晴翔が帰った後、夕飯前にお風呂の入ろうと思ったら、ブーちゃんがあるお願いをしてきて。結局ラビ達全員に、ある事をする事になった。
そう俺のメインスキルをみんなに使うんだ。俺のメインスキルの名前は『魔獣専用パーフェクトヒーリング』と言って、その名の通り魔獣にだけ効く癒しの力だ。
5歳の時にスキルを確認しに行って、魔獣契約と火魔法については、ちゃんとスキルが表示されたんだけど。なぜかこの『魔獣専用パーフェクトヒーリング』は、『※※※ヒーリング』という感じに、魔獣専用の部分が表示されず。実は1年半前まで、この表示が何なのか分からないまま、俺は過ごしていたんだ。
ただダンジョンに入るために、他の人達とパーティーというグループを作るんだけど。俺の不明表示のヒールは、今までの歴史の中であったことがなく。
もしかしたら凄い能力かもしれないと、高ランクパーティーが俺を誘ってくれて、晴翔と共にそのパーティーに加入する事に。
だけど1年半が過ぎても、結局俺の能力は目覚めることなく、パーティーから追い出されてしまった。
でも、その事に関しては、俺は別に何とも思っていない。実力が全てのこの世界。役に立たなければ追い出されるのは当たり前だからさ。
パーティーから追放されたのは洞窟の中だったため、俺はすぐに洞窟から出ようとした。が、ここでまさかの事態が起こった。そう、俺の人生を大きく変える出来事が、2つも起こったんだ。
まず最初の出来事。それは、ラビと出会ったことだ。その時はまだ、野生の魔獣だったラビ。本来ならラビ達のような、そこまで強い魔獣達は、人の姿を見るとすぐに逃げるんだけど。何故かラビは逃げずに俺に近寄ってきて。俺はそんなラビに興味を持ち、様子を見ることに。
だけど、ちょっと調べただけで、そんな悠長な事を言っている場合ではない事に気づいた。何故かラビは外傷はないものの、完全に疲れ切っていて、今にも倒れそうな状態だったんだ。
すぐに回復させてやりたかったが、何しろその時の俺は、何故か表示されないヒーリングしか、回復系の魔法を持っていなかったからな。ラビを回復することができず。
撫でてやるしかできないと、ラビの頭にそっと触れた俺。その時だった。俺の中で何かが弾けた感じがした後、心の中で『※※※ヒーリング』の表示が、『魔獣専用パーフェクトヒーリング』へと変わった気がして。
俺はすぐに力を使ってみた。するとすぐにラビは、半分まで元気を取り戻し。力を確信した俺は、さらにラビを回復。それでラビが完璧に元気にすることに成功したんだ。
しかしそれで終わりじゃなかった。ラビを回復した俺だけど、その時俺は、ラビに何かを感じ。ラビも俺に何かを感じたようで。ここでそれまでは使ったことがなかった、魔獣契約をする事に。こうして俺とラビは家族になったんだ。
これが俺の人生を大きく変えた2つの出来事だ。スキル名が分かってからは、協会にスキルの申請をしたり、協会が俺のスキルを調べたりと、大忙しだったけれど。それが一応の終わりをむかえれば、俺達の新しい生活が始まった。
今まではダンジョンにばかり潜っていたが、せっかくの魔獣専用の癒しスキル。この力を最大限に使わなければと。晴翔と共にダンジョンでの戦いで疲れた魔獣達を、日常の生活でも疲れているかもしれない魔獣達を、癒してあげられることがしたい、と話しがまとまり。
ダンジョンの戦闘配信は、かなりの人達がやっていたから、そっちはその人達に任せて。俺と晴翔は、まだ誰もやったことがなかっただろう、魔獣達のための癒しスローライフ配信をする事に。それが俺達の配信の始まりだった。
まさか魔獣専用のスキルとは思っていなかったけど。俺みたいなスキルがあって良いよな。そりゃあダンジョンの戦闘では使えないけど、俺は疲れた魔獣達を癒せる方が良いよ。だって魔獣だって疲れるに決まっているんだから。
俺達の配信で、俺達が他にやっている副業で、少しでもみんなが、まったりゆっくりできるなら、な。
「じゃあ、やるぞ」
『みにょおぉぉぉ』
へいへい、早くやれってか。はぁ、なんだろう、みんなの疲れが取れれば? まったりゆっくりできれば? 確かにそう思っているけど。昨日の歩きだけで疲れたって言うのはどうなんだ?
どちらかと言えば、前半おんぶをしていて、ぬいぐるみをゲットした後は、またずっとブーちゃんをおぶっていた俺の方が、疲れていると思うんだが?
「ヒーリング!」
光が溢れ、その光がブーちゃんの疲れをとっていく。まだ俺は上位魔法のパーフェクトヒーリングが使えない。今訓練中だ。いつか完璧に使えるようになって、どんな疲れでも取ってあげられるように頑張らないとな。
光が消えて、ブーちゃんの回復が終わる。
『みにょおぉぉぉ!』
もっとやれだと?
「疲れは取れただろう? ラビ達と交代だ」
『ぬにょお』
何だ? 意地でも退かないつもりか?
『きゅいぃぃぃ!!』
『ぷぷぷー!!』
『ぬにょおぉぉぉ!!』
この後ラビとププちゃんの攻撃されても、動かなかったブーちゃん。それにまた怒ったラビ達との攻防戦のすえ、ブーちゃん達は母さんに、長い説教を喰らう事になった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*
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