第8話 それぞれの好きな事

「いやぁ、昨日はビックリしたな」


「まったくだ。あんなにブーちゃんが動くなんて」


「でもよく見つけたよな、あんなにそれぞれにそっくりないぬいぐるみ。しかも遠くにいて見つけたんだろう?」


「ああ。案外ブーちゃん達カプリシャスキャットは、目が良いのかもしれないな」


「魔獣達をそれぞれ調査しているとはいえ、まだまだ分からないことの方が多いもんな」


「まぁ、本人が気に入ったなら何でも良いさ。絶対にあのぬいぐるみから離れないし、よほど嬉しかったんだろう。ラビとププちゃんにも貸さないんだよ」


「そうなのか!? へぇ、本当の気に入ったんだな」


「だからラビとププちゃんが怒ってる」


「はははっ、それは仕方ないさ。ブーちゃんのなんだから」


「さて、じゃあ次の配信の準備でもするか」


「そうだな。まずは持って行く物だけど……」


 衝撃の光景を見た次の日。俺達は次の配信の準備をするために、俺達が借りている倉庫へ来ていた。配信には色々な物が必要だからな。


 俺は両親と妹と、一軒家に住んでいて、最初のうちは家の倉庫を借りてた。でもだんだんと荷物が増えちゃって、配信と副業、時々入るダンジョンの戦利品などで、お金が貯まってからは、少し大きめの倉庫を借りたんだ。


 それと畑なんだけど。畑は親戚から譲り受けた物だ。親戚の集まりがあった時、その頃俺は、ラビが興味を持っていた野菜を育ててあげようと、畑を探していたんだけど。


 もう歳で、畑を止めようとしていた親戚のご夫婦がいて。俺の話しを聞いて、良かったら畑を使わないかって、声をかけてくれたんだ。そらで場所を聞いたら、俺の家からは1時間くらいの所に畑はあって、距離も問題ないってことで、俺はすぐに畑を借りることに。


 最初は借り賃を払っていたけれど、今は畑を買い取って、完璧に俺達の畑になった。ご夫婦は時々畑に来て、ラビの畑仕事を見て喜んでくれているし。それに時々畑仕事も手伝ってくれて、色々なことを習うことができて、とてもありがたい。


 あと、畑仕事って言ったけど、俺達のメインの仕事は配信で、畑仕事は副業の1つだ。他にもいくつか副業をしていて、そちらもありがたいことに、賑わってくれている。その副業に関しても、今度順番に配信予定だ。


「ラビ、今度はどの種を植えるんだ? 植える予定の種をこのカゴの中に入れておいてくれ。俺は肥料や他の道具を用意するから」


『きゅう!!』


 3匹の中で畑担当のラビ。野菜を交配させて新種を生み出すくらいだからな。野菜については俺なんかよりも、よっぽど詳しいんじゃないかって思う。


 今も俺の言うことを聞いたあと、それぞれ種をその場に出して、良い種と悪い種に分けて。良い種だけをカゴに、悪い種はささっと自分で食べて処分している。


 ただ種置き場と、種を仕分けするラビ専用の机の側で、ブーちゃんがドダァと寝ているため、時々ブーちゃんで躓きそうになり、イラついたのかバシバシとブーちゃんを蹴っているけど。


 それに動じないブーちゃん。でもこれ以上ラビをイラつかせると、俺みたいのドロップキックを受けるといけないから、俺は暖かい場所へブーちゃんを移動させた。


『ぷぷ~!』

 

 俺が肥料が置いてある場所に移動すると、ププちゃんが元気にジャンプしながら寄ってきた。それから体の中から昨日買った、花ポットを取り出す。

 

「ああ、ププちゃんも、昨日買った花と植木、それから花の種を持っていこうな」


『ぷぷ~!! ぷ~ぷ?』


「はは、大丈夫だよ。ププちゃんのお花の場所は、まだまだいっぱい植えられるから。それに畑の周りにも植えて良いからな。だから安心しろ」


「ぷぷ~、ぷぷ~!!」


 喜び俺の周りを何回か跳ね回ったププちゃん。それから出した花ポットを、また自分の体に入れて、持って行く物が集められている場所へ持って行くと、そっと花ポットを置き。また別の花ポットを取りに行った。


 ププちゃんは花や草や木といった、自然の物が大好きだ。特に花が大好きで、家の花壇は全て、ププちゃんが好きな花で埋め尽くされている。

 ラビ同様、花には煩く、水やりの時間や量、それに肥料にもこだわりを持っていて。その辺も自分でしっかりと管理しているぞ。そのおかげか、他の家の花と比べてうちのは、イキイキとし平均よりも長く、花を楽しむ事ができる。


 そしてそんなププちゃんは、花が大好きな母さんと合わないわけがなく、何もない日は庭に出て、母さんと一緒に土いじりをしている。

 前にさ花の事で盛り上がっている最中に、父さんが自分の靴下がないと、くだらない事で声をかけたもんだから、長い時間2人から怒られる事に……。


 2人が一緒の時は、危険が迫っている時以外は邪魔をしちゃいけないんだよ。もしも邪魔しようものなら、逆に危険な目に遭うんだから。

 父さんもそれがあって以降、2人が一緒にいる所を見ると、そっとその場を離れるようになった。


 ちなみに父さん、実は高ランクプレイヤーで、時々協会から個別で仕事が入る。プレイヤーって言うのは、ダンジョンに入って活動する人達のことだ。


 毎年ランク試験行われていて、自分がその時に試験を受けたければ受ければ良いし、いつ受けるかは個人の自由だ。ランクはE~SSSまであり、最高ランクがSSSで、父さんはAランク。俺は一応Bランクだ。


 ダンジョンにもランクがあって、こちらはF~SSSまであり。やはりSSSが最も危険とされているダンジョンで、自分のランクによって、入れるダンジョンが決まる。俺はBまでのダンジョンなら入れるぞ。


「さて、肥料はこんなもんで良いか」


「そうだな、後は昨日買った栄養剤を混ぜれば良いし、花と野菜の方はラビとププちゃんが用意してくれたからな。後は道具を用意して、こっちは一応終わりだな」


「後は明日のお昼ご飯を作って……」


 俺は言いかけて、後ろを振り向く。そこには今まで向こうで寝ていたはずのブーちゃんが、転びそうになりながらも一生懸命お座りをしていた。

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