第7話 ブーちゃんの緊急配信2
「ブーちゃん止まりました。あそこはぬいぐるみ売り場ですね。あそこに何があるのか、行ってみましょう」
“ん? ぬいぐるみ?”
“食べ物系じゃなかった!?”
“これはかなり予想外なんだが”
“誰も予想できんだろう”
“ブーちゃん、ぬいぐるみに何の用が?”
俺と晴翔はそっとブーちゃん達に近づいた。ブーちゃんはまっすぐ前を見て歩いていたけれど、止まった後は完璧に左を向いて。いつもはベッタリと地面にくっついた、寝る姿勢をとるのに、しっかりと座れの姿勢をしていた。
が、体がまんまるで手足の短いブーちゃんが、姿勢を保てるわけもなく。体勢を維持できずに、後ろに転がりそうになり、慌てて俺とラビとププちゃんが背中を支えた。
“やばっw”
“まぁ、ブーちゃんはそうなるわなw”
“真面目に座ろうとしてるから余計にw”
“ラビたんが嫌そうな顔してるw”
“お腹痛いwww”
“やべ、俺ブーちゃんのファンになりそう”
“今まで誰のファンだったんだよ”
“今ここには、ブーちゃんファン多いだろうな”
「ブーちゃん、おやつやご飯以外で久しぶりの座れの格好です。俺も1ヶ月ぶりには見ました」
“1ヶ月ぶり!?”
“家族もなかなか見られないレア姿勢w”
“ブーちゃん24時ってやってもらえないかなw”
“ずっと寝てるの見て終わりそうw”
視聴者さんの言った通り、俺も支えているとはいえ、重いだろうラビとププちゃんが、少し嫌そうな顔をしている。
それにしてもブーちゃんはどうしたんだ? 支えている手はそのままに、俺はブーちゃんが見ている方を見た。するとそこには俺の手サイズの、ラビのフェザーラビットと、ププのスライムと、ぶーちゃんのカプリシャスキャットの、ぬいぐるみが置いてあった。
他にも色々な魔獣のぬいぐるみが置いてあったが、たまたまなのか、ラビ達3匹のぬいぐるみが、並んで置いてあったんだよ。
『んなあぁぁぁ』
『きゅう!!』
『プププ!!』
自分達のぬいぐるみに気づき、ラビとププちゃんは興味津々。ブーちゃんも相変わらずぬいぐるみを凝視している。
もしかして自分達のぬいぐるみがあったから、今のラビ達みたいに興味が出て、わざわざここまで来たのか? いつもは動かないブーちゃんが?
と、不思議にブーちゃんを見ていると、またブーちゃんが動き始め、最初に向かったのはラビのぬいぐるみの前だった。
そして1体のラビぬいぐるみを咥えると、本物のラビの横へ持って来て置き。ラビとぬいぐるみを何度も見比べてから頷いて、次はププちゃんのスライムぬいぐるみの方へ。
そうしてラビの時同様、1体のププちゃんそっくりなぬいぐるみを咥えると。ププちゃんの所へ持って来て置き、ププちゃんとぬいぐるみを見比べてうんうん頷いたんだ。
そして最後は自分のぬいぐるみの所へ。他の2体に比べて、すぐにぬいぐるみを咥えると自分の隣に置き。最後に俺に向かって大きな声で鳴いてきた。
俺はそれぞれを確認してみる。それから棚に残されているぬいぐるみも確かめて見て。そうして気づいた、もしかしてこれはって。それは視聴者さんも同じだった。
“なぁ、もしかしてこれって”
“それぞれに似てるぬいぐるみを見つけたのか!?”
“やっぱり俺の勘違いじゃないよな。棚に残ってるぬいぐるみよりも、ブーちゃんが選んだぬいぐるみの方が、ラビたん達に似てるよな”
“まさか、あんな離れた場所からそれに気づいて、ここまで歩いて来たってことか!?”
“ブーちゃんの視力どうなってるんだよ”
そうだよな、やっぱりそういう事になるよな。ブーちゃんはわざわざ似ているぬいぐるみを見つけて、ここまで歩いて来たらしい。そして。
コメント欄を見ている時だった。ブーちゃんがまた動き始め、全員のぬいぐるみをまとめて咥えると俺の前へ。そして自分に体で守るように、ぬいぐるみを短い手で何とか包んで座った。
『ぬにゃあぁぁぁ』
「このぬいぐるみが欲しいのか!」
『にょおぉぉぉ!』
いつもに増して元気なブーちゃんの鳴き声。本当にこのぬいぐるみが気に入ったらしい。
「分かった、お前が食べ物以外を欲しがったのは初めてだしな。買ってやるよ」
そう言ってからぬいぐるみをカゴに入れようとする俺。だけどどうしたことか、ブーちゃんはぬいぐるみを離そうとしない。
「どうしたんだ? ぬいぐるみを買うのだろう?」
『にゃあぁぁぁ』
“もしかしてブーちゃん、離したくないのかな?”
“ずっと自分で持っていたいとか?”
“よっぽどそのぬいぐるみが気に入ったんじゃないの?”
視聴者さんの言葉に、俺はブーちゃんに聞いてみる。すると元気な声で、
『みにゃあぁぁぁ!!』
と鳴いたブーちゃん。視聴者さんの言うとおりらしい。だけどな……。
「一緒にいたいのは分かったけど、でもお前1匹でずっと運べないだろう。今は少しだからまとめて咥えられたけど、ずっとは無理だろう?」
『むにゃあぁぁぁ』
再びしっかりと手で包み込むブーちゃん。本当に気に入っているらしい。だが困ったな、と思っていると。俺達の撮影を見ていたお店のオヤジさんが、俺たちに話しかけてきた。
「それなら良い物があるぞ。今日はお前さんがたくさん動いた記念だからな。ついでに買ってもらえ。こっちも売り上げになるしな、ガハハハハッ!」
そう言って向こうの棚へ移動したオヤジさんは
“何だ? 良い物って?”
“ブーちゃん、売上に貢献しとるw”
“そうだそうだ、いっぱい買ってもらおう!!”
“で、ぬいぐるみを可愛がっているブーちゃんのお腹にダイブさせてくれ”
“丸いお尻に顔をうずめさせてくれ!!”
時々くる、何とも言えないコメントは何なんだ? この前も居たし。そんなに顔をうずめたいんだろうか? まぁ、それを現実にやる奴が、俺の近くにいるけどさ。
ブーちゃんのお尻に顔なんか埋めてみろ。顔中毛だらけになって、ずっとチクチク痛いだけだぞ。
オヤジさんは手に何かを持って、すぐに戻ってきた。そして持ってきたものは、幼稚園生が使うような肩掛けの小さなカバンだったよ。
そのカバンに、顔だけ出した状態で3体のぬいぐるみを入れると、オヤジさんはうまい具合にブーちゃんに肩掛けカバンをかけてくれて。
大満足顔のブーちゃん。そうして全てが解決すると、散々動いてもう疲れたと、俺におんぶを要求してきた。
“ブーちゃん、大満足の回!!”
“ブーちゃんのこんな可愛い姿が見られるなんて!!”
“ブーちゃん、良かったねぇ。これからはずっと一緒だね”
“俺、ブーちゃんに対する印象が変わったよ”
“ラビたんもププちゃんも可愛いけど”
”うん、ブーちゃんは親父な感じが良かったけど、今度からは可愛いも増えた”
“俺ブーちゃん推しになろっと”
その後もコメント欄は大盛り上がり。こうしてこの日の緊急配信は、平日の昼間にも関わらず、かなりの視聴者さんがきてくれて大成功し。
そして後日配信したアーカイブ配信も、ブーちゃんが動いて、大好きな家族のぬいぐるみを入手した回として、かなりの視聴回数を獲得したのだった。
ちなみにぬいぐるみを入れいているカバンだけど、あれから夜寝ている以外は、絶対に持ち歩くようになり、ブーちゃんのチャームポイントとなったんだ。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*
お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
こちらカクコンに向けて書いた作品です。
『これは面白い』
『続きが気になる』
『もっともっと読みたい』
そう思ったらフォロー、コメントをしていただけるととても嬉しいです(*^ω^*)
是非下にある星評価とレビューをお願いします。
皆様の評価が執筆の励みになります!!
よろしくお願いいたします・:*+.\(( °ω° ))/.:+
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます