第25話 臆病者


3人はカンブリア帝国を出て洞窟へ向かって歩いていた。


『で、お前ら名前は?』


『オレはタルボ』


『僕はカリスです』


『ふぅん。それでオレに何を聞きたかったんだ?』


『え?』


『さっきオレと話したくて来たって言ってだろ?』


『あぁ。オレ達は戦闘職の神託を受けて、これから先どこかで神殿にパーティーを組まれ討伐の旅に行くことになるだろう。だけど、何を準備したら良いのかとか、何に気をつけるとか、まずどうするみたいな所を経験者に聞きたかった。アドバイスが欲しかったんだ』


『なるほど。ようするに討伐の旅に対してビビりまくってるから、少しでも安心できる材料が欲しかったわけだな。わかるわかる。』


『なっ!!誰がビビってるって!?オレはビビってなんかいない!!』


『ははは、臆病者と呼ばれることに嫌悪するくちか?くだらない。』


『はぁ?何がくだらないって言うんだ!?』


『いいか?討伐、、、いや、冒険と言うべきか。本気で冒険に出るのであれば、臆病者と呼ばれることを恐れるな。世の中で【勇敢】と呼ばれるヤツほど早死にする。臆病者で何が悪い?生き残る為には常に慎重になれ、頭を使え、利用できる物は利用しろ』


『なっ!?勇敢な戦士こそ戦う者として最高の誉れじゃないのか!?』


『くだらねぇ。少なくともオレはそうは思わないし、勇敢イコール馬鹿だと思うね』


『くだらないとはなんだよ!!』


『まぁそう熱くなるなよ小僧。お前もいずれわかる日が来るだろうよ』


『わかるもんか!!』


なぜだろう。この時おじさんの目が少し寂しそうに見えた。


正直言うと、僕はこのおじさんの考えに全面的に同感だ。

タルボはそうじゃないみたいだけど。。。


『すいません。ひとつ聞いても良いですか?』


『なんだ?』


『おじさんが戦いにおいて大事にしていることは何ですか?』


『戦いにおいて大事なことは、、、そうだなぁ。【自分に何ができて、何ができないか】を知ることだな』


『それはどういうことですか?』


『戦いの最中に自分の弱みを補う、自分の強みを活かす。これは当然のことだろ?だがその自分の弱みや強みを全くわかっていなかったとしたら?どう戦うんだ?闇雲に戦っていてはいずれ敗れるぞ?それはさすがにわかるだろ?』


『はい』


なるほど。

おじさんの言葉は、僕にとってはスッと納得させられる。

僕の強みはなんだろう?

ぜんぜん思いつかない。

弱みは、、、考え出したらキリがないくらいに弱みはいっぱいあるな。。。


『チッ、モンスターがにみつかっちまったようだ』


そう言われ少し先を見ると、

ワンホーンラビット、長いツノが特徴のウサギ型のモンスターだ。

初めて見た。


『めんどくせぇが、、、しょーがねーな』


そう言っておじさんは走り出す。

凄まじいスピードだ。

左、右とフェイントを入れてから、モンスターの左側に回りパンチを繰り出した。たぶん。


キラキラキラキラ*


一撃だった。


おじさんの移動も攻撃も速い、、、いや速すぎた。


『なっ!?なんて、、、』


おじさんの速さにはタルボも驚いているようだった。


『チッ、たったのこんだけか。あと少しで洞窟に着く、それまでは出来る限りモンスターを避けていくが、洞窟ではどんどんいくぞ。』


おじさんは宝石を拾いながらそう言った。


『はい!!』


『了解』


そして3人はまた歩き出し、洞窟へ向かっていった。


その後も数回モンスターと遭遇し、戦闘になったが、、、

おじさんは難なくモンスターを倒していった。

僕とタルボは何をするでもなく、おじさんの戦いを見ていた。

目で追えないほどの動きを必死で追いかけた。

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