第24話 カマラとの出会い
宿屋に着くと、何やら中が騒がしい。
『なんだなんだ?喧嘩か?』
『どうかな?出直す?』
『馬鹿言うなよカリス、そう何度もカンブリア帝国に来るほど時間はないかもしれないんだぞ?今日を無駄にしたくない。行くぞ』
『う、うん』
いつも思うが、タルボこそ【勇者】じゃないだろうか?
決断力や行動力が半端ない。
時に無謀とも思える行動を取るけど、慎重さもあって、、、僕なんかと比べたら【勇者】の資質100%って感じなんだよね。
宿屋の扉を開けると、、、
『だから数日でいいから待ってくれよ!!』
『いいやダメだね。カマラ、あんたもう10日分も代金のツケがたまってるのよ?そんな人を今日も泊まらせてたらウチが潰れちまうよ。とっとと部屋を空けておくれ』
『そこをなんとか頼むよ。ちゃんと狩りに行って稼いでくるからさ』
『狩りに出たからってそんなすぐに稼げるわけないじゃないか。今日から数日待った分を入れたとしたら100G以上になるんだよ?ここらのモンスターをちょっと狩ったくらいで、とてもじゃないが払ってもらえるとは思わないね』
『わかった。北の洞窟へ行ってくる。それならいいだろ?』
『それこそ現実的ではないじゃないか。あんた1人で北の洞窟に入って生きて戻って来られないよ。悪いことは言わないからやめときな』
『それは、、、ん?なんだお前らは?』
言い争う2人の視線が僕らに集まる。
『あらいらっしゃい。何泊する予定?部屋なら今すぐ空けるからね』
『だから待ってくれって言ってんだろ!?』
『いいや、待たないね』
『あ、あの!!僕ら泊まりに来たわけじゃありません』
『客じゃないのかい。じゃあいったい何の用だい?』
『そこのカマラさんと話したくてさ、ちょっと借りてもいいかな?ご婦人にとっても悪い話じゃないからさ』
『ほう。それはどういうことだい?』
『オレ達2人がカマラさんと一緒に北の洞窟に入ってくるよ』
『『『!!!!???』』』
『ちょっとタルボ何言ってんの!?』
『ははは、こいつはいい。じゃあ婆さん、そーいうことならいいだろ?』
『はっ、何を言ってんだい。こんな子供2人連れて何ができるって言うのか。いいかいアンタ達、偽善やカッコつけて命落とすのが【英雄】なんかじゃないよ。そういうことは勢いで言うもんじゃない。さっさとうちに帰りな』
『ご婦人、オレ達は戦闘職なんだよ。オレは【剣士】でこいつは【勇者】。2人でレベル上げだってしてるし、2人ともレベル5なんだぜ?』
『へぇ。2人でレベル上げしてるなんてスゴイじゃないか。よく頑張ったね。しかも1人は勇者様とはね。だったら尚更北の洞窟はやめときな。頑張って上げたレベルも無駄になるよ』
『無駄になるってどういうこと?』
『死ぬってことさ。北の洞窟の適性レベルは、10レベルだよ。たったのレベル5で、そんな貧相な装備じゃ話にならないね』
『うっ』
さすがのタルボも言い返せないようだ。
僕は内心ホッとした。
『じゃあこうしないか?北の洞窟に入った所でオレがお前らのレベル上げに付き合ってやる。HPが少なくなったり、危なくなったらすぐに洞窟を出られる場所でな。その代わり、モンスターの宝石はオレがもらうぞ。どうだ?』
『おっさんはそんな強いのか?』
『まぁな。オレは【拳士】でレベル18だ。』
『レベル18!?めちゃめちゃ強いじゃねーか、なんでカンブリア帝国にいるんだ?』
『オレくらいのレベルで1人でやっていくにはこの辺りがちょうどいいのさ』
『そっか。カリスどうする?』
『ぼ、ぼく!?おじさんが強いのはわかったけど、戦闘になったらほぼおじさんが1人で戦うってことですよね?だとしたら僕ら2人はレベルなんて上がらないんじゃないですか?』
『なんだ、そんなことも知らないのか?基本的にパーティーで戦闘した場合、きっちり人数分に経験値は分けられる。例えばスライムだが、スライムの経験値を4とすると、4人で倒すと経験値は1人1しかもらえない。しかし、1人で倒せば4もらえるってことだ。』
『え!?そーなの!?じゃあオレ達2人で毎日レベル上げしてた時、オレがどんだけ多く倒しても、カリスと同じ経験値しかもらえてなかったってことか』
『そうなるな』
『だから同じレベルなのか。オレのがいっぱい倒してるのになんで同じレベルなのかずっと疑問だったけど、これで納得いった』
『だから、オレが倒しまくる。お前らは逃げまくりながら、オレがやられそうになったらオレを回復する。オーケー?回復魔法が使えないなら薬草をしっかり買っておけよ』
『それならこいつが【初級回復魔法】を覚えてるよ』
『お、さすが【勇者】なだけはあるな。じゃあそれでいこうか。今から行けるか?』
『陽が暮れる前までなら大丈夫』
『オーケー。てことで婆さん、少し待っててくれよ。少し稼いでくるから』
『はぁ。勝手におし。アンタ達2人、死ぬんじゃないよ?子供に死なれちゃ寝覚めが悪いからね』
『は、はい』
『ははは。オレがいるんだし、北の洞窟って言っても入り口周辺だ。安心しろって。じゃあ行くか』
『はい!!』
こうして急遽【北の洞窟】へと向かうことになった。
【北の洞窟】がどんな所かも知らないままに。
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