第6話 新しい景色
神殿の中に入ると、武装した兵士が2人立っていた。
兵士の後ろには真っすぐに奥へと続く廊下があり、その廊下は人と人がギリギリすれ違えるほどの広さしかない。
『ここはカンブリア神殿。3人共神託を受けに来たのか?』
『ええ、そうよ』
『中に入れるのは1人ずつだ。まずは誰から行く?』
『もちろん、私が行くわ!!2人ともいいかしら??』
『私はいいよ。むしろビニアより先に行くのは嫌かな』
『僕も問題ない。僕は最後に行くよ。』
『じゃあ決まりね。行ってくるよ。』
ビニアの表情に初めて緊張の色が見える。
神殿の奥へと進むビニアを見送る。
ジュラも無言でビニアを見送っていた。
ビニアの姿が見えなくなると、ジュラが僕の方を見た。
『カリスくん、今日カリスくんがいてくれて良かった。ビニアと2人だけだったら、今私は1人きりだもの。』
『僕も君たち2人がいてくれたお陰でかなり心が楽になったよ。』
『カリスくんが?』
『うん。僕には夢があってさ、それが叶うかどうかが今日決まるでしょ?不安で不安で仕方なかったんだ』
『そーだったんだ。カリスくんの夢って?』
そこで兵士から声がかかる。
『よし、次の者入れ』
ビニアの神託は終わったのか?
さっぱりわからないが、もしかしたら兵士は奥の部屋と通信器で繫がっているのかもしれない。
『カリスくん、私行ってくるね』
『うん。』
また後で、とは言わなかった。
神託を受けた後の自分がわからなかったからだ。
もしかしたら2人と笑って話せるような状態ではないかもしれない。
でも、どうして神託を受けられるのが12歳なんだろう?
神託があるからかもしれないが、この世界では12歳が成人だ。
でも12歳ってまだまだ成長途中で、背だってここからいっきに伸びる年齢だ。
たまに戻って来る村の冒険者達は、すぐに装備品のサイズが合わなくなると嘆いていた。
神託が12歳を納得するのはいいとして、戦闘職の神託を受けた者を、神殿がパーティーを組む際に急ぎすぎているように思う。
せめて15歳まで猶予を与えて、その間に自分の腕を磨くなり、研鑽の時間にあてた方が良い冒険者になるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、、、
『次の者入れ!!』
とうとう僕の番だ。
一歩踏み出す足が重い。
結果を知るのが怖い。
でも覚悟を決めて行くしかない。
どんな未来が待っていようと、
同じ景色だけを見て生きてはいられない。
一歩踏み出すことで景色は変わるのだから。
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