第3話 タルボの夢


僕の村からカンブリア帝国に行くにはふたつの方法がある。

ひとつはカンブリア帝国まで歩いていく。この場合、外には魔物がわんさかいる為、かなり危険だ。

もうひとつは村から出るカンブリア帝国行きの馬車に乗せてもらうこと。

馬車は神殿からの加護、聖水を馬にも荷台にも振りかけてある為魔物に襲われることはほとんどない。

稀に聖水が効かないほど強い魔族に襲われることもあるが。


戦闘力ってものが皆無な僕は、もちろん後者。馬車を選択することとなる。


カンブリア帝国行きの馬車が停車している場所に、よく知った顔が立っていることに気づいた。

幼馴染のタルボだ。


『おはよう。』


『ん、おはよう。』


『今日だったよな?』


『うん。今から行く所だよ。わざわざ見送りに来てくれたの?』


『まぁな。なんかオレまで落ち着かなくてな。』


『そっか。』


タルボはそれ以上は何も言わなかった。

タルボは僕よりも1ヶ月程早く神託を受けている。

神託で出た結果は【剣士】だった。

戦闘職だ。

いずれ、、、近い将来神殿にパーティーを組まれ、

魔王軍討伐に行くことになるだろう。


タルボからそう聞いた時は、なんて言葉をかけたらいいのか、言葉がみつからなかった。

タルボは料理人になりたいと言っていた。

お互いに夢を語り合っていた仲だ。

もう、そんな夢を語ることさえもできなくなってしまった。


少しの沈黙の後、タルボが拳を突き出してきた。


これは、、、拳と拳を突き合わせるってことなのかな?

戸惑いながらも僕は拳を握り、タルボの拳と合わせる。


『お前の夢が叶うこと、オレは心から祈ってる。

でも、もしもお前が、別の職業に導かれたとしても、オレはお前を応援するし、いつもお前の味方だ。

それに、、、戦闘職になったとしてもオレがいるからな。怖いことなんて何もないぞ?

だから、、、そんな顔するな?

どんな神託を受けようと、お前の未来は明るい。』


『ありがとう。』


それだけ言うのがやっとだった。

タルボは自分の夢が叶うことなく、さらに戦闘職で過酷な人生が決定されたようなもの。

それなのに僕のことをこんなにも考えてくれて、不安を取り除いてくれる。

そう思うと、視界がぼやけてくる。


『泣いてんじゃねーよ。そんなに怖いのかw?』


『ち、違うよ!!泣いてなんかない!!』


『はいはいw』


『本当に泣いてなんかないから!!』


『わかったわかった。とにかく、気をつけて行って来いよ?』


『うん。タルボ、本当にありがとう。行ってくるね!!』


『おう!!気楽に行ってこい!!』


馬車に乗り込み、発車するまでタルボは見送ってくれた。

その場で馬車が見えなくなるまで手を振り続けてくれた。


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