第2話 神託を受ける朝

ここは『始まりの国』カンブリア帝国。

なぜ『始まりの国』と呼ばれているかというと、

この国の神殿には、世界でたったひとつしかない『神託の石』という魔法石があり、手をかざした者の才能を見出し、その者に合った職業を導いてくれる。


神託を受けられるのは12歳の間の1年間だけと言われている。

なぜその期間だけなのか、その理由は未だによくわかっていない。

そのためこの世界の人間は、男女共に12歳になると、13歳になる前に皆この国へ来て神託を受けることが義務になっている。


神託で出た職業は神殿の名簿に記載され、神殿が管理している。そして、神託によってはその後の人生を神殿?国?に決められてしまうこととなる。


それは、戦闘職や聖職だ。

そして、戦闘職に導れた者は、強制的に魔王軍との戦いを強いられることになる。

1番有名な戦闘職が『勇者』だ。

『勇者』などの戦闘職と神託を受けると、他の職業とは別の戦闘職名簿に登録される。

その後数週間程度で神殿が選んだメンバー4〜5人でパーティーを組むことになり、魔王軍討伐の旅に出ることになる。

そのためこの国カンブリア帝国は『始まりの国』と呼ばれているのだ。


そして、、、

僕自身、今日神託を受ける1人だ。

僕が何の職業と出るかはさっぱりわからないし、選ぶことだってできないけど、、、

僕には夢がある。

だから、、、夢が叶うことを祈るしかない。

そう。今日僕の夢が叶うかどうかが決まるんだ。


コンコン!!


「カリス!!まだ用意できてないの!?」


「ちょうど用意ができた所だよ母さん」


ノックの音と共に、部屋の外から母さんが声を荒げている。

普段は大人しい性格で、母さんが大きな声を出すのは珍しい。

俺が今日神託を受けるということで、平常心ではないのかもしれない。


ベッドから立ち上がり、ドアを開ける。

目の前に立つ母は少し不安そうな顔にも見える。

もしかしたら息子が今日戦闘職の神託を受け、魔王軍討伐に駆り出されることになるかもしれないのだ。

母としては平常心でいられないのも仕方ないことなのかもしれない。

俺自身、数日前から不安な気持ちでいっぱいだ。

命をかけて魔王軍の討伐に行くなんてまっぴらごめんだ。

国のためとか、世界の人々のためとか、そんな高尚な精神は持ち合わせていない。

本当は神託なんて受けたくもない。

それでも行くしかない。

それがこの世界の義務だから。

夢は叶わなくとも、せめて戦闘職ではないことを祈りながら。


「じゃあ行ってくるよ」


そう言うと、優しく両手が伸びてきた。

母さんに抱きしめられたのは何年ぶりだろうか?


「気をつけて行ってきなさいね。」


「うん」


僕は扉を開け、神殿への一歩を踏み出したのだった。

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