恐ろしい夜: 十字架

第4章: 思いがけない襲撃

夕焼けが暖かな色彩で空を染める中、涼太は家へと歩いていた。由美先生の言葉が、まるで心を癒す薬のように彼の胸に響いていた。誰かが自分の話を聞いてくれ、恐れずに接し、普通の若者として見てくれる存在がいる。それを知るだけで、彼の心に希望の温かさが満ちた。一瞬、小さくても真剣な微笑みが彼の顔に広がった。

帰り道の途中で、涼太は「梅公園」に寄ることにした。そこは彼にとって特別な場所だった。日々の拒絶を忘れられる静かな場所だ。そこには透き通った川が静かに流れ、空のオレンジや金色の色合いを映し出していた。川沿いには木製のベンチが点在し、木々の葉がそよ風に揺れていた。

涼太はお気に入りのベンチに腰を下ろし、バックパックを横に置くと目を閉じた。深呼吸をして新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。その瞬間だけは、世界が完璧に思えた。彼の心は繰り返し見る夢に漂った――自分が「ザ・クロス」の最高司令官として、人々の命を救い、英雄として称賛される姿を思い描く夢だ。感謝の表情や敬意に満ちた人々の瞳を想像する。

「いつか……きっと……」と彼は控えめな笑みを浮かべながら呟いた。

突然の叫び声が彼の空想を断ち切った。

「わああああっ！」

目を開けると、自転車から転んで泣いている子供が見えた。涼太は躊躇なく立ち上がり、その子の元へ走った。

「大丈夫かい、小さな友達？」と彼は少年のそばにしゃがみながら尋ねた。

少年の右膝には擦り傷ができており、血がズボンを染めていた。涼太はすばやくも慎重にバックパックから小さな応急処置キットを取り出した。

「心配しなくていいよ。すぐに終わるから。」

彼は布で傷をきれいに拭き取り、消毒液を塗った。少年は少ししみる痛みに声を漏らしたが、涼太は慎重に、しかししっかりと包帯を巻いた。

「よし、これで完璧！もう大丈夫だよ。」と涼太は優しい笑顔で言った。

まだすすり泣いている少年のために、涼太はバックパックを探り、オレンジジュースのパックを取り出した。

「ほら、これを飲むと元気が出るよ。」

少年は恥ずかしそうに笑いながらジュースを受け取り、飲み始めた。

「ありがとう。お兄ちゃん、優しいね。」と少年は言った。

「どういたしまして。ところで、君の名前は？」と涼太は少年の髪を優しくくしゃっとしながら尋ねた。

「僕の名前はハルトジだよ。」

涼太が何かを言おうとしたとき、一人の女性が心配そうな表情で駆け寄ってきた。

「ハル！大丈夫？」と彼女は息子を確認しながら尋ねた。

「大丈夫だよ、ママ。このお兄ちゃんが助けてくれたんだ。」とハルトジは誇らしげにジュースを見せた。

その女性は感謝と興味が混じった表情で涼太を見た……が、彼の特徴的な外見に気づいた瞬間、その表情は恐怖へと変わった。

「あなた……ヴラド二世の息子ね……」と彼女は震える声で言い、息子をしっかり抱きしめながら後ずさった。

「奥さん、心配しないでください。ただ、僕は……」

涼太が言い終わる前に、彼女はハルトジのジュースを奪い取り、毒でもあるかのように地面に投げ捨てた。

「飲んじゃダメ！毒が入ってるかもしれない！」

「でもママ、お兄ちゃんはただ……」

「黙りなさい！この人に近づかないで！」と彼女は叫び、息子を抱えて後退した。

涼太はその場を立ち尽くし、何もできなかった。胸に重い痛みを感じた――慣れているはずの拒絶が、まだ彼を傷つけるのだ。彼は投げ捨てられたジュースを拾い、近くのゴミ箱に捨てると、再び歩き出した。

そのとき、涼太の携帯に通知が届いた――雨が近づいているとのことだった。

交差点に差し掛かったとき、彼はテレビが並ぶ店に気づいた。画面には「ザ・クロス」の戦闘が映し出されていた――暴走する吸血鬼と戦う部隊が、元素の力や先進的な武器を駆使しているのだ。涼太はその映像に目を奪われ、心臓が高鳴った。

「いつか……僕もそこに……」と彼は思わず呟いた。

「ここにいると思った。」

声に振り返ると、そこにはショッピングモールで出会った男が立っており、武装した仲間を連れていた。

「今度は何の用だ？」と涼太は後退しながら尋ねた。

「お前の命だ。」男は冷たく言い放ち、残酷な笑みを浮かべた。

突然、男たちは彼を囲み、武器を見せつけた――吸血鬼の血で作られた剣、メイス、そして斧だ。涼太はそれらが吸血鬼にとって致命的であり、再生能力を無効化することを即座に理解した。

「お願いだ……争いたくないんだ……」と涼太は手を上げ、平和を示した。

しかし、男の一人が巨大なメイスを振り上げ、涼太の頭を砕こうとした。涼太はなんとか側へ飛び、間一髪で攻撃をかわした。

「捕まえろ！殺せ！」とリーダーが叫んだ。

追撃が始まった。涼太は全速力で走り、吸血鬼の血でできた弾丸を避けながら逃げた。それらは彼のすぐそばを危険なほど通り過ぎ、一発が腕をかすった。治らない痛みが彼を襲ったが、彼は必死で走り続け、隠れる場所を探した。

追跡者を振り切ったかと思った矢先、二人の男が剣を持って彼を待ち伏せしていた。さらに別の一人がチェーンソーを持って襲いかかってきた。涼太は超自然的な反射神経を駆使して攻撃をかわし続けたが、仲間の一人が誤って相手の手を切り落としてしまった。

「なんてことだ！何やってるんだ！」と負傷した男は叫び、出血する腕を押さえた。

涼太は負傷者を見て胸が痛んだが、立ち止まるわけにはいかなかった。その混乱を利用して再び走り出し、距離を稼ごうとした。

大きな音が警告となり、彼は次の攻撃が迫っていることを悟った。しかし、反応が間に合わなかった。巨大なメイスを持つ男が彼に全力で一撃を与え、彼を建物の壁を突き破るほどの勢いで吹き飛ばした。

涼太は壁を紙のように突き破り、瓦礫の中に転がり込んだ。

その衝撃は圧倒的だった。彼の体は地面に横たわり、ボロボロになってほとんど動けなかった。何本もの骨が折れ、深い傷口から血が流れ出しているのを感じた。

「今の一撃……強すぎた……」と彼は息を切らしながらかすかに呟いた。

メイスを持った男が瓦礫の中にできた穴を通り抜け、勝ち誇った笑みを浮かべながら涼太の方へ歩いてきた。

「これで終わりだ、化け物め。」

男はメイスを振り上げ、致命的な一撃を与えようとした。涼太は残った力を振り絞り、横に転がってかろうじて攻撃を避けた。メイスは瓦礫に深く食い込み、その隙に涼太はわずかな時間を稼ぐことができた。

建物を出ると、今度は巨大な斧を持った男が待ち構えていた。彼の攻撃は速く激しかったため、涼太は一撃一撃を必死にかわし続けた。斧が地面に叩きつけられるたび、瓦礫が飛び散り、舗装にはひびが入った。

涼太は戦うことを好まなかったが、この状況では選択肢がなかった。絶妙なタイミングで横に身をかわし、相手の一撃を避けると、男の腹に強烈な拳を叩き込んだ。その衝撃で男は近くのコインランドリーの窓を突き破り、中に飛ばされた。

涼太は振り返ることなく走り続けた。空っぽの街に足音が響き