恐ろしい夜: 十字架

第3章：あなたの話を聞いてくれる人たち

昼食後、ユミ先生との会話で、リョウタはいつもの明るい気分を取り戻したようだった。彼の笑顔は、どんなに固く閉ざされた心でも明るくする力があり、彼の気持ちを本当に理解している人だけがその真価を理解できるだろう。しばらくの沈黙の後。

—リョウタ、なんでいつも遅れるの？—彼女が沈黙を破って尋ねた。

リョウタはびくっと反応し、明らかに緊張している。

—えっと…まあ、ちょっと複雑で…

—複雑？—ユミは眉を上げて—寝不足とか、そういうこと？

リョウタは目をそらし、首の後ろをかいて。

—まあ…言わないほうがいいかな、先生。

—リョウタ、それが大事なことなら言わなきゃダメよ。私は助けたいと思ってる—ユミは優しくも力強い口調で言った。

リョウタはため息をつき、諦めて言った。

—誰にも言わないって約束してくれる？

—約束するわ。

目を閉じ、深呼吸をしてから、リョウタはできるだけ真剣な声で告白した。

—僕、夜通し『ブレイジング・スピリッツ』のエピソードを見てるんだ。

ユミは何度か瞬きをして、彼の返答を処理し、それからノートで軽く彼の頭を小突いた。

—バカ？！ 何だと思ってたかと思ったら、こんなこと！？心配してたのに！

リョウタはすぐに膝をつき、まるで王様の前で頭を下げるようにお辞儀をした。

—ごめんなさい、先生！ こんなこと言ったらバカみたいだって思ってたから、言いたくなかったんだ。

ユミはため息をつき、少し腹を立てたような顔をしながらも、リョウタが何か他に隠しているのではないかと考え始めた。結局、彼は半分ヴァンパイアだ。夜はヴァンパイアに関連しているという考えが彼女の中に浮かび、いくつかの心配なシナリオが頭をよぎった。

最終的に、ユミは我慢できなくなった。

—リョウタ…もう一つ質問してもいい？—彼女はためらいながら言った。

リョウタは首をかしげて彼女を見た。

—もちろん、先生。何でも聞いて。

—えっと…聞いてもいいのか分からないけど…—ユミは顎に手を当てながら言った—。もしかしたら君にとっては気まずいかもしれないし…

—先生、何でそんなに遠回しに言うんですか？早く聞いてよ—リョウタは笑顔で言った。

—君を傷つけたくないだけ。

—心配しないで、先生。僕は先生をすごく信頼してるから、何でも聞いてください。

ユミは深呼吸してから、まだ不安そうな顔をして言った。

—夜は何をしてるの？—彼女は本当の質問を避けるように聞いた。

リョウタは首をかしげて答えた。

—さっき言ったじゃないですか、『ブレイジング・スピリッツ』を見てるって。

—いや、それじゃなくて…—ユミは唇を尖らせて一瞬視線をそらした後、決心して言った—。人間の血を…飲んでるの？

その瞬間、空気が凍りついたように感じられた。リョウタは頭を下げ、沈黙のままだった。

ユミは内心でパニックになり始めた。もしかして傷つけてしまったのかも…なんであんなこと聞いたんだろう、私はバカだ…

—リョウタ、私は…ごめん。こんなに個人的なことを聞くべきじゃなかった…

しかし、彼女が謝り終わる前に、リョウタは突然膝をついた。

—ユミ先生…

—リョウタ、怒らないで！ただ君のことをもっと理解したかっただけなんだ…

その瞬間、リョウタが突然笑い始め、その笑いは止まらなかった。お腹を抱えながら、彼は大声で笑い続けた。

—ハハハハ！それが聞きたかったの？もっとひどいことかと思った！

ユミは彼を見つめ、完全に混乱し、顔が赤くなった。

—バカ！そんなに笑うなよ！本当に君を傷つけたのかと思ったじゃないか！

リョウタがようやく落ち着いたとき、彼は優しい笑顔でユミを見た。

—ごめんなさい、先生。君を馬鹿にするつもりはなかったんだ。ただ…その質問は全然気にならないんだ。

ユミは少し安心した。

—じゃあ…答えは？

—うん、人間の血は飲んだことないし、動物の血も飲んだことないよ。本当に、考えるだけで気持ち悪いんだ。

—それは安心したけど…じゃあ、どうやってヴァンパイアの部分を維持してるの？—ユミは身を乗り出して尋ねた。

リョウタはにっこり笑って、ジュースの箱を取り出した。

—これで。

—オレンジジュース？—ユミは明らかに疑っている様子で聞いた。

—うん。僕が赤ちゃんの頃から、叔母が僕にオレンジジュースを与えてくれたんだ。他のものは絶対に飲まなかったからね。それで、なぜかそれでうまくいくんだ。

—うまくいくってどういうこと？—ユミは興味津々でさらに聞いた。

—まあ、狂ったり弱くなったりしないんだ。でも、問題があって…

—問題？

—1日に2〜3リットル飲まなきゃ安定しないんだ。

ユミはその情報を処理し、黙って考えた。もしかしたらジュースの糖分や成分がヴァンパイアに必要な栄養素の代わりになっているのかもしれない…でもそれは微妙なバランスだ。

ベルが鳴り、昼休みの終了を知らせた。

—さあ、授業に戻らなきゃね—リョウタが言った。

教室に戻る前、ユミ先生がリョウタに言った。

—リョウタ、アニメを見るために遅くまで起きているのは良くないわよ。

リョウタはうつむき、声が沈んだ。

—わかってる、。でも…それが僕の日中で唯一の楽しい時間なんだ。

ユミは驚きと心配の表情を浮かべて彼を見つめた。

—どうしてそんなこと言うの、リョウタ？

—だって家に帰ると…自分が何者かをバカにされて、悪口を言われるだけなんだ。それが本当に辛い。でも、スクリーンの前に座って『ブレイジング・スピリッツ』を見ていると、世界が消えたように感じるんだ。

ユミは胸が締め付けられるように感じた。

—リョウタ…そんなことを経験してるなんて…本当にごめんなさい。

リョウタは顔を上げ、かすかな笑顔を浮かべて言った。

—大丈夫ですよ、先生。慣れてますから。

しばらくの沈黙の後、リョウタは立ち上がった。

—では、先生、また来週お会いしましょう

ユミは不思議そうな顔をして言った。

—来週？

—遅刻したから、そして校長と喧嘩したから…停学になったんだ—彼は恥ずかしそうに言った。

ユミは驚き、心配そうに言った。

—リョウタ、一体何があったの？

リョウタは、校長が自分にひどいことを言った後、どうしても耐えきれずに反応してしまったことを説明した。ユミはため息をついて、彼の肩に手を置いた。

—感情をうまくコントロールすることは大事だけど、リョウタがどうしてあんな風に反応したかも分かるよ。時々、人々は君がどれだけ辛い思いをしているかに気づかないものだから。

リョウタは頭を下げ、恥ずかしそうに言った。

—ごめんなさい、先生…

ユミは優しく彼に微笑んだ。

—私が校長に話してみるわ。何か解決策が見つかるかもしれない。

その後、授業が終わった後、ポステ君が校門でリョウタを待っていた。

—おい、君！ 校長が君を呼んでるって。

リョウタは興味津々で校長室へ向かい、校長は真剣な表情で彼を迎えた。

—リョウタ、君の停学処分を取り消した。来週からまた学校に来てもいいよ。

—本当に？—リョウタは驚いた。

—ああ、でも先生が君のために話してくれたからだよ。

リョウタはすぐにユミ先生が自分のために話してくれたことに気づき、走ってユミを探し、廊下で彼女を見つけると、彼は彼女をぎゅっと抱きしめた。

—先生、本当にありがとうございました！

ユミは微笑みながら彼を抱き返した。

—本当に遅刻しないでよ、リョウタ。月曜日には元気に早く来なさい。

リョウタは輝く笑顔で学校を後にし、何度も感謝の言葉を言いながら去って行った。ユミはそんな彼を誇らしげに、そして優しげに見守っていた。校門でポステ君がまた彼を止めた。

—ついに追放されたか？—彼はからかうように言った。

リョウタはさらに大きく笑顔を広げて言った。

—違うよ！停学が取り消されたんだ。じゃあ、来週またな、ポステ君！

ガードは怒ってうなり声を上げた。

—呪い、彼らがあなたを追い出していればよかったのに。！そしてポステ君って呼ぶのやめろ！—とリョウタは笑いながら走り去った。