剣と魔法と一般的名字とロリ

恥目司

誰だって女神をアイテムにしていきたいんだよ!!!!!!

 俺は佐藤。男性、36歳7ヶ月。

 職業‘’Not in Education, Employment, or Training”……ニートだ。

 もちろん童貞でだいたいあとオリンピック1回で大魔法使いになってしまう。

 

 いや、なってしまう筈だった。


「あなたは、予定より30年早く死にました。代わりに異世界に転生させます」


 眼鏡をかけた女神にほとんど事務的に言われていた。

 周りは青空で、俺は雲に乗っている。

 つまり死んでいた。


 なぜこうなったのかというと……


 ミーンミンミンミンミン


——真夏の蝉が部屋の中まで聞こえる。

 体感温度40度。まるでサウナだ。

 猛暑を耐え忍ぶ理由はエアコンが壊れたから。

 

 ゲームは飽きたし、好きな食べ物を食えば、胸焼けばっかする。

 今はこうして親の仕送りでこの6畳という空間をうろちょろしているだけだった。


 じゃあ、仕事をすれば良いじゃないかって?

 そういう訳にもいかなかった。

 新卒で就職した会社では、仕事をすればミスばかりするしいつも上司に怒られてばかり。

 ダメ人間のレッテルを貼られれば

 周りからはなんか陰口叩かれるし、同じ年に入った同僚からはハブられるし、女子からは嘲笑われている。

 そんなこんなで入社して1年も経たずに辞めてしまった。


 俺はいわゆる“社不”ってヤツ。

 ダメ人間は大人しく部屋に引きこもってゲームをすれば良い。

 だからニートになった。


 だがニートになったとて、楽に生きられるかと言えばそういうわけではない。

 人間腹が減るし、食わなければ死ぬ。


 だからいつも通り俺はコンビニに行った。


 そしたら、気づけば今に至る訳だ。


「えー。あなたは脱水症状で意識が酩酊したまま路上に飛び出し、走行していた黒塗りの高級車に激突して死亡しました」

 まるで医者が病状を説明するみたいに分かりやすく解説してくれてる。


「熱中症で脱水症状が誘発してしまったとかならまあ、わからなくもないですけど……そこから更にトラックに轢かれたとなると、流石にこちらも対処しきれずに死なせてしまう事になってしまいました」

 熱中症とトラックというダブルパンチ。

 それは不測事態というより、ただ俺の自己管理不足なだけだと思う。

 けど、まあなってしまった事は仕方ない。

「お詫びといってはあなたが異世界に転移される際に一つだけ好きなチート能力かアイテムを与えます」


 そういって女神様は両手からさまざまなスキルを並べてくれた。


 不老不死

 ポジティブシンキング

 精神操作

 詐欺師

 拷問

 ETC……


 ……言うほどチートなのかなぁ。

 ほとんど悪人のやる事だろこれ。

 ポジティブシンキングに関しては能力すら怪しいし。

 

「私が見せたのはほんの一片のみです。チートアイテムもあります」


 ふと悪い考えが浮かぶ。

「アイテムでも一つだけなんでもいいんですか?」

「はい。いいですよ」

 一か八か、やけくそ混じりに俺は答えた。


「じゃあ……あなたで」

「ダメです」

「……あなたで」

「ダメです」

「あなt……」

「ダメです」

 即答された。


「チクショウ、なんでだよ!!女神も持っていけるんじゃねえのかよ!!」

「女神業務規則第12条の4に“女神は他人の所有物になってはいけない”と書かれています」

「なーにが規則だ!!規則は破るためにあるだろうが!!」

「規則ぐらいは守ってください」

「第一、他人の所有物ってのは結婚するなってことだろ!!アイテムなら別にいいじゃねえか!!」

「屁理屈こねて、さも当然のように女神をアイテム代わりにしないでください」

「うるせえ、このマニュアルババア!!そんなんだから一生結婚出来ねぇんだ!!」


 そこまで言って、我に返る。

 しまった。言い過ぎた。

 これ以上は地獄に落とされてしまう。


 しかし、女神様は表情を一切変えずに淡々とスキルを自分で選んで自分に付けていた。


「いやいやいやいやいや!!!!ちょっと待って待って!!ほんとに魔が差しただけです。規則は守るためにありますから。所有物ってアイテムってことですから。そういうつもりはないですから!!」


 女神様を引き止めると、残念そうな顔でスキルとアイテムを並べる。

「分かりました。ではこの中から一つ……」

「あ、はい……えと、えー……じゃあコレで」

「では、転移させます」

「あ、分かりました……そんじゃ……」


 気まずい空気のまま、俺は異世界に転移した。



 

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剣と魔法と一般的名字とロリ 恥目司 @hajimetsukasa

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