第8話 第二のユニークモンスター、遭遇
ダンジョンを潜っている最中に冒険者が襲われていたらどうするか。
俺なら助けに行く。そうあるべきことが俺が俺らしくあるために必要なことだからだ。
だが、普通の冒険者ならそうはいかない。なぜなら大抵の場合、自分も同じように強大な魔物にやられ、二の舞になる可能性が高いからだ。
ステラちゃんの場合はどうするか――
「女の子の悲鳴! 行かなきゃ!」
俺と同様に、何のためらいもなく助けに行くことを選択した。
>まーた面倒ごと引き寄せ機のステラちゃんが
>また救出配信が増えるのか
「こういう事はよくあるので?」
>面倒ごと引き寄せ体質なんですよ
「それに救出配信は人気ですし! こういうのを見かけて配信者として助けない訳に行かないでしょう!」
>また強すぎる魔物じゃなければいいんですが
「心配しなくてもどうせユニークだろ」
>まさかー……
>昨日の今日でありますかね
***
巨大な黒い触手の生えたイカのような魔物が、天井にぶら下がっている。
サウザント・ジクメナー(ユニーク)
レベル:120
体力 20077807
攻撃 369669
防御 724840
魔力 369669
>え、ナニコレは……
>体力高すぎィ!
「はい昨日の今日でユニーク……マジかよ」
「体力そんなにぃ!? ちょっとステータス高すぎじゃありません!?」
そう、レベルと比べてもあまりにも高すぎる。だが、高すぎるという事は何か、理由がある事が多い。
ギミック系のモンスターと見て良いだろう。
「なんですかあれ! ドッキリかなんかじゃないですか!?」
「落ち着け、現実を見ろ。そんな事より……あそこを見ろ!」
そこには、体の大きな少女が、足を触手に絡まれ宙ぶらりんになっている。
「そこの人ー! 誰でもいいから助けてください!」
「はい助けに行きますよっと――ステラちゃんあの子の下の方まで走れるか!」
「えっ! あっはい! 走ります!」
意図を察したのが、すぐさま俺の言葉通りに従う。
「おらあ!」
――Kの、【攻撃判定追加】【睡眠付与】あてみうち!!!
――サウザント・ジクメナーは眠りについた!
剣で虚空を切ると、身が当たっていないのにも関わらず、触手がばさりと切れる。
「いまので当たったんです!?」
「当たり判定増やしたからな」
「何ですかそれ! 便利ですね!?」
触手が切れたことで、女の子が自由落下を始める。
「いやあああああ!!?」
「今行きます!」
ステラちゃんは走り、大きくジャンプする。そして、落下している自分より大きな体の少女を、空中で受け止める。
「大丈夫ですよっと!」
「ひっだいじょうぶですか! わたし体デカいですけど!」
「そのくらいで何とかなるステータスしませんから!」
大きな体を抱きかかえたまま、地面に着地する。
「はよ退避しろ! 落下してくるぞ!」
「はい!? わっ!」
すると、切り刻まれた触手の残骸がボトボトと地面に落ちて来た。
落下物を避けながら、こちらに戻ってくる。
「逃げ切ったー!」
「よくやったステラちゃん!」
「えへへ……そ、それはいいとしてなんで切って睡眠状態がついたんです!?」
「剣技の当身で気絶させたからな」
「当身ってそんなんなんでしたっけ?」
「スキルなんてそんなもんだから…」
そんな事を話しながら、ステラちゃんは助けた少女を地面に下ろす。
「あの……ありがとうございます……」
彼女がお礼を言う。
「おっと無事か?」
「はい、大丈夫ですぅ……皆さんは、大丈夫なんですか」
「このくらいなんてことないですよっ」
「わっステラちゃん!? いつも動画見てます!」
「それはどうも、ありがとー。でも今はもうちょっと……そこでじっとしてくれるかな!」
「は、はいっ!」
向き直り、触手の方を向く。
すると、そいつはぶるぶる震えたかと思うと――、一瞬にして体がはじけ飛んだ。
「えっ!? 自爆!?」
>やったか!?
>いややってる訳ないだろ……
「いや違う、あれは……!」
そして、残骸は黒い油のような液体に代わり雨のように降り注ぐ。
その油は一つに集まり――形をとって元のイカのような形に戻っていく。
「やっこさん、一回自爆で死ぬことで、眠り状態を消しやがったな……ユニークはデバフでどうにかなる敵じゃねえって事か」
「切っても意味ないって事ですか!?」
「どこかに種はあるはず――ならば、もっと切るのみだ!」
――Kの、【100連撃】【×10】【上乗せ】【全体化】【再生無効】覇解連続切り!!!
切り刻まれる触手たち。
だが、切り刻まれた破片は――その一破片ずつ、一破片ずつが形を取り始め、そして一匹の触手、大量の魔物として姿を現し始めた。
「切ったら切った分だけ増えるタイプかー……めんどくせえ」
>多い多い多い多い
その大量の触手が、全てこちらに狙いを定め、襲い掛かってくる――
「来ましたよ! 迎撃します!」
「数が多いな、あの子も守ってやらんと行けないから下手に動けねえな……」
ちらとみると少女は岩陰に隠れ恐る恐るこちらを見ている。
「魔物一体一体の強さはどうだ……ステータス!」
――Kは、ステータス開示を行った!
ジクメナーの破片
LV:87
体力 19993
攻撃 19099
防御 19099
魔力 19099
「一匹一匹はそこまでじゃない……ステラちゃん行けるか!」
「この程度の攻撃なら――耐えられます!」
触手の先からビームが放たれる。
ステラちゃんはそれを両腕をクロスさせて受け止めた。
――ステラに、2817ダメージ!
「くっ、ちょっと痛いですが――このくらいなら、余裕で耐えられます!」
「ならよし! 格上の攻撃を耐えられるんなら上出来だ! おらあ!」
――Kの攻撃!
――触手の破片は消滅した!
軽く剣を振り敵をなぎ倒すと、今度はようやく倒されてくれたようだ。
「ここまで細かくすれば一匹一匹は倒せるか……」
「でもこれ全部たおすんですか!?」
「いや、再生怪人には大抵種があるってもんで……あそこか!」
大量の触手のステータスを見て、探す。探す。
「あった!」
ジクメナーの核
LV:100
体力 104800
攻撃 5041
防御 252020
魔力 5041
「核だけレベルが高いし硬い!」
だがしかし――ステラちゃんのステータスで、倒せない数字のHPではない。
「ステラちゃん! 俺はあの子を守るのに動けねえから核への攻撃を任せられるか!」
「えっ!?」
なるべく、ステラちゃんに倒させたい。俺が倒すのは簡単だが――
今やりたいことがある。それは、ステラちゃんにレベルを上げさせることだ。
俺が任されたのは、ステラちゃんを強くする事。ならば、ここでレベルを上げさせるのは俺のやるべき事として間違っていない。
おあえつらむきに倒せそうな敵が出て来たのならば、倒させるしかあるまい。……すこし作為的なものを感じないでもないが。
「私ですか!? 倒せるかどうか……」
「友情バトンを使えるか!」
「使えますけど……」
「これを託す!」
――Kは、ステラに防御無視を託した!
「防御無視……?」
「防御無視を使えば……相手の防御を1として計算できる! それなら攻撃が通るはずだ」
>つっよ
>そんなんありかよ!
「あとは俺が道を切り開く! ステラちゃんは……核を殴れ!」
「無茶ですよ!? いやでも……やります! やりたいです!」
「OK! 覚悟はできたか! なら行くぞ!」
――Kの【範囲拡大】一筋の光ホーミングレーザー!
コアを倒さないように注意しながら、道を切り開く。
ステラちゃんは、切り開かれた道へ向かって飛び跳ね、コアまで一直線。
「それじゃあ、いきますよー!」
両の手をクロスさせ、力を貯める。
二つの力を右手に貯め、勢いよく振りかぶる。
「必殺!
――ステラの、【防御無視】【エネミーブレイク】
――127041ダメージ!
――ジクメナーの核を倒した!
>やったー!!!
>ステラちゃんやったね!
その瞬間。すべての触手の破片が、連鎖して爆発していく。その後、再生することはない。
>たーまやー
>あれだけあった敵が全部……
「いえい、ブイ!」
――ステラは、19レベルが上がった!
――レベル71になった!
「ってめちゃくちゃレベルが上がっちゃった!?」
>おー
>すげー!
>これステラちゃん、S級冒険者になれちゃうんじゃない!?
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