第2話:ゲームの世界で遊んでる場合か!
前書き
(ゲームが舞台の作品を書いたのは初めてでした
では第二話のスタート!!)
本文↓
らびりんはそのまま続ける。
「この世界は剣と魔法とモンスターの世界なんだ。
モンスターが国や街を破壊しに"フォレスト"からやってくる。
そのモンスターを倒す職業それが……」
「"フォトアラー"でしょ?知ってるよそんなの」
思わず私はらびりんに向かってそう言ってしまう。
「え?」
らびりんは驚いた顔でこちらを見ている。
夢喰いもちょっと興味を持ってこちらを見ていた。
私は続ける。
「それでそのフォトアラーになるために試験会場へ行く展開でしょ!」
らびりんはそれを聞くと何やら罰の悪そうな顔をする。
「何だ…‥知ってるんだ。じゃあ……僕のアナウンサーとしての価値はどこに……」
らびりんの落胆する声が聞こえる。
そのらびりんを見て私はこの夢喰いが作り出した遊び場世界のルールを悟る。
そのルールとは……"自由"
その二文字が頭の中を目まぐるしく回る。
少し目が冴えてくる感覚がする……
「夢の中なら好き放題できる」
そんなことを妄想したことはあるだろうか?
私は、今の状況ならそんなことを妄想してしまうだろう。
なんせ今の状況は……
"夢の中なら好き放題できる"……状況だからだ。
私はらびりんの価値について答える。
既プレイと言ってしまうとらびりんにクエスチョンマークを出されてしまうし……ゲームの世界観に沿ってっと。
「実は私はこの世界を知り尽くしているんだ。だから……らびりんにアナウンサーとしての価値はもうないよね。じゃあらびりんはどうするの?」
「それは…‥わかんないよ」
自分の役割を失ってプログラムが壊れたのか、らびりんは涙目でそう言う。
狙い通り……
「それじゃあ私の仲間になってよ。デクの剣だけじゃ絶対、試験会場の試験官"フレーバー・オブ"に勝てないし……」
本来なら試験会場の最初の敵、フレーバー・オブはオンラインの味方と力を合わせて倒す展開になる。
しかし、この夢喰いの作った世界には私しかいないしプレイヤーの助けはない。
でも、らびりんとならそこそこ戦えるはず。
「うんいいよ。僕の価値はそれしかない」
「本当!?よかったよ……非オンラインのクロスなんて無理ゲーだし」
その私の発言の後、らびりんが私のそばに寄って来た。
すると、私の身体の前に電子板が瞬時に現れる。
何事かと思いその画面を見るとらびりんのステータス画面がそこには表示されている。
スキル「アナウンサー」
HP85 A30 B25 S90
それを見て私は首を傾げる。
アナウンサーなんてスキルあったっけ……?
それと何とも尖ったステータスだね。
素早さだけ極端に早い。さすが兎。
それにしてもストーリー改変が過ぎると思う。
この際ストーリーは好き勝手に変えてしまうことにした。
ここは夢喰いの作業所…‥ある意味、夢の世界だからね!
"好き放題"できるんだから。
「それじゃあ……!分かってると思うけど目的である試験会場へ向かうよ。そこでフレーバー・オブの攻略をしてモンスターを討伐する職業の"フォトアラー"になる……」
そこまでのストーリーは知っていた私はそうらびりんに告げる。
「試験管の名前まで知ってるなんて…‥なんか僕の必要性がますます下がってて落ち込む……」
そのらびりんを私は慰める。
「必要性はあるよ。らびりんがいなきゃフレーバーには絶対勝てないし」
主にステータス的に……
そう言った後、私は試験会場まで行くために電子板を呼び出し、試験会場のボタンをクリックする。
すると瞬時に身体から0と1という電子の数字が飛び出す。
そしてその数秒後、私は試験会場に着いた事を察する。
「ここも原作通り、西洋風コロシアムのような外観だね」
そう呟く。
中央に闘うための白い床の舞台があり、私たちはそこに立っていた。
その周りを野球の甲子園の人々が応援する階段式の大きな応援席のような席が連なり、そこにNPCが座っている。
そして原作の通り、試験官フレーバーが舞台にやってくる。
「君もフォトアラーになりたいようだね。それじゃあ私を倒してみろ!」
剣を持ち不敵な笑みでそういうフレーバー。
ゲームで見るより迫力あるなぁ……
そう思って余裕をかましていたら次の瞬間。
「ではいくゾォ!!」
剣を思い切り振り翳して来た。
私は瞬時にデクの剣を前にかざす。
大きな剣の音がして振動が体を走る。
ふと気づいたが、私の横にHPバーが表示されている。
140。
減らされた。私のHPは150だからその差分のダメージくらったみたい。ただ、思ったけど私の防御力高いな……
「さぁ次はお前のターンだ」
フレーバーの野太い男の声がする。
ナイトのような姿をしているフレーバーが物凄く強そうに見えてきた。
でも臆さず攻める事に決めた。
「行くよらびりん!」
らびりんと攻撃のターン入ろうと意気込み、らびりんに声かけをする。
すると、らびりんは「スキル発動!」と声を上げた。
まさかアナウンサーを使う気!?
そう思って焦って私は電子板を開く。
そしてらびりんのスキルの詳細を確認する。
アナウンサー:味方の一人の攻撃力を自分に加算できる。
つよっ……!
思わずその強いスキルに驚く。
そしてらびりんのA(攻撃力)を見ると私のデクの剣含めてのA80が加算され、その攻撃力は110!?
その後らびりんは宙でクルッと回転してフレーバーに飛び蹴りをする。
フレーバーの横に表示されたHPバーを見ると230から170まで減っている。フレーバーの防御力は50か……
その減り具合で相手のHPを確認する。
これならフレーバー戦勝てるかも知れない……
希望が湧いて来て私も攻撃に参加する事にした。
デクの剣を振り翳してフレーバーにダメージを与える。
80から50を差し引きしてフレーバーのHPは170から140まで減る。
よし……!!勝てる!!
その時だった。私は思い出すフレーバーはHPが半分以下になるとスキルの「絶体絶命」が発動してしまう。それをされるとフレーバーはステータスが強化され、全てのステータスが10上がるのだ。
気をつけなきゃ……
そう注意を強めて次のターン。
フレーバーは剣をらびりんに向ける。
らびりんはHP85から一気に40まで減る。
そうなんだよね。フレーバーの攻撃力は70と高めに設定されてる。
序盤でこの強さは反則ってよくネットで言われるくらいの強敵。それがこのフレーバーという男。
しかしここで痛恨のミスに私は気づいた。
「や、薬草買うの忘れてた〜!!」
私はそう叫ぶ。
するとそれがゲームのプログラムに触れたのかフレーバーが答える。
「薬草はフォトアラー達の大事な回復アイテムだぞ!覚えておけ!全く…………さぁ次はお前らのターンだ」
「ここで決めたい所…………」
すると勝手に電子板が忙しく出現する。
咄嗟に私は自分のステータス画面のスキル欄を見せられる。
先程は無しと書かれていた所に「ヒールアップ」と書かれたスキルがある。
そして私はこの時思い出した。
本来ならフレーバー戦の途中でアナウンサー役であるらびりんからランダムにスキルを授かる展開になるんだった。
でもらびりんは今アナウンサーじゃないからこういう形で無理矢理私の電子板に表示されたようだ。原作改変の弊害かな…‥いやメリットか……
とにかく好都合!
"ヒールアップ"は回復スキルで、60回復。バトルで二回まで使える。ヒールアップを使ったターンは攻撃できない道具も使えない。私はヒールアップを知っている。まぁハズレスキルなんだけど…………
ハズレスキルだから本来ならリセマラ必須だけど夢喰いがリセマラ対応まで作ってるのかわからない……
とにかく今それは置いとくとして私はらびりんを回復させるために声掛けをする。
「らびりん回復させるよ!」
「え?薬草買ってたっけ?君」
「ヒールアップってスキルを今貰ったの!本来なららびりんがピンチの私に授けるものだけどね……」
原作改変が行われてらびりんの記憶も改竄されているようで、らびりんは私にスキルを与えるという役割を放棄するという形になったみたいだ。
そんなことは今はどうでもいい。行動選択には時間制限があるし早めにらびりんを回復させるため、ヒールアップを使う事にした。
「スキル発動!ヒールアップ!」
すると私の手は桃色の光を放ち始める。そして、その手をらびりんに向けるとその光はらびりんを包み込んだ。
そして、らびりんの横に表示されたHPバーは85まで回復した。
これで次のフレーバーの攻撃をらびりんは耐える。
ヒールアップを発動したターンは攻撃も道具も使えないのでターンエンド。
フレーバーは今度は私に攻撃をしてくる。
私のデクの剣とフレーバーの剣が交差する。
身体に振動が走る。
HPバーをみると130。
私が硬過ぎるみたいでフレーバーは言葉を漏らす。
「こいつ…‥強い。しかし私には奥の手がある。まだまだ……」
その奥の手とは恐らく絶体絶命のスキルを指しているなと察する。
そもそも本来のシナリオだと主人公はABSともに40の設定なんだよね。ちなみにHPは100。
原作とは色々と状況が違うからキャラのセリフも改変されているのかな……それよりこの"夢喰いの作業所"という歪な空間が成せる技っていう表現が正しいかも。
そう冷静に分析する私。
よし次のターンが来た。今の状況を確認する。
フレーバーのHPは140。
らびりんは85。私は130。
そしてらびりんはAが30。私は80。
らびりんのスキルは制限の記載はないから何回でも使用可能。
私はらびりんに指示をする。
「らびりん!アナウンサーで攻撃アップだよ!」
「うん了解!」
アナウンサーを発動したらびりんの攻撃力は110となり、そのAがフレーバーに刺さる!
60のダメージが減り、フレーバーのHPバーは80となり、次の私の攻撃で残りHP50となった。
もう少し……!ってかスキルのヒールアップ忘れてた!!でもいいや勝てるはず!
そう私が思った次にフレーバーが口を開く。
「では……今こそ奥の手を使う時……"絶体絶命"発動!!」
するとフレーバーのHP ABSはHP60 A80 B60 S60と強化される。
そしてフレーバーのターン。ちょっと怖い状態だが大丈夫だろう……
「らびりん…‥お前だ!!」
フレーバーは静かに言うとHPが30になるらびりん。
次のターン。あとは残りHP60のフレーバーを倒すだけだ。
らびりんが例の通りスキルで攻撃を上げ、110となり、らびりんがトドメを指す……
私はそこで叫ぶ。
「ちょっと待って!!」
らびりんはこちらを振り向く、フレーバーも……
「私が倒したい」
「……」
「……」
らびりんとフレーバーが沈黙をする。
その沈黙の後らびりんが口を開く。
「こいつめ、めんどくさぁぁぁ!!」
そう言ってらびりんは私の要求を無視してフレーバーを倒してしまった。
(この時、祈とらびりんは気付いていなかった……フレーバーのHPはあと10残っているという事実に……)
「グアアアアアアアア!!」
フレーバーがゲーム特有の断末魔を上げる。
私は怒った。
「もう何で倒しちゃうの!!らびりん」
「そりゃそうでしょ君。それって遅延行為って言うんだよ?」
「そうだけど…………はぁ……もう次から解雇だからね!」
「そ、そんな〜」
らびりんの泣き声が響く。
そして、気分を悪くした私はフォトアラーとして認められるシーンが来る前に電子板を出しログアウトのボタンをタップする。
するとまたあのピンク色の空間に戻って来たみたいだ。
夢喰いがおかえりと私の目の前にただずんでいた。
「らびりんめ!でも楽しかったな…………明日も出来るかな?」
「楽しんでくれたみたいで何よりだよ。明日も出来るか……ね。勿論君が夢を支払ってくれれば。ね?」
「え?」
疑問に思って思わず声が出る。夢喰いは続ける。
「あの世界だってただで出来てないからね。夢の貯蓄が必要なんだよ。ほっておいたらいずれ消滅しちゃうんだ…‥それに祈からはたくさんの夢の貯蓄が取れる。やっぱり優秀な適正者だからだね」
「そっか……分かったよ…‥支払うよ。別に減るもんじゃないしね」
夢喰いとそういう約束をする。
あーそうだ。明日のテスト返却に備えて眠らなきゃ…………
絶対赤点だよ…‥やだなぁ…………
「それじゃ作業所から出ようか」
夢喰いがそう言うとピンクの空間はみるみると消えていき、私の部屋が見えてくる。
「もしかして作業所って私の部屋全体を覆ってるの?」
私は思いついた頭の中の考えを夢喰いに喋る。
「ご名答。流石、優秀な適正者だね!普通なら見えないし干渉することはできない。何度も言うけど君みたいな例外は初めてだよね!」
「ふーん……夢喰いって怖いね」
その夜、身体が少し静電気の走るような感覚に陥ったが気にせず眠りについた。
……なんだろうここ。
ハッ…………!!
感じたこともない空気に思わず私は目を開ける。
目の前には狂ったような笑みを浮かべた少年が一人。
王冠を被り、10歳くらいの見た目の若い感じの少年。
目にはクマがあり、王服を着こなしているが、その王服のサイズは大き過ぎるのかブカブカだ。
何なのこれ…………夢喰いの奴…‥変な夢を見せるのね……
そんな事を考える。
そして、また"作業所"に行ってしまうのは面倒だと思い、目を瞑り、眠りにつく事に集中する。
目の前の光景は怖いけど流石にこれは夢だと分かった……
だから眠る事に決める。
次の日……
今日は12/13日。夢喰いの見せた夢の世界じゃなくて本物のテスト返却の日だ。
私は夜中に見た、あの"狂った笑みを浮かべた少年"の夢のことを夢喰いに聞こうと思ったが、なぜか夢喰いが部屋にいない……
外に出かけたかな。
それよりテスト大丈夫かな……
そう思いながら私は自分の部屋で着替えを済ます。
〜第三話に続く〜
後書き
(閲覧していただいた方ありがとうございます。
ちょっと次回予告。
夢喰いと束の間の遊びを楽しんだ祈は本物の12/13日を迎えることに!テストの点数はいかに!
そしてミステリアスな夕魅ちゃん登場!?
祈「スキル:ヒールアップが現実でも使えるんだけど……うそ……」
次回第三話。
転校生現る。夕魅ちゃんはミステリアス!
お楽しみに。)
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