第1話:夢の始まり

前書き

(作者です。

楽しんでいってくれると幸いです!)


本文↓


/少し目が冴えてくる感覚がする……

「夢の中なら好き放題できる」

そんなことを妄想したことはあるだろうか?

私は、今の状況ならそんなことを妄想してしまうだろう。

なんせ今の状況は……/


12/13日。

教室がクラスメイトの声で騒がしい。

12/11日に行われた期末テストのテスト返しの時間だ。

教卓の前で先生が私の名前を呼んだ。

「桜井ー、起きろ!」

なかなか大きな声が教室内に響く。

教室のガヤガヤ声は静かに……

あれ?静まらない……なんでよ。

このクラスは他クラスと比べると活発なクラスで悪名が高い。

そのせいかな。いや違う……

そして私は認めたくない事実を認める。

私がこのクラスではあまり目立たない所謂"モブキャラ"の様な立ち位置だからに決まっている。

その証拠に私以外のクラスの目立っている人が眠っていようなら先生はすぐに気付くし、クラスメイトもそれをネタに騒ぎ出すからね。

「桜井!四度目だぞ?三度目の正直という言葉があるだろう?その法則を今破ったな!」

「すいませんー。四度目の正直という法則に今から変えましょうよ」

眠たい目を擦りながら、そして軽く冗談を交えながら私はその先生に返答をする。

「何を勝手な事を。この世の中はね、君の我儘は通用しない様になってるんだよ」

そう言ってヤレヤレとしながら私に向かって言い放つ平田ひらた静香しずか先生。

黒色のロングの髪が今日も元気に揺れている。

この先生とは冗談を言える程度には仲が良いのだ。

相変わらずクラスメイトの話し声は止まない。私の渾身のボケも無下に終わったみたいで少し落胆する。

突然の自己紹介だけど、私の名前は桜井さくらいいのり

ちょっと学校のテストが苦手な女の子。

髪の色は茶髪。髪型は顎までかかるくらいのボブヘアー。桃色の瞳をしている。赤いリボンの付いた制服が似合う。たぶん。

「自分の事は知っているから」

「ん?どうした?」

平田先生が反応する。

あ、ヤバい。心の声が漏れてたみたいだ。

「ひ、独り言です……!えーと……今テスト用紙取り行きます」

そう言って椅子から降りた私は教卓まで歩く。

この教室は奥に行くにつれて階段式に上に行く構造になっている。

だから私は降りる様に教卓まで向かう。

「何だ独り言か。"自分のことは知っているから"ってそりゃそうだろう。やはりテスト勉強頑張ったのか?それが原因で疲れてるんだろう」

「い、いえ……その……正直あまり頑張ってないです」

素直に私は自分の心を明かす。そうだった。

一昨日の深夜は友達の湯芽ゆめとゲーム三昧していたんだ。ってか湯芽……大丈夫かな。

その話は置いといて次の平田先生の言葉に私は驚く事になる。

「本当か?この点数……90点と高得点だが」

「え……?」

思わず動揺して平田先生の顔を下から二度見した。

そして下を向き教卓の上にある自分のテスト用紙を見る。

そこには確かに90点の用紙があった。

「あれ?高い?」

おかしいなと思いながらも私はその用紙を手を取る。

すると先生は笑顔で私に言う。

「珍しく頑張ったな桜井。これで留年の事はひとまず心配ないな!」

「本当ですか!や、やった!」

あまりの嬉しさについ大きな声が出てしまい、クラスメイトの目を気にして少し恥ずかしくなる。

しかし、クラスメイトは私の声など聞こえていない様子で少し違和感を覚える。

今の結構爆音だったけど……ま、まぁ私モブキャラだしこんなものか……

落胆しながら席に戻ろうと教卓前から歩き出したその時だった。

聞き馴染みのない可愛いソプラノの高い声が私の耳に入ってきた。

「やぁ、祈?なかなかいい夢だったでしょ?」

そこに居たのは桃色のマスコットの様な姿をした謎の生命体だった。

身体は小さく、長さ15cm位だろうか?

兎の耳を持ち、人形の様に赤色のボタンを縫い合わせた目を持ち口はジッパーのデザインになっていてやろうと思えば開け閉め出来そうだ。

身体は猫の様に四足歩行で青い尻尾が狐の様に付いていた。しかしその尻尾の数は2本となっていて奇妙だ。

その奇妙な生命体は口を開く。もちろん口はチャック式になっていてジッパーの開け閉め音が聞こえる。

「さぁ答え合わせの時間だ」

「な、何のこと!?君は誰?」

そのセリフの後、私は辺りを見渡す。

驚く事に周囲はピンク色のモヤが掛かったような空間になっていた。お風呂の中みたいな心地よさも感じる。

「僕?僕は"夢喰い"。人の夢が好物なんだ」

「夢喰い……?」

私は頭を傾げながら動揺してそう答える。

「そう。そんな事より君はすごいよ!」

「な、何が……?私なんて平凡なモブキャラだよ」

気づけば私は顔を俯かせながら答えていた。

「そんな落ち込まなくて良いよ!だって僕の夢にここまで適性する人間なんて初めて!君は思ってるよりモブキャラじゃないと思うよ」

「適性……?よ、よくわからないけど褒めてくれてありがとう」

「うん、適性。僕の夢は"適正者"と呼ばれる人間にのみ見せられるからね。君は適正者の中でも優秀かも」

適正者?よく分からない単語はさておき、私はこのピンク色の空間の異常性にようやく気付く。

「それより!何なのここ!私のテスト用紙は?クラスのみんなは!?」

「ここは僕が人に夢を見せる時に作る場所だよ。作業所みたいなものかな?だからさっきも言った通りさ。君は僕の夢に適性しすぎた結果、僕の作業所まで来てしまった。普通ならそのまま夢の中で僕の事には絶対気づかないはずなんだけどね……」

「え?なんかごめんね勝手に……あと…‥さっきの夢だったってこと……」

私はその事実を認識してテスト90点の結果が嘘だった事に落胆する。

夢喰いは「その通り」と一言言った。

そしてさらに気になった点を聞く。

「もしかして作業所って言うけど私の部屋にそれ作ったの?」

「それもその通り!悪いけど……君の部屋に作った。さっきも言ったけど大体の適正者達はこの作業所には気付かないしそのまま僕に夢を食べられてその夢は忘れてしまうんだけどね…‥君は普通ではないな」

「そうなの?っていうか勝手に私の部屋使ったの!?」

「うん……そうだよ。僕はそういう事をしながら10年間生きてきたからね。もうこの犯罪まがいの事は慣れっこだよ」

夢喰いは首を傾げる動作をしながら私に言ってくる。

今の首を傾げる場面ではないと思うけど……

この生命体には相変わらず慣れない。とんでもない奴だ……

そして現実の私の状態がふと気になった。

「待って……じゃあ現実の私はどこにいるの?」

「勿論、ベッドの中だよ。夜中にスヤスヤと寝ている君の寝顔は可愛かったな……」

やっぱり…‥と思ったのと同時に私はそれを聞いて顔を真っ赤にさせる。

「このストーカー!嘘つき!」

「仕方ないだろう?夢を喰う為なら僕は何だってやるさ」

私はジト目になって夢喰いに言ってやる。

「最低……」

「ちょっと傷つくなぁ祈。分かったよそんなに許せないなら僕の作業所をご紹介してあげる。それで許してよ」

夢喰いはそう言うとこのピンク色の空間にいきなり吠えた。

夢喰いのその猫の様な可愛い遠吠えに反応し、ピンクの空間は姿を変え始めた。

気付くと周りの景色は私のよく知っている光景だった。

「これって……剣と魔法のクロス!?」

「君が夜中にやっていたスマホゲームをモチーフに作ってみたんだ」

そう…‥今私の目の前に広がる光景は、まさしく最近湯芽とハマっているスマホゲーム"剣と魔法のクロス"だった。このゲームはいわゆるヨーロッパ風の異世界を舞台としたファンタジーゲームでオンライン対応なのだ。

「こんな事ができるんだ……凄いよ夢喰い!」

私はさっきの憤りを忘れ思わず夢喰いを褒めていた。

「いや照れるなぁ。でも君もこの作業所に来てる時点で異例中の異例だからねぇ。君もまた凄い。祈。これで許してくれるだろ?」

「うん!分かった許すよ」

私はそういうと夢喰いは「単純……」みたいな顔を私に向けて来たがそれでも気分は不思議と悪くならない。


「さて、じゃあ遊ぼうか」

「え?」

その唐突な夢喰いの子供じみた言動に私は首を傾げる。

「だってせっかく作ったんだ。遊んで欲しいでしょ?結構この力を使うのは疲れるしね」

その発言に私は少し考え、「まぁいつもゲームして夜更かししてるし……いいか」と了解した。

「それにリアル感覚で剣と魔法のクロスが出来る体験なんてそうそう無いし!」

私は素直にこの世界を楽しむ事に決めた。

「本当に!?僕も今まで沢山夢を喰ってきたけどこんな経験はないね。何だって作業所に人が入れる事事態今まで知らなかったわけだし……」

「私ってやっぱり凄いのかな…‥」

「だから凄いなって僕は言ってるんだよ」

「実感はないけど……というか本当に剣と魔法のクロスそのままだね」

辺りを見渡すとログインした後に最初に訪れるエリア、"最初の街"みたいだった。

「最初の街も再現したんだ……じゃあ早速武器を調達しようかな」

「ゲーム内容は良く知らないからコピーペーストみたいな形だけどね」

そう夢喰いは欠伸をしながら話す。

コピペとか言われると簡単に思えるけど実際凄いことしてる……

そう夢喰いの力に若干畏怖の念を抱きながら私は武器屋に入る。

ここで、ゲームにおける最初の武器、レベル1のデクの剣を購入する事にした。

店に入ると目が黒い点で出来た様な鍛冶屋のオッサンのキャラクターがいる。

これも原作準拠のようでそっくり。

「やぁ嬢ちゃん。武器屋にようこそ。買っていくかい?」

「こんにちは。それじゃあ……」

そう言って私はその受付のオッサンと私の間にある木の机の上にあるメニュー表を眺める。

もちろん、デクの剣を買う予定だったのでそれを購入するべく受付にデクの剣を下さいと言う。

ただお金の概念どうなってるのかは知らないけど……

すると、私の身体の前に突如、電子板が現れ、その画面をふと見る。

そこには私の身体全体が表示されていて、スキル表示やステータスがある。


スキル「なし」

ステータス HP150 A50 B60 S70

所持金1000G


と書いてある。スキルはまだ無しみたいで、HPは150。

このABSは攻撃防御素早さを表す。

実は剣と魔法のクロスにはメニューを開く時、キャラの前に電子板が現れる設定がある。それが再現されていて私は感動の声を小さく漏らす。

そうしていたら、電子板に表示されていた所持金の欄の1000Gがみるみるうちに減っていき700Gと表記が変更される。

「まいどあり〜」

オッサンが笑顔でそう言う。

私は軽く会釈をして店から出る。

外に出ると、赤いレンガと青いレンガが交互に連なる模様の地面が見える。

その地面の上で私は店の前で待っていた夢喰いに聞く。

「まさか電子板まで再現してたなんて……ということはストーリーとかオンライン対応のところまで出来ちゃうの!?」

「あ、おかえり祈。えーとね。ストーリーなら出来ると思うけど……オンラインの方はちょっと…‥流石に無理だよ祈しかこの作業所にはこれないみたいだし?」

「そうだよねぇ……でもストーリーあるの!?ってことはそろそろ原作的にいくとアナウンサーのキャラが来ると思うけど」

すると……

兎のアナウンサーキャラである"らびりん"がやって来たみたいだ。

「やぁ……君はこの世界は初めてかな?…‥初めてにしては武器屋で武器を調達してるからちょっと不思議だけど。ま、まぁいいやとにかく説明させてもらうよ!」

あれ原作とはちょっと違う。本来なら、らびりんが武器屋に行く前に、この世界の説明をするんだけど……

既プレイなのが災いしてストーリー進行がちょっとおかしくなっちゃったけど気にしない事にした。


〜第二話に続く〜


後書き↓

(最後まで閲覧してくれた方ありがとうございます。

今後の展開はあらすじの通りですね。

とりあえずゲームの世界の話を書くのはやっぱり楽しい。)

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