第8話『その組織は秘密らしい①』

日本でも大きな神宮の1つ『天道神宮』。

かつて、神の一柱が降り立った場所として名の通った神宮である。

その本殿内で2人の男が話しをしている。

1人はよわい80は過ぎたであろう老人、椅子に座り杖を支えにしている。

それに対峙するのは白いスーツ姿に長い白髪を縛った20代程の男だった。


「それで?口裂け女は行方をくらませたと聞いたが・・・本当なのかね?」

「そうっスね、足取りさえ掴めなくなったっスよ」

「相変わらず軽薄な喋り方を・・・口裂け女は危険な存在、それは我々天滅會てんめつかいの共通認識だったはず、早急に居場所を見つけ出し対処しなければいけない」

「そうっスねぇ、面倒だけど行ってくるっスよ」


ため息をついて男はその場を後にする。


「全く、何も知らない爺様は気楽っスね・・・」


男が神宮を立ち去ったと同じ頃、遥達は教師の頼みで資料運びを手伝っていた。

いつもの様に教室に残っていたのを捕まったのだ。


「はる、これで終わりか?」

「うん、文それちょうだい」


文の持つ資料を受け取り机に並べる。

教室に戻る頃には夕陽が差し込み周りをオレンジ色に染めていた。

慣れない1日が終わる。

とは言え、身体がのか、今朝の肩凝りもすっかり消え去り軽くすらある。

そんな事を考えると、例の公園に誰かが立っているのが見えた。

口裂け女ではない、だが白いスーツに白髪の姿は異様で公園に似つかわしくない。

遥が見ているのに気づいたのか、男は遥の方へと歩いてくる。

一瞬身構えるが、変質者であっても今の遥なら何とかなると言う謎の自信があった。


「初めまして、さん」


男は笑顔と共に頭を下げる。

遥は絶句する。

男は間違いなく遥を『滅鬼』と呼んだ。

それは今の遥の姿であり、誰にも話していない。


「何で・・・それを?」

「あぁ、警戒しないでほしいっス。私は敵ではないっスから」

って事は、味方でもないんですか?」

「頭の良い子っスね。君次第だ、私は人間の味方っスから」


笑ったままだ。

だが、それが不気味でならなかった。


「僕に何の様です?」

「君が昨日、ここで口裂け女と対峙し滅鬼になったのは分かってるっス。君を家まで送ったのは私っスから」

「あなたが?」

「えぇ、やり合った後にぶっ倒れた君をね。まぁ、どうやったかは話せないっスけど・・・」

「それは・・・ありがとう、ございます」

「いぇいぇ。じゃ、少し警戒がとけた所で、少し話し良いっスか?」


遥は母に遅くなる事を伝え、音と共にファミレスへと向かった。

周りに人がいれば警戒しなくて良いだろうという男からの提案でもある。

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