第6話『変わる日常③』

遥の母『鬼劉楓きりゅうかえで』は朝食の用意をしていた。

いつも通りの日常、だが今日は珍しくバタバタと忙しない音と共に自慢のが滑り込んできた。


「母さん!」

「あら、おはよう、はるちゃん」

「おはよう・・・て言うか、はるちゃん?いゃ、それより母さん!何て言えばいいか・・・無いものがあって有るものがそのままで!・・・」

「・・・えっと?」

「あぁ!何て言えばぁ・・・そうだ、母さん見て!」


遥はパジャマを脱いで見せた。

母に立派な胸を恥ずがしげもなく露出する姿は第三者が見れば錯乱したとしか思えない。


「あら、随分立派になったのね」


母の熱い視線に冷静になったのか、パジャマを着直す遥。

とは言え、楓の反応からこれが異常だと気づいていない様に見える。


「母さん、これどうしよう?」

「新しいブラ必要かしら。流石は私のね」

「・・・む、すめ?」

「どうしたの?体調悪い?」

「いゃ、身体が重い位だけど・・・」

「肩こり?やっぱりブラが合わないのかしら・・・」


楓との話しが噛み合わない。

まるでであるかの様な振る舞いだ。


(まさか、滅鬼になったせい?)

「ごめん、母さん。昨日変な夢見てたせいで混乱しちゃって・・・」

(何言ってんだ僕は、無茶苦茶だろ、この言い訳・・・)

「そうだったの、だったら朝食しっかり食べて目を覚まさないとね」

(そういえば、母さんちょっと天然だった・・・)


楓の天然に助けられ、とりあえず朝食を食べる遥。

食べてる間に考えるが、肝心の滅鬼は既におらず、確認のしようがない。

結局、考えがまとまらないまま登校する事になってしまった。


「おっはよ〜、はるちゃん」

「おぅ、はる」

「おはよう、2人共」


2人も遥の変化に疑問は持っていない。

時代の流れなのか、遥がパンツスタイルであっても気にされない。


(周りは僕が女だって認識っぽいな。とりあえず、隠さなくて良いのは楽だけど・・・)


学校での遥の扱いも女子としてのものだった。

元々、和人と文以外は学友程度の仲だった為、そこまで交友関係や学校生活に困る事はない・・・はずだった。


「トイレ行きたい・・・」

「行けば良いじゃん」

「うぅん・・・」

「我慢良くないよ?私が一緒に行ってあげようか?」

「いい、行ってくるよ」


なんとか人が少なくなったのを見計らい個室へと入る。

現在、遥は漫画などで見られるふた◯りである。

今朝の母とのひと騒動が終わり、制服に着替えていた時の事である・・・。

自分が昨日どうやって帰って来たのかわからず、着替えもせず寝ていた様だ。

下着もそのままだった為、着替えようと脱いだ時、違和感があった。


「なんか、変な感じが・・・」


妙な違和感に確認すると・・・そこには男性にないはずのものがあった。

本日、2度目の錯乱である。


(しばらくはこの身体に慣れるのが課題かな・・・トイレと着替えは周りにバレない様にしないと)

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