第40話 再び
「行こう」
駿は当然のように真凜の手を握った。
「うん」
振りほどくわけにも行かず、真凜はそのまま手を握られていた。しばらく人混みをかき分けながら歩くと、屋台が見えてきた。
「何か食べる?」
「たこ焼きが食べたい」
「買ってくる」
駿は真凜の手を離し、真凜はようやく解放された。さやかはさやかで真にべったりしている。真凜はそれを見たくなくてあまり真を見ないようにしていた。
――本当に告白……するのかな? 柏木くんはどうするんだろう?
モヤモヤした気持ちを抱えながら、真凜は戻って来た駿にもらったたこ焼きを食べていた。
良い場所を探そうと皆で再び歩き出し、今度は駿は手を握らずに前を歩いていた。さやかは何故か菜帆と一緒に歩いている。何やら話しているようだ。
「さやかちゃんさ、真凜の為に身を引かない?」
「引きません。何で私が身を引かないといけないんですか?」
「そりゃあ、柏木くんと真凜に上手く行ってほしいから」
「ずるいですよ、真凜先輩と友達で仲良いからって私に牽制するなんて」
さやかは口を尖らせて抗議する。
真は真凜の隣を歩いている。少し元気のない真凜を気遣い声をかけてきた。
「先輩、大丈夫ですか? 疲れました?」
「ううん、大丈夫」
「少し休みましょう?」
「え? 大丈夫だよ」
「疲れた顔してますよ」
「え? 噓?」
「どこか座れそうな所……」
真が歩きながら辺りを見渡すとベンチが見えた。
「あ、あそこにベンチがありますよ」
あまり
「座りましょう」
「うん、ありがとう」
真凜はうながされるまま座った。
「いいえ。もっと頼ってください」
「え?」
「先輩、自分から辛いって言わないじゃないですか?」
「あ……そうかも」
「だから、せめて僕にだけでも頼ってほしいです」
「うん、ありがとう、柏木くん」
「ちょっと待ってて下さい。飲み物買って来ますね」
「え? 私も」
「良いですから。すぐ戻りますから、座っていて下さい」
真はそう言うと屋台に飲み物を買いに走って行く。真がいなくなると同時に真凜の近くに人が近づいて来た。ふと見上げると、例のストーカー男子がいた。
「やっと会えたね」
背筋が凍りついた真凜は、咄嗟に逃げようと立ち上がる。しかし、手首を掴まれてしまう。
「やめて」
恐怖の余り声が出ない。
――助けて! 誰か!
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