第37話 真凜の家族

 夕飯の準備が整うと、辺りにハンバーグの良い香りが漂っている。父と母も帰って来ている。


「柏木くん、色々とありがとう」


 真凜の母は真にお礼を伝える。


「色々?」


 疑問に思う匠は母に尋ねる。


「そう。真凛が階段から落ちた時にも庇ってくれたし、今回もストーカーから守るために送り迎えしてくれてるし」


「そっか……あの時も」


「そうよ。だから、柏木くんには感謝してもしきれないわ」


「ありがとう、柏木くん」


 父親も真にお礼を告げる。


「うん、本当にありがとう、柏木くん」


 皆に話題の中心にさせられてしまった真は、恥ずかしくなってしまう。


「いえ。僕がしたくてしてるんです」


「カッコいいなぁ、真くん」


 匠は真に向って言う。


「いいえ、カッコよくなんてないですよ。僕は先輩を助けたいだけなんです」


「柏木くん……」


 ふと目が合った2人は見つめ合ってしまう。


「ちょっと2人とも。私たちのこと忘れて2人の世界に入らないでもらえる?」


 母親に指摘され真凜と真は顔を赤く染める。

「2人は付き合っているの?」


「付き合ってないよ」


 真凜は思わず否定する。


「そうなの? 柏木くんなら大賛成よ」


 母親は微笑みながら真凜と真に話す。


「柏木くんは真凜をどう思ってるの?」


「お、お母さん?!」


「……素敵な先輩だと……思います」


 かろうじて聞こえる声で、真は呟く。頬が赤く染まってしまっている。


「良かったわね、真凜」


「良かったって……ごめんね、柏木くん」


「いいえ、大丈夫です」


 ふと父の顔を見ると複雑そうな顔をしている。


 食事を終えるとすでに9時を回ろうとしていた。


「ごちそうさまでした」


「遅くまで引き留めてごめんなさいね」


 真を玄関まで見送る真凜と母親は真と話している。


「いいえ、こちらこそ長居してしまって」


「家は大丈夫よ。良かったらまた来てちょうだい?」


「はい、是非」


 そう言うと真は真凛に視線を向ける。


「先輩、では失礼します」


「うん、気を付けてね」


「はい、おやすみなさい」


「うん、おやすみなさい」


 真凛と真は笑顔で挨拶を交わして、真は帰って行った。



* * *



 それから1週間ほど経ち、ストーカーは姿を現さなくなった。


 いつもの部活帰り、真は真凜と帰っていた。歩きながら真凜と真は話している。


「先輩、最近どうですか? 例のストーカー」


「うん。見かけないよ。警察に注意してもらったからかな?」


「なら良いですけど」


 眉間にシワを寄せて少し考え込んでいる様子の真に真凜は尋ねる。


「何か気になる?」


「……いえ。このまま落ち着けば良いですね」


「うん」


 真凜と真は家へ着くと真凜はポストを開けた。すると、そこには新たな封書が入っていた。

「柏木くん!」


 真凜は思わず帰ろうとしている真を呼び止めた。

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