第36話 警察へ
こうなってしまうと悟は止まらない。やれやれと思いながら真凜は時計を見ると夕方4時を差していた。
「お兄ちゃんまだ帰らないね」
真凛が呟くと悟は反応した。
「そういえば」
悟のここへ来た目的は兄に会いに来たのだ。
「連絡してみる?」
真凛がスマホを手に持つと、ちょうど兄が帰って来た。
「ただいま〜」
「あ、帰ってきた」
真凛が玄関へ向かい、悟が来ていることを匠に伝えた。
「何だよ? 連絡くれたら良かったのに」
「いや、近所だから連絡しなくてもいるのかとか思ったんだよ」
匠が部屋に入ると悟にそう言った。
「こんにちは、お邪魔してます」
真は匠に小さく会釈をする。
「おお、今日もありがとな」
「ん? ありがとう?」
悟の問いに匠が答える。
「ああ、真凛が最近付け回されてて」
「は? ストーカー?」
「そうとも言う」
「警察には?」
「言ってないんだよ」
「え……? 何で?」
「知り合いかもしれないから……」
真凜は悟に向かって告げる。
「行ったほうが良いって」
「俺もそう思う」
「行こうかな」
「僕も行きます」
「お。王子様、よろしく」
匠が真に突然冗談っぽく言った。
「え?」
驚いた真は目を見開く。
「え? だってエドワーズ役でしょ? それに真くんって何か王子っぽいし」
思わず真凜と真は顔を見合わせる。
「はい、任せてください。行きましょう、先輩」
「うん」
真凜と真は家に届いた封書を持って2人で警察へ向かった。
警察へ向かう途中真凜と真は先ほどの話をした。
「さっきは驚きました」
真が真凛に話しかけると真凛はすかさず反応する。
「お兄ちゃんの王子様発言?」
「はい、一瞬生まれ変わりがバレたのかと……」
「まさか、誰も信じないよ」
「……ですよね」
警察は真凜の家の目と鼻の先にあり、あっという間に着いた。
* * *
しばらくすると真凜と真は家へ帰って来た。
「どうだった?」
匠は2人に話を聞いてくる。
「うん、とりあえず注意してくれるみたい」
「ひとまず安心かな?」
「だと良いですね」
「悟お兄ちゃんは?」
真凜は辺りを見渡して匠に尋ねる。
「さっき帰ったよ」
「そっか、そろそろお母さん帰ってくるよね?」
時計を見るともう夜7時近くなってる。
「ごめんね、柏木くん。こんな時間まで」
「いえ、大丈夫です」
「夜ご飯食べてく? これから作るんだけど。今日はハンバーグ」
「ハンバーグですか?」
一瞬、真の瞳が光ったように見えた。
――好きなのかな?
何だか嬉しくなった真凜は笑顔で返事をする。
「うん」
「真凜のハンバーグは美味いよ」
「ちょっとお兄ちゃん! ハードル上げないでよ」
「ハハハ、ごめん」
「楽しみにしてます」
「柏木くん、期待しないでね」
「でも、良いんですか? ご馳走になっちゃって」
「大丈夫だよ、家の親、友達とか来ても気にしないから」
「そうなんですか?」
「うん」
真凜と匠は同時に返事を返した。
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