第34話 姉と真
真は家へ帰り部屋にいると姉が帰っていて、借りたいものがあるからと部屋へやってきた。真の本棚にある“運命の人”という本を見つけて真に聞いてきた。
「それ、その本。真が買ったの?」
「ああ、うん」
「珍しいね、現実的なあんたが」
「うん、そうなんだけど」
「ちょっと見せてもらって良い?」
「うん」
そう言うと姉の恵美は本をパラパラとめくり始める。
「前世からの繋がりね……運命。もしかしたらあるかもしれないよね」
「姉さんは信じるの?」
「え? まあ、分からないけどないとも限らないでしょ? 私は信じるよ」
「異世界転移とかは?」
「う〜ん……それは……物語だけの話じゃない?」
「そうだよね」
真はちょっとだけがっかりする。
「どうしたの? 本当。そんな質問してくるなんて」
「別に。ちょっとした劇の参考に」
「なるほどね? でも、ロマンチックではあるよね、運命の人って」
「うん、ロマンチックだけじゃないけどね」
「え? 何で?」
「前世から繋がっているからって、すんなり上手く行くとは限らないみたいだし?」
「……まあね。でもそれは、前世どうこうじゃなくても、普通の人達だってすんなり行くかどうかは分からないよ?」
「そっか……そうだよね」
恵美は真をじっと見つめると、突然ひらめいたように言った。
「真……もしかして」
「え? 何?」
突然探るような言い方をされてドキリとしていると、恵美は続きを話した。
「……好きな子でも出来た?」
「え? 何言ってるの?」
「違うの?」
「ちっ、違う、違うよ」
「ふぅん? 怪しいなぁ……いるなら協力してあげるよ?」
「え? 本当に?」
「やっぱりいるんじゃない」
「あ……」
口を滑らせた……と気づいた時には遅く……姉にバラしてしまった。
「どんな子なの?」
何だかこのやりとりはエドワーズの時を思い出す。
「同じ部活の……先輩」
「へぇ? 演劇部のねぇ?」
「凄く演技が上手で努力家で、尊敬してる先輩」
「素敵ね」
恵美は何やら嬉しそうに微笑んでいる。
「良いじゃない、何か微笑ましいなぁ」
「でも、彼氏がいるから」
「そうなの?」
「うん……」
「良いじゃない、好きでいても」
「え?」
「結婚してるわけじゃないんだし」
「……確かに。上手く行ってないみたいだけど」
「それならチャンスじゃない」
「え?」
「頑張りなよ。応援するから」
「うん、ありがとう。アプローチしてみようかな」
「うん、そうしてみなよ」
「でも……アプローチって何をしたら良いのかな?」
「う〜ん……そうだね……デートにでも誘ってみたら?」
「突然?」
「話したことないの?」
「話はするけど……断られないかな?」
「分からないけど、何もしなければ何も変わらないよ?」
「うん……そうだね。誘ってみようかな」
真は姉と話して良かったと感じていた。
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