第30話 差出人のない封書
真凛の家に差出人のない封書が届いた。
中には隠し撮りされた写真が入っている。
不気味に思った真凛はちょうどリビングでくつろいでいた、兄の匠と彼女の
「お兄ちゃん、恵美さん、これ見てもらえる?」
「ん? なんだこれ?」
「何?」
2人は渡された封書を開けて中の物を取り出した。
「は? なんだよ? これ」
「え? ちょっと……真凜ちゃん、これ大丈夫?」
隠し撮りされていたのは真凛の登下校の写真や、友達や彼氏といる時の写真、部活の時の写真、明らかに隠し撮りと分かる写真だった。
恵美さんは匠の彼女でしっかり者のとても明るくて笑顔の素敵な女性だ。
「……どうしよう、これ」
「警察に届けた方が良いよ」
恵美は心配して言ってくれる。
「うん。そうだね、警察に行こう」
「でも……様子見ても良い?」
「何で? 隠し撮りされてるんだよ? 危ないよ?」
恵美さんは信じられないと言いたげな表情を見せた。
「そうなんだけど……もしかしたら知り合いかもしれないし。大ごとにしたくないっていうか」
「……真凜がそういうなら」
匠は渋い顔をしているが、少しだけ様子を見ようということになった。
翌日、部活が終わり帰る頃、人気のなくなった体育館で真凛に真が声をかけて来た。
「桜木先輩」
「ん? 何?」
「先輩、何かありました?」
「え?」
「いつもより元気ない気がします」
「あ……うん、実はね、家に差出人のない封書が届いたの」
「封書?」
「うん……中に隠し撮りされた写真が入ってた」
「え? それってストーカー?」
「……そうなのかな?」
「警察に届けたんですか?」
「ううん、もしかしたら知り合いかもしれないしって思って」
「……この前のあの男子なのかな?」
「え?」
「この前、先輩に告白してきた男子ですよ」
「まさか」
「そうですよね、むやみに疑うのは良くないですよね」
真は申し訳なさそうに肩をすくめる。
「先輩、僕に守らせてください」
「え?」
一瞬心臓がドキドキしてしまう。
「その、ストーカーが解決するまで……」
「柏木くん……ありがとう」
「良いんですか? 僕の出る幕じゃないかもしれないですけど」
「そんなことない。嬉しいよ」
真凛は真に嬉しそうな笑顔を向ける。そこへちょうど駿が通りかかり出入口から真凜に話しかけて来た。
「真凜!」
「え? 駿くん」
駿は一瞬真を睨むような目つきで見た後、近づいて来た。
「真凜、部活そろそろ終わるから終わったらデートしよう?」
「……うん、分かった」
「ごめん、それまで待ってて」
「うん」
その様子を近くで見ていた真は思わず真凜に問いかけた。
「先輩、彼氏のこと好きなんですか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます