第23話 眠れない夜
マリアは部屋へ入るもまだ昼過ぎ。眠るには早い時間だ。頭に浮かぶのはエドワーズの顔だ。
「エドワーズ様……」
真凛は恋を知らなかった。けれど、マリアとして過ごすうちにエドワーズへの想いに気が付いた。
――これが恋だなんて……。悲しいよ。マリアさん、私これで良かったの? もっと、抵抗した方が良かったの? エドワーズ様! 勝手にいなくなったりして……ごめんなさい!
マリアはベッドへうつ伏せに倒れ込み、流れても流れても溢れてくる涙をただ、受け止めていた。
* * *
エドワーズは仕事が終わりマリアの待つ家へ直行した。玄関のドアを開けると明かりが付いていない。
「マリア? ただいま」
返事もなく何となく不思議に思いエドワーズはマリアといつも過ごしている部屋へ入ると、そこには置き手紙が置かれていた。
エドワーズはその手紙を手に取る。
「え?」
エドワーズの心臓は嫌な音を立てた。
「何で?」
エドワーズの手紙を持つ手は、震え始めた。
「何だよ、これ!」
そこに書かれていたのは別れの言葉だった。
『エドワーズ様へ。
貴方とはもう一緒に暮らせません。ごめんなさい。とても幸せでした。どうかお幸せに。 マリア』
エドワーズは手紙を握り締めた。
「マリア! どうして?!」
エドワーズは神経が高ぶり眠ることが出来なかった。
――君のいない人生なんて!
翌朝、ジャクソンが迎えに来た。タイミングが良すぎて怪しく感じたエドワーズは、ジャクソンに詰め寄った。
「ジャクソン! これはどういうことなんだ?」
「エドワーズ様……」
ジャクソンは苦しそうに顔を歪めた。
「父上か?」
「……はい」
「戻ろう!」
エドワーズはパン屋へ寄り、マリアがいなくなったと伝え、パン屋を辞めることを伝えた。
「……残念だけど仕方ないね。マリアさん見つかると良いね」
奥さんはエドワーズに寄り添ってくれる。
「ありがとうございます。お世話になりました」
「いつでも来いよ」
店長もエドワーズに声をかけてくれた。
「はい!」
店を出るとジャクソンは馬車で待っていた。
「急ごう!」
馬車を走らせること数時間後、城へ着くとエドワーズは国王のいる部屋へ向かった。この時間は仕事をしているはずだ。
エドワーズは国王の部屋の前で立ち止まり、ノックをした。
「入れ」
「失礼致します」
ドアが開きエドワーズの姿を見ると、国王は嬉しそうに目を細めた。
「……エドワーズか。よく帰ってきた」
「……ただいま帰りました。父上、お話したいことがございます」
エドワーズは父親に対する苛立ちを抑えながら、努めて冷静な態度を心がけた。
「ああ……もう少しで終わるから少し待ってくれ」
「分かりました」
応接室で待つエドワーズには待っている時間が、永遠の長さに感じられた。
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