第8話 夢?
「桜木さん、良かった。意識が戻ったんだね。柏木くんはまだ意識が戻らないから……」
先生は、真凛の顔を見て安心したような表情を見せた。しかし、真の意識が戻らないため複雑な顔をしていた。
「先生……すみませんでした。あの、柏木くんは?」
「まだ、意識が戻らない。桜木さんのことを庇ったから怪我がひどくて。命に別状はないけどね……」
「私のせいで……」
「違うよ、桜木さん。あの子は貴女を守ろうとしたの。だから、自分を責めないで?」
労るような眼差しで先生は真凛に優しく微笑んだ。
「はい……先生」
それから1時間ほどして、真の意識が戻った。真も検査入院することになり、夕食の時間になり、皆帰って行った。
真凛は真の病室へ行くと、入院患者は真しかいなかった。
「柏木くん?」
真凛が部屋を
「桜木先輩?」
「うん、入って良い?」
「良いですよ」
真凛は中へ入ると真は手首に包帯を巻かれていた。
「……それ……」
「ああ……かっこ悪いですよね。僕、先輩のことを助けようとしたのに、こんな怪我しちゃって……」
真は真凛に向かって微笑んで見せる。
「そんなこと! ごめんなさい! 私のせいで怪我させて」
「僕がしたかったんです」
突然真剣な眼差しを向けた真に真凛はドキリとした。
「だから、気にしないで下さい」
「柏木くん……ありがとう」
真凛が告げると満足そうに真は笑った。少し間を開けた真は突然真顔になる。
「……それよりも先輩」
「何?」
「僕……夢を見ました」
「夢?」
「はい、演劇で練習してる舞台の、中世ヨーロッパの“マリアとエドワーズの運命”の世界にいる夢を見たんです」
「え?」
「僕はエドワーズでした」
「……それ、私も見た。……私はマリアだった……」
一瞬、真凛と真は瞳を交わす。
「同じ夢を見たってことですか?」
「きっとそうね」
「夢にしては凄くリアルで……」
「私も思った! まるでマリアになったみたいで……私の意識で動いているというよりも、動かされてるみたいな気がした」
真凛達は顔を見合わせる。
「僕もです。記憶も何故か流れてきて、僕もエドワーズになっていました」
「どうして、私と柏木くんがエドワーズとマリアになったのかな?」
「何か繋がりがあるんでしょうね」
「うん……」
2人は何となく黙り視線を彷徨わせる。ふと時計を見ると、もうすぐ消灯の時間だ。
「ごめんね、柏木くん。もうすぐ消灯みたい。病室戻るね」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
真凛はそう言うとドアに手をかけた。その瞬間、静電気が流れた。
「痛っ……」
真凛はその場に倒れてしまい、真もつられるように意識を失くした。
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