第7話 仲違い
紅茶を一口飲んだエドワーズは話を続ける。
「昔、僕たちがまだ生まれる前、レーム家と王家は親交が深かったのです。しかし、姉が産まれたことがきっかけで仲違いをしてしまいました」
「どうしてですか?」
「レーム家が……つまり君のお父上が、女王も有りなのではないかと言ったそうです」
「……まあ!」
「しかし、父はそれを快く思わず、それから絶縁状態らしいのです」
エドワーズは切なげにまつ毛を伏せる。伏せたまつ毛は長く、目を伏せていても美しいと分かるほどだ。
「それで敵対を?」
「ええ。僕としては1日も早く仲直りして欲しいと願うばかりなんですけどね……」
エドワーズは真凛の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「君に出逢ってしまったから……」
ドクンッと心臓が跳ねた気がした。マリアの体に真凛の意識。
――私が言われた訳じゃないのに……。マリアの体だから?
頬が熱くなり体温が上がって行くのが分かる。
心地よい風が2人の間を吹き抜けた。
「私も……この御縁を大切にしたいです」
「マリアさん……」
「エドワーズ様……」
緊張を抑えようと紅茶を口に含むものの、味なんて分からない。マリアとエドワーズは周りに人がいることも忘れ、2人の世界にいた。
「マリアさん、僕達は敵対してしまってはいる。けれど、僕は貴女をもっと知りたいですし、今後も逢いたいと思っています」
エドワーズの真剣な眼差しが真凛の心を捉えた。その眼差しを見つめていると、何故かマリアのことを自分のことに感じた。
「ええ、喜んで。私もエドワーズ様とこれからもお逢いしたいです」
* * *
「……ん?」
「真凛!」
「お母さん?」
「私……」
周りを見回すと白い天井に白い壁、点滴を打たれている手首、どうやら病院にいるらしい。
「大丈夫? どこか痛む?」
「……大丈夫」
体を起こそうとする真凛を母は支える。
「ありがとう」
母は医者を呼び診察をしてもらう。異常はないものの、一応検査入院しようという話になった。
「覚えてる? 真凛」
「え?」
「あなた、舞台の階段から落ちたんですって」
「あ……」
すっかり異世界へ行き忘れていた真凛は肝心なことを思い出す。
「あ、ねぇお母さん! 病院へ運ばれたのは私だけだった?」
「え? 男の子がかばってくれたみたいよ」
「
動こうとする真凛を母は止めようとする。
「ちょっと、真凛。あなた今目覚めたばかりなのよ? 落ち着いて」
「でも……」
「そんなに慌てて……その子のことが大切なの?」
何故か真凛の心臓がドクンと音を立てた。
「そういう訳じゃ……」
「……彼氏じゃないのね?」
「……うん」
――彼氏だって紹介するのは恥ずかしいよ……。
駿くんのことが頭をちらつくものの、母に話す気にはなれない。
“コンコン”とノックをする音が聞こえ、顧問の先生が入って来た。
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