第3話 演劇

 真凛は進級して2年になった。


 秋の文化祭に向け、真凛は演劇の練習をしていた。演目は両親に反対された2人の、悲しい悲恋物語だった。



「マリアとエドワーズの運命」




 劇のあらすじは、中世ヨーロッパの世界。 

 実話を元に作られたらしい。


 昔は仲の良かった一族同士。ある日、国王に子供が産まれた。子供は女の子でエドワーズの姉。女王になるかもしれない……と噂されていた。



『国王になるのは男だ!』と言う国王と


『女が女王になっても良いのでは?』というレーム家の意見の食い違いから仲違いしたまま、月日は流れそれぞれ、王家とレーム家に子供が産まれた。その後、会うこともなく子供達は成長した。


 やがて、成長した子供達は出逢い、恋に落ちるのだった。しかし、2人の家族は仲違いし敵対したままだったため、認めてもらえず引き裂かれた。

 引き裂かれた2人はマリアは病死。エドワーズは国王を恨み続け、国が荒れて行く悲惨な結末だった。




「駄目だ! 昔から王になるのは男と決まっている!」

 

 国王役の男子が声高らかにセリフを話す。


「しかし、女性が国を治めるのも有りなのではないか?」

 国王に反対されたレーム家の男性が意見を伝える。


「はい! 今日はここまで。各自、自主練して来るように!」


「はい!」


 顧問の先生がそこで声をかけ、稽古は終了になり、それぞれ皆帰ることになった。


「ありがとうございました!」


 部員達は挨拶をして真凛も帰ろうと歩き出した。何故か真凛はその時、ぼんやりしていた。


「真凛、危ない!」


「え?」


 誰かが叫んだ次の瞬間、真凛は舞台の階段を踏み外してしまう。


「きゃっ……」


「先輩!」


 近くにいたまことの声が聞こえたと同時に、真凛は血の気が引いていく感覚を覚え、気がつくと気を失っていた。


 


* * *




「……ん?」


「お嬢様!」


――え? お嬢様? 誰のこと?


「お嬢様、いい加減起きて下さい!」


 間違いなく真凛に向かって言っている。うっすらまぶたを開けると、真凛は見たこともない部屋にいた。

 どこかの映画で見たことがある、中世ヨーロッパに出て来そうな部屋。真凛は天蓋てんがい付きのベッドに寝ている。


「え? どこ、ここ?」


「……お嬢様?」


「あ、あなたは誰?」


「お嬢様? 記憶喪失ですか?」


 目の前にいるのはメイド服を着た、外国人の女性。20歳前後と言った所だろうか。心配そうな眼差しで、真凛の顔をのぞき込んでくる。

 ふと、ベッドの脇に立てかけられている鏡を見るとそこに映るのは、ブロンズの髪に彫りの深い美しい女の子がいた。


「え? 噓でしょ……何これ?!」


 真凛は鏡に映る自分の姿を信じられずにいた。

 

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2024年11月30日 08:00
2024年12月1日 08:00
2024年12月2日 08:00

運命の恋人〜巡り逢えて〜 宮守 美妃 @aira77

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