第4話 マリアとエドワーズ
「熱は……なさそうですね。頭を打ったりしてませんか? 寝ている時に。失礼ですがお嬢様、あまり寝相が良くありませんので……」
真凛の額に手を当てたメイドは、考え込んでいる。
「医者を呼びましょう」
「え? 大丈夫よ」
「私の名前が分かりますか?」
「えっと……」
「……やはり、呼びますね、恐らく記憶喪失のようです」
眉間にシワを寄せた彼女はそのまま部屋を出て行った。
別人の体に真凛の意識がある。
――これってまさか……異世界転移?
真凛は頭を横に振り、何が起きているのか考えた。
――確か私、演劇部の帰りに階段から落ちそうになって……
「あ! 柏木くんは?」
真凛は思わず口に出してしまう。
――柏木くんは現代にいるのかな?
それとも、柏木くんもこの世界に?
控えめにノックをする音が響くと、メイドが入って来た。
彼女の姿を見ると突然頭の中に記憶が流れ込んでくる。彼女の名前が脳裏に浮かんだ。
「ミミ……」
微かに目を見開いた彼女は、少しだけ安心したようだ。
「マリアお嬢様……」
「ええ……」
何故か自分がどう振る舞えば良いのか、マリアの記憶がさせるのか、自然に浮かんでくる。
「ごめんなさい、先程は驚かせてしまって……」
「大丈夫なのですか? 医者がもうじき到着されますよ」
「寝起きで……混乱していたみたい」
「……そうですか?」
「ええ……」
若干ミミは疑いの眼差しを真凛に向けつつも納得してくれた。
「分かりました。お嬢様がそうおっしゃるのなら、信じます」
「ありがとう、ミミ」
「では、医者には帰ってもらいますね」
ミミは小さくため息を付きながら言った。
「ええ……ごめんなさい」
「……記憶喪失などではないのなら何よりですよ」
「ありがとう」
真凛は微笑みながらミミにお礼を告げた。
* * *
数時間後。真凛はミミと一緒に馬車を使い街の市場へ来ていた。
澄んだ青空が気持ち良い。市場は沢山の商人や人で賑わっている。真凛はミミと一緒に見て回る。市場へは真凛がマリアへ入る前にマリアが来たがっていたらしい。
現代と何もかもが違い真凛は物珍しさも手伝って、ワクワクしていた。大道芸人のパフォーマンスに夢中になった後、真凛はやや疲れを感じた。
「ミミ、少し休みたいわ」
「そうですね、しばらく歩きましたから、お疲れでしょう?」
「ええ」
「何か食べますか? 果物が売ってますよ?」
「お任せするわ」
「分かりました」
ミミが少し外していると、見知らぬ男性が近づいて来た。
「そちらのブロンズの髪の美しい女性」
真凛は自分のこととは思わずにいると、もう一度声をかけられた。
「……
「はい」
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