第40話 大愛(だいあ)は、考えるのを、辞めた
……やった!
呆然とする客を置いてきぼりにして、彼女は脱走を試みた。が……
パン! パン! パン! パン!
何か乾いた花火のような音が4発、廊下に響いた。その直後、左肩と右足に強烈な痛みが走り彼女は走ることはもちろん、歩く事さえ困難になる。
ふと脚や肩を見ると赤色の液体で染まっていた。そこまで見て、彼女は初めて「拳銃で撃たれた」事に気づいた。
撃った相手……ついさっき股間を蹴り上げた男が拳銃を手に握ったまま近づいてくる。
「おい35番、舐めた真似してんじゃねえぞ」
男は左手で
その目は、人間を見ている
彼ら組織の人間からしたら彼女の事は「無限にカネが引き出せるATM」程度にしか見えていないものだった。
「な、何で!? 動けないはずなのに!?」
よく見ると、彼は「ファウルカップ」主に野球の
「35番、お前は初犯だから特別に許してやってもいいが、次やったら脳みそ吹っ飛ばすからな。分かったなら来い!」
「え!? ちょ、ちょっと待……」
彼は一瞬だけ銃口を
「黙れ、死にたいのか? 次は外さんぞ」
男に左手で髪の毛をわしづかみにされたまま、彼女は部屋まで連れ戻された。
(おめでとさん。今日は銃で撃ったから傷口をかき回せば苦痛に歪む顔が拝み放題だぜ。特別サービスデーだ)
(WOW!! そいつはツイてるな!!)
聞いた感じ、英語っぽいやり取りをしているそうだが、詳しいことは分からない。ただ、客はやたらと喜んでいるのは確かだ。
「!! 痛っ! 辞めてよ!」
客はやたらと
当然彼女は激痛に顔をゆがめるのだが、それが良いらしい。男の性器はギンギンのバッキバキだ。
「HA-! HAHAHA!! WOOOO!!」
ただでさえ撃たれて痛いというのに、客の相手という2重の苦しみが彼女を襲うも耐えるしかなかった。何せ今回はそばで拳銃を持って待ち構えている。
下手なことをしたら本当に殺されかねない。
自分を撃った時の相手の動きには全くためらいや罪悪感の類は無かったのを見るに、多分自分の事は「お金製造機」程度にしか見ていないのに加え、
殺しにもかなり慣れている様子だった。多分人の死さえ、日常なのだろう。
結局今回も男にされるがままの
◇◇◇
……あれからどれだけの月日が流れたのだろうか?
前に脱獄しようとしたら拳銃で撃たれて「初回だから勘弁してやるが次やったら脳みそを吹っ飛ばすぞ」と脅されたので逃げようがない。
特にあの時、彼の眼は完全に「ガンギマリ」とでもいう程、
それでも、いやむしろ「妊娠しているからこそ」客が来る。
妊婦に暴力を振るって大喜びするという、常人からしたら「歪みきっていて本能で拒絶する」性癖を持っている人は山ほどいる。
「35番、仕事だ」
今日もあの男が客を連れてくる。
「ゴフッ!!」
特に「流産パンチ」とでも言うべき、膨れた腹への一撃は最高でもうたまらない! らしい。彼女の理解できる範囲を余裕で超えていた。
妊婦の腹を殴って「超! エキサイティン!!」出来るとなると余程極まった性癖なのだろう。
地球の人口はおよそ70億人。人類の1%しかない性癖を持ってる人間は世界中に7000万人いるし、
0.01%つまりは「1万人に1人」しかいない狂ってるほど尖りきった性癖でも70万人いる計算になる。
娼館1つじゃとても対応しきれない位にとんがった性癖を持っている連中はうじゃうじゃいるそうだ。
理不尽だが逆らえない環境に置かれた
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