第37話 進む薬物依存
12月に入って間もないある日。
(パパってば、なんか痩せたってよりは「やつれた」気がするなぁ……)
間近で父親を見る
「!! 何これ!?」
注射器と白い粉状の物体だ。彼女はそれを見て、瞬時に「
学校で薬物依存に対する授業を聞いて知識だけはあったが、現物を見るのはもちろん初めてだった。
まさかパパが……!? テレビやスマホの画面越しではない自らの目で直接見れ、自分の手で直接触れられる……
つまりは実物が家にある事にハンマーで後頭部を殴られるかのような衝撃が走った。
「快楽順応」と言って、人は快楽の刺激には慣れるように出来ている。なぜなら慣れずに満足してしまったら成長が無くなるからだ。
それは薬物依存も全く同じ。
最初こそ合法の市販薬だったが、次第に違法薬物に手を出すようになり最後に行き着いたのは、
「やぁ。また来たよ」
「あいよ、
最近はスマホでやり取りができるから会うのは格段にラクになったし、売人からしたら「ご新規様」の発掘も実に簡単になった。文明の利器というのは素晴らしく便利なものだ。
「昔は良かった」と回顧主義の老人はボヤくが、少なくとも彼らはそうは思わなかった。
「そうだ。
「……分かった。話を聞こう」
それが「家庭が粉みじんに粉砕され崩壊する」最悪の取引であるにも関わらず。
「パパ! これどういう事!?」
「!!
「関係ないも何もないでしょ! こんなのやってるってどういう事!?」
「うるさい! 口答えするんじゃない!」
「パパ! 話を聞いて!」
「もういい! この話は無かったことにしてくれないか!?」
怒鳴り声を上げる
それこそ「娘を取るか、薬物を取るか?」という問いに「薬物」と即答するようになってしまった。
中学校では2学期がそろそろ終わる頃、特に3年生はやれ高校受験だ学期末試験だと落ち着かない日々が続く中、ソレは
授業中、
「く、
「「!?」」
突然大声を上げる先生に、教室にいた生徒たちは全員「巨大なハテナマーク」が頭に浮かんだ。
その時の
しかし実際には、その机には誰もいない。その日たまたま風邪で休んだ生徒の机だったのだ。そこに誰かが座っていたように見えた……? つまり「幻覚を見ている」のか?
悪い噂は良い噂の何倍もの速度で学内を駆け巡る。事件が起きたのは午後の授業だったにもかかわらず、放課後には中学校の生徒全員と教師の間にもしっかりと広まっていた。
「おい、聞いたか?
「ああ知ってる。噂じゃ大麻吸ってるとか」
「ええ? 俺は
生徒たちが噂するのと同じように……。
「
「聞いた聞いた。何でも薬物依存でその禁断症状で見たらしいとは聞いてるけど……」
「いじめをもみ消していた疑惑があるのに加えてクスリ漬け教師か。最悪だよな、うちの学校」
先生もまた噂話を聞いていた。
仕事が終わり
「
「
「! な、何で急に!?」
「いいからまくれ! 校長である私の命令だ! まくりなさい!」
彼は渋々従い腕をまくると、そこには生々しい
それを見た校長は1枚の書類を彼に差し出した……
「
その上教師が薬物を使っていると知れるとどうなるか想像もつかない事になるんだよ! 警察には黙っておくから今すぐ書きなさい。
娘の
「……」
彼は「警察に捕まるよりはまし」という仕方なく、そう「仕方なく」要求を飲み、無職となってしまった。
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