第24話 どういう事なのか説明してもらいましょうか!?
「パパ、
夕食前に家族3人が揃ったところで彼女は娘と夫にそう話を切り出した。
何の話だろう? 表情からしてとても真剣な内容になるかもしれない。何が出て来るかは分からない不安はあったが、2人は待つことにした。
しばらくして……2階にある自分の部屋から持ってきた、
「これはどういう事なの!? 答えなさい2人とも!!」
その資料には、
もちろん、
彼女の、本来であれば愛する夫や娘に向けられた視線には凄まじい敵意があった。それは到底家族に対して向けられたものではない程の激しいものだ。
「!! こ、これは!? どこで手に入れたんだ!?」
その内容に、
それを見た彼の妻は、怒りを爆発させる。沸騰した血液が頭に一瞬でのぼった。
「パパ!! あなたはそれでも学校の教師なの!? イジメを黙認するどころかいじめる側の味方になるだなんて!! こんな事絶対にあってはいけないことでしょ!?
教師たるものいじめは許さないのが当たり前なのに、何でこんな酷いことが出来るのよ!?」
「い、いや、ママ……これにはれっきとした訳があって……」
動かぬ証拠を突き付けられて、2人はしどろもどろ。どう言い訳しようか頭は回転するが、妙案は出ない。そうしている間にも攻めの手は更に激しさを増す。
「いじめを黙認するのに訳も何もあった物じゃないでしょ!? こんな事して!! それでも教師という子供たちの手本になる人なの!? どういうことなのかしっかりと説明してちょうだい!!」
「マ、ママ……あまりパパを責めないで。もしクラスにいじめがあったらパパも悪者に……」
「
「ママ!! 私より
そこまで聞いて母親は娘の
パァン!
という乾いた音が部屋の中に響いた。
「相手はレイプ魔の子供だから人権なんて無いですって!?
こんな非常事態だというのに「あいつはレイプ魔の子供だから人権なんて……」というセリフが思わず口からこぼれるという事は、余程それを当たり前の事だと普段から信じているのだろう。
そんなあまりにも酷すぎる態度を見せた実の娘に対し、母親はますます声を荒げる。もはや人間の原型を留めているのだろうか? それ位の憤怒が爆発していた。
「マ、ママ。分かったよ、分かったってば! 俺が悪かったよ。でも仕方のない事だったんだ。
正直に言ったら
「あなた! あなたは教師でしょ!? 子供たちの
それに、さっきから何なのよその口先だけのデマカセは!? 自分が悪い事をしているっていう自覚はあるの!?」
カンカンになった妻あるいは母親に対し、2人はマトモな言い訳すらできなかった。
「ママ、ごめんなさい。私、
「もういいです! そこまで言うのなら2人だけで生活してください! 私はもう知りません! 離婚まではしないけどもう2度と顔を合わせることは無いと思ってください!!」
そこまで言うと彼女は自室にこもってしまった。
翌朝……
旅支度を整えた
既に両親を亡くしていた彼女は身寄りもなく、完全に自由な身だった。どこへ行っても弁護士としてのキャリアがあるからとりあえずお金に困るようなことは無いだろう。
もしもの時に備えた貯えもあるし、地方に行っても都会に行ってもやっていけるだろう。という自信もあった。
電車に揺られて時間が経ち、時刻は朝の8時30分。彼女はスマホでいじめの資料を渡してくれた弁護士に電話をかけていた。
「もしもし」
「もしもし。
「ええ、まぁ」
彼女は家族相手に離縁した事、そして娘と夫が
「……と、いうわけなんです。
出来れば直接謝罪したいけど安易に個人情報を漏らすことはできませんよね?」
「ええ、分かりました。
「では、お願いしますね」
通話が切れた。
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