第22話 夏祭り
夏休みに入り、学生たちにとっては開放的なお楽しみがいっぱいの約40日がやってきた。
「今年もその柄か」
「うん。中学生の頃から身長あまり伸びないから新しいの買ってくれないんだ」
父親が中学校教師、母親が弁護士という家庭のため、一般的に言えば「裕福」な
が、倹約はしっかりとしており「背が伸びてないから買い替えなくでもいいでしょ?」という親の言う事には逆らえなかった。
中学時代から変わらない柄の浴衣には不満げだが、我慢だ。
7月21日、日曜日。
参道の両脇に屋台が所狭しと並び、賑わいを見せている。
その祭りには当然、
その日は、
バシャッ!
神社に着いてそう時間が経っていなかった頃、
誰がかけたのか? 肝心な部分は人でごった返す上に薄暗い中だから分からない。
その直後から、液体がかかった箇所からヒリヒリとした痛みが走った。
「!! な、何これ!! うっ! 痛っ! な、何!? 何なの!?」
「
恋人の異変に気付いた
「む、胸が……首が……痛い!」
急にうずくまる
「大丈夫か!? しっかりしろ! 救急車呼ぶからな! 浴衣の下はどうなってる!?」
「一応シャツとスパッツはいてる」
「じゃあ浴衣脱げ!」
「え、で、でも……」
「いいから! おーい! 誰か救急車と警察を呼んでくれ! 事件が起きた!」
「痛むか?」
「う、うん。痛みは引いてるみたい」
「よかった」
結論から言えば
その後、周りの人が呼んだ救急車に乗せられ、病院へと向かう事になった。
「これは、ほぼ間違いなく塩酸ですね」
「塩酸!?」
院内で手当てしてくれた医師から、謎の液体の正体を告げられた。
塩酸……主に中学校において化学の授業で扱う強酸性の液体。
人体にとって有害なのだが便器の黄ばみの特効薬でもあるため、現在でもそれが含まれるトイレ用洗剤が市販され、出回っている。
今回、それをかけられたのだろう。というのが医師の判断だった。
「
「
警察からの連絡を受けて
「故意に何者かが悪意や敵意を持って彼女に向かってかけた、となりますね。
「……これと言った覚えは、無いです」
「そうか……無差別犯の可能性もあり、か」
被害者に同伴する形で病院に来ていた警官が事情を聞いていた。
次いで警察へ被害状況を報告して、両親は被害届を出すため、警察署へと向かった。
一方、
「
「何ノ話ダ? 女ニ手ヲダシタッテ、ドウイウ事ダ? ソレニ超エテハイケナイ一線ヲ超エテルノハオ前ラジャ……」
「とぼけるなよ! 今日お前は祭りをやってる神社に来てたんだろ!? そして塩酸の入った洗剤を
「今日ハ1日中家ニ居タヨ。暑イノハ苦手デネ」
「とぼけるなと言ってるんだ! テメェが
警察には被害届を出したから、テメェはその内逮捕されるだろうよ。忘れるなよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます