第5話 校長と教師への報復の第1歩
4月上旬、桜の花びらが舞う新学期が始まったばかりの頃。
フクシュウ狂ヒの母校である市立船城中学校の午後の授業が始まり、駐車場周辺には人影のない絶好の報復びよりとなった時間帯。
怪しまれないように中学生時代に使っていた学生服を着て、中にハンマーとアイスピックが入った学生カバンを持って侵入する。
標的は、事件を3年間闇に葬り続けた担任教師の車と、その協力者であった校長の車。幸運な事に2台並んで停車しており、首尾よく見つけるとハンマーでガラスを割りアイスピックでタイヤをパンクさせ、車体に傷をつける。
車の前方には車上荒らし対策のために停車中も録画し続けているドライブレコーダーがあったが、その機能を知っているのかそれも叩き壊してマイクロSDカードも抜いて持ち去る。
30分ほどかけてやりたい放題やった後、フクシュウ狂ヒは学校を去った。
その日の放課後……
「校長先生! 駐車場に今すぐ来てください!」
「!? 何だ!?」
子供たちが学校を出ようとした際、ふと駐車場を見るとそれを見つけたのが第一報だった。
校長と
「何が起きたのかね!?」
「あ、校長先生。これを!」
校長は自分の車を見ると……。
車体には釘みたいなとがった何かでつけられたようなラクガキがびっしりと書き込まれており、すべての窓ガラスが割られ、タイヤも4輪ともパンクしていた。
車内は荒らされドライブレコーダーも壊され、マイクロSDカードも抜かれて中に入っていた撮影データも盗まれていた。
「い、一体誰がこんなことを!?」
「多分……
「でも、証拠は無いですぞ?」
「ううむ……」
しかし決定的な証拠はない。
「校長先生、どうしましょう?」
「……今回は泣いておこうか。今回だけはな」
「そうですか……」
「警察に電話してくれ」
その後、器物損壊事件として警察や自動車保険会社を巻き込んだ騒動へと発展する。警察が学校に? そんな異常事態に生徒たちによる黒山の人だかりができていた。
「
「……いえ、別に「これ」と思い当たるような事はございません」
「本当にそうですか?」
「ええ、本当ですよ。誰にも恨みを買われることはしていませんよ。これだけは誓ってでも言えます」
「ふむ……」
警察相手にも2人はしらばっくれて隠ぺいし続けた。
「ふーむ……通り魔の犯行、か」
警察は、事件の犯人が
となると何者かの恨みを買ってその報復行為でこの事件を起こしたのだろう、とはほぼ確信していた。しかしそれを裏付ける証拠が無い。
何せ被害者がそう言っているからだ。証拠がない以上、警察と言えど動けないし動いてはいけないし、ムリヤリ吐かせると人権問題になるのでそれも出来ない。
結局今回は「通り魔が『たまたま目についた』
「では、また何かあったらご連絡をお願いします」
警察関係者はそう言って学校を去っていった。と同時にレッカー車が学校にやって来た。自動車保険会社に電話して、修理のためのレッカー移動を依頼していたのだ。
幸い
修理費は保険からおりるのは不幸中の幸いだが、等級が下がって月々の保険料が増えるのは痛い。
これから後、フクシュウ狂ヒによる
この事件は「嵐の前の静けさ」であった。
「ククク……愉快愉快」
フクシュウ狂ヒが双眼鏡で大人2人が慌てている様子をニヤニヤとした不気味な
彼にとって
まさに「幸せの繰り返し」であり、見ているだけで歪んだ笑顔になる「高カロリー食品」だった。
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