第3話『再会』

その部屋には荒沢さんがいた。


 牧「荒沢さん!良かった、生きていて」


荒沢「翔司君!無事だったのね、良かった」

  「私たち変な化物に追われて、それで……」


 牧「大丈夫、村木から色々聞いたよ」


荒沢「村木君も無事だったのね」

  「白川君は大丈夫なの?」


 牧「それがまだ見つからなくて」

  「それで今、白川と荒沢さんを探してたんだ」


荒沢「そうだったんだ」

  「というか話、変わるけど翔司君」

  「私に、さん付けなくていいよ」

  「黒子でいいよ、下の名前で」

  「中学からずっと思ってたんだ」


 牧「あ、あぁそうだね」

  「あの荒沢さんも俺に君付けなくていいよ」


荒沢「あ!確かに、じゃあ翔司」(ニコ)


 牧 (急に何だ、こんな状況でラブコメ的な感じ)

   (最高だけどよ)


 牧「く、く、黒子はここで待っててよ」

  「俺、白川探して玄関の鍵探してくるから」

  「そしたらまた来るから何かあったら叫んで」

  「絶対脱出しよう」


俺がそう言うと黒子は聞いてるのか

聞いてないのか、わからない雰囲気で

部屋の大きな窓から空を見ていた。


牧「黒子?そこの窓にあまり近づかない方いいよ」

 「落ちたら危ないし」


荒沢「そうだね、翔司は優しいね」

  「ありがと」 


そう言う黒子の顔はどこか悲しげな顔をしていた。


荒沢「そうそう、そこの端っこに何か4桁の番号を」

  「入力する電子機器があるんだけど」

  「箱の中に何か入ってそうなんだよね」


荒沢が言う箱は大きな窓の隣に置いてあった。

  

 牧「もしかして玄関の鍵だったりして」


荒沢「わからないけど」


 牧 (4桁の番号……3845か)


 牧「ちょっと入力してみるね」

  「3845っと」


  「ピーーーガチャリ」


すると箱のロックが解除された。


 牧「ビンゴ!」


荒沢「うわ、凄い!よくわかったね」


 牧「まぁ色々あってさ、それで解けたよ」


さっそく箱の中を調べてみる事に。


 牧「何だこれ、クランク?」


荒沢「クランクだね〜」


俺と黒子は目を合わせるが

俺は恥ずかしくて、すぐに視線を逸らした。

クランクをよく見ると六角形の形をしていた。


荒沢「こんな物どこで使うんだろう」


 牧「もしかしてあそこか」


荒沢「思い当たる場所があるの?」


 牧「1階の広い部屋があったんだけど」

  「そこの倉庫で使うと思う」

  「だからちょっと行ってくるよ」


荒沢「そんな急がなくてもいんじゃない」

  「少し休んでからでも……」


 牧「いや、すぐ行ってくるよ」

  「玄関の鍵かもしれないし」

  「それより一刻も早く脱出したいしね」


荒沢「そうだよね、わかった」


 牧「じゃあ行ってくるよ、待ってて」


荒沢「うん、気をつけてね」


 牧「了解!」


そう言って俺はこの大きな窓の部屋を出て行く。


荒沢「あっ……」

  「……………………」


そしてこれが黒子との

最後の会話になるとも知らずに……


大きな窓の部屋を出て、すぐ左側を向くと

テーブルがありまた資料があったので

読んでみることに。


『にこちゃん実験記録3』

7月6日 2時40分

笑顔町のとある場所にて

にこちゃんを爆破してみる事に。

爆破してみると流石に粉々になり死亡。

にこちゃんは爆発に耐えれないもよう。


追記

にこちゃんは捕食するほど強化されるが

徐々に頭が肥大化する様子。

               『ブラック』


 牧「だから奴等は頭がデカいのか」

  「爆発には耐えられない…」

  「でも爆弾なんて持ってないしな」


俺はそんな事を口ずさみながら階段降りる。

そして玄関ホールまで来た時だった……




村木「うわぁぁあぁぁ」


村木の叫び声が聞こえた。


 牧「これは村木の声!まさか…」


俺は嫌な予感がし、急いで村木部屋に向かった。

村木部屋の扉を力強く開ける。

 

「バタンッ」


するとそこには、にこちゃんが村木の目の前に居た。


 牧「村木っ!」


村木は、にこちゃんに

追い込まれ逃げ場のない状態だ。


村木「ひっ……」


 牧 (くそ、どうする?投げる物も何もない…)

   (音を鳴らしてみるか)


俺は強く壁を叩いた。


「ドンッドンッドンッ」


にこちゃんは少しこちらを向いたが

すぐに村木の方へと顔を向ける。

このままでは村木がやられる。


  牧 (どうする?どうする?どうする?)


と考えていた時だった。


にこちゃんが村木の髪の毛を掴んだ。


村木「うぁ"ぁ"ぁぁ助け……」


にこちゃんが思いっ切り髪の毛引っ張り上げ

一瞬で村木の頭皮が、めくり上がり

白い頭蓋骨が見えていた。


村木「い"だぁ"ぃ"ぃぃぃ」


俺は一瞬の出来事にただ呆然と立ち尽くしていた。

そして、にこちゃんは村木の頭蓋骨にかぶりつく。


「ガギ、ボギィ」


村木は白目を剥きながら痙攣をしている。

俺は直感でもう村木は助からないと思った。


村木「アぁ、ぅぁ……」


俺は我に返りこの場から逃げ出す事にした。


 牧「村木……ごめん!」


村木「タスけ…」


  「バタンッ」


俺はすぐに逃げ出した。

何も考えずに全力で走り、いつの間にか

銅像の部屋に来ていた。

俺はさっきの出来事を思い出し嘔吐してしまう。


 牧「ごめん、村木…ごめん」


俺は別の事を考えたりして

自分を少し落ち着かせた。

だけど先ほどの光景が脳裏に蘇る。


 牧「だめだ、落ち着け」

  「黒子と白川と脱出するんだ」

  「ここに居ても意味がない、先に進もう」


俺は倉庫の部屋に向かってゆっくり歩いて行く。

 

 牧「やっと着いた、よし、クランクを使うか」


クランクを六角形のくぼみにはめ

あまり力が入らないがゆっくり回す。

すると中から出てきたのはライターだった。


 牧「ライター?何でこんな物が」


???「よぉ」


 牧「!!!」


俺はビクっと体を震わせて後ろを見ると

背後に白川が立っていた。


 牧「白川か、生きていたのか」


白川「なんだよ、その言い方なんかうぜぇな」


 牧「あ、ごめん」


白川「そういや、村木と荒沢は見つけたか?」


 牧「あぁそれで話しておかないといけない事が」


白川「なんだよ、まさかあの化物にやられたのか?」


 牧「村木がやられた」

  「突然の事で助けれなかった」


白川「マジかよ、何でやられたんだ?」


 牧「具体的な詳細は喋りたくない、気分が悪い」

  「ちなみに黒子は無事だ」


白川「黒子?あ、荒沢の事か」

  「荒沢といえばアイツはヤバいぜ」


 牧「は?何言ってんだよ、何がヤバいんだよ」


白川「実はよ、俺見ちまったんだ」

  「アイツが玄関の鍵を閉める所を」


 牧「えっ?」


白川「お前が1人で左側の扉に行った後」

  「化物が来たんだよ」


 牧「それは村木に聞いたよ」

  「それより黒子が鍵を閉め…」


白川「おい、おい、最後まで話を聞けよ」

  「それでよ、化物から逃げ切って」

  「俺、1人だけで帰ろうと思って」

  「玄関ホールに向かったんだよ」

  「そしたらよぉ、アイツが鍵閉めてたんだよ」


 牧「見間違えじゃないのか?村木だったとか」


白川「それはない、この目でバッチリ見たんだ」

  「アイツはバレてないと思ってるだろうがな」


俺は白川のがあまり好きじゃないが

顔や態度を見ても

嘘をついてるようには見えなかった。


 牧「なら俺が確かめて来る」

  「黒子に直接聞いて来るよ」


白川「ふーん、まぁ、どうでもいいけどよ」

  「アイツとは関わらない方がいいと思うぜ」


とその時……


  「ドガーーンッ」


倉庫の隣にある大きなヒビから

にこちゃんが現れた。


牧・白川「!!!!!」


 牧「おい、白川逃げるぞ」


白川「あん?逃げる?逃げるわけねぇだろ」


 牧「何馬鹿な事言ってんだ、こいつはヤバい」


白川「あん時はちょっとビビって」

  「逃げちまったけど、今回は違う」

  「ケリつけようぜ、化物が」


 牧「やめろよ、早く逃げて黒子の所に行こう」


白川「ふ、なら先行ってろよ」

  「コイツやったら行くからよ」


そう言って白川は近くあったビール瓶を持つ。


白川「喧嘩ってのはなぁ、素手だけじゃねぇんだよ」

  「いいから先行けよ」


そう言う白川の体は少し震えていた。


 牧「……わかった」


と言いつつ白川の事が少し心配で

俺はドアの近くで白川を見ていた。


白川「いくぞ!おらぁぁぁ!」


そう言いながら白川はビール瓶で

にこちゃんを思いっ切りぶん殴る。


 「ガシャン!」


ビール瓶は割れたが見事に

にこちゃんの左腕にヒットする。

すると、にこちゃんが叫び始めた。


にこちゃん「グギァ"ァ“ァ"ァァ」


なんとヒットした左腕が溶け始めていた。


 牧 (腕が溶けた?どういう事だ…)


白川「ふ、おめぇ、ビールが弱点だったのか」

  「ならもっとビールを飲ませてやるよ」


白川はまたビール瓶で思いっ切りぶん殴る。

今度は脇腹にヒットにまた溶け始めていた。


にこちゃん「ギギァ"ァ"ァ"ァェェ」


白川「ほら、これでも飲んでろ!」



その時、にこちゃんは意味不明な言葉を

喋りながら、右腕を振り回し暴れ始める。


にこちゃん「∃"∇☆ァ"ギシ■グジァァァ」


白川「うお、マジか」


そして次の瞬間……


「スパァン」





白川の頭部が俺の足元に吹っ飛んでいた。


「ゴロン」


白川の目は、キョロキョロと

口は、パクパクとまだ動いていた。


白川「俺は……なん…で」


 牧 (うっ……くそ、気持ち悪い吐きそうだ)


嘔吐を我慢し俺は、にこちゃんの方を向くと

白川の体を捕食していた。

するとさっき溶け始めていた部位が再生していく。


 牧「マジかよ…逃げるしかない!」

  「白川が稼いだ時間を無駄にするな」


俺は急いで玄関ホールまで走った。

にこちゃんはもう追ってきていない。

 

 牧 (やはり視力が悪いのか?)


そして俺は白川が言っていた

黒子が本当に玄関の鍵を閉めたのか、それとも

白川の見間違えなのか聞きに行く事にした。


  

   「パリィン」 


すると2階から窓が割れたような大きな音がする。


 牧「まさか、にこちゃん?」


嫌な予感がした俺は急いで

黒子の元へ走って行く。


 牧「頼む、無事でいてくれ黒子」


そして黒子の居る部屋扉を開けると…

  

「バタンッ」






そこには黒子の姿はなかった。


牧「黒子?おーい」

 

返事はない。

大きな窓が割れていたので外を覗いてみる事に。


 牧「もう外は暗いな」

  「黒子は外に?くそ、どこに行ったんだ?」


そして割れた硝子の下を見ると

日記のような物が置いてあった。


 牧「これは黒子の日記?」


もしかしたら黒子がメッセージを

残しているかもしれないと

思い読んでみる事にした。

日記のタイトルには『私の決意』と書いてあった。


 牧「私の決意、どういう事だ?」

  

俺は黒子には悪いと思いながらも

日記を読んでみる事にした。



    『私の決意』

私はとある目的の為に今生きてる。

それは影の組織を壊滅させる事だ。

いや、ボス.シャドウを殺す事だ。

その信念、決意が

崩れないようにこの日記を書く事にした。


 牧「なんだよ、これ」

  「黒子、本当にどこ行ったんだよ……」


                    第4話へ

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