4話「リョーコはなんか積極的だぞ!」
おじさんが言うに、この現実世界は『
で、自分達のような
「……と言う設定で行こうかと思います」
にっこりとおじさんは笑む。
よく見れば近未来的な装置もハリボテとして囲んでいた。太陽系の模型も発泡スチロールで加工された簡単な作りだ。
サングラスを掛けた小太りのおっさんこと、監督が走り寄ってくる。
「いいか? 漫画家を目指すお前達は、
「はい!」
なぁんだ! さっきまでは芝居でそうしてたんだ。思わせぶりしやがって、心臓に悪いじゃないかぞ。
大体、世界が危機になってるとか現実離れしてる。そうだ映画の設定なんだ。これは映画の設定なんだっ……。
気が楽になって明るい笑顔で芝居に投じ────……、
「はっ!?」
ガバッと身を起こすと、朝日がカーテンの
見渡せば生活用品と
……夢かよ。いや、どこまで夢なんだ?
「アレは……ガチなのかぞ?」
眠気が吹き飛び、昨日の事が思い出されていく。
あの近未来的な施設を見せられた後、おじさんは「明日もよろしくお願いします」と言うなり帰宅を
入学式の日なのでまだこれから、と言う事だろう。
なんだかやるせない気分に沈む。
ちょいちょいと朝食を済ませると授業に必要な筆記用具を
今日も
アニマンガー学院の教室は、既に生徒達でごった返ししていた。
「ナッセ──! こっちこっち!」
陽気に手を振ってくるリョーコ。
金髪のおかっぱで元気いっぱいな眩しい笑顔。それを気にせず後方の空いた席へ……、
「ちょっと待った────!!」
ここまで構ってくれるなんて、なんだかむず痒いものがある。
始業が始まるまで間があるからと、週一の楽しみにしている週間雑誌で
「あ、これ『
リョーコが覗き込んでくる。女の子の
「お願い見せて。今週のまだだから~」
「……う、うん」
再び雑誌を開く。
急に女の子が距離を縮めてきて、なんだか顔が
「お、
「リョーコでいいの! リョーコで!」
プンスカと頬を膨らませる。それを
「それはいいけどこれ少年漫画だぞ。もしかしてボーイ……」
「友達ね、いつも攻め受けの
「うん。それに迫力のあるバトルシーンと必殺技があるからオレは楽しみだ」
「あ~、分かる分かる! 主人公の『
楽しそうに話すリョーコに思わず
話が合うとノリノリになるっていうかな、ここまで女子と絡んだ事はなかった。
まさかバトル漫画の話に乗ってくる女の子がいるとは思わなかったぞ。
「次週待ちきれんわ──!」
「しょうがないだろ。週刊誌の作者大変だし」
「あ──、そうだよね。うん。しょうがないっか」
にっこり笑顔のリョーコがたまらない! もうマジ直視できない!
別にタイプでもないし、彼女でもないのに、胸がドキドキ高鳴ってて
やっぱ女子に免疫のない童貞は嫌だァァァァぞ!
先生がやってきて授業は始まった。
「え──、まず空間とは二点視点から……」
教師がホワイトボードにマジックで描いて、普通に漫画制作の授業をしているも、
昨日の事は夢なのか違うのか気になっていたが、それは今朝のリョーコの眩しい笑顔にかき消された。
「バッ! そんなんじゃな……」
恥ずかしくなって声を張り上げ、気付けば授業中。場にいたものの視線を浴びる。
「なにかね?」と先生。
「あっ! い、いえ……。何でもないですっ!」
顔を赤くして首を必死に振る。
穴があったら入りたい思いで
「どうしたの?」キョトンと首を傾げるリョーコ。
お前のせいだよ! とは言えない……。午前中の授業中はもどかしい気持ちを抱えたまんまだった。
傍目で見てた
同じ
更にそんな人間関係を見ていたコハクは冷淡な目をしていた。
一時間ぐらいの昼休み、生徒達はコンビニやレストラン行くなりで外出していった。
「はい、これオススメのタコ焼き!」
コンビニで買った食品を平らげている時に、リョーコがタコ焼きを寄せてきた。マヨネーズとタレでたっぷりかけられたホカホカな団子状の食べ物だ。
「いいの?」
キョトンとしてしまう。
「食べなきゃソンソン! ささ
「……昼飯がタコ焼きって、どうかと思うぞ」
「え~~? いいじゃんいいじゃん!
「なんだかなぁ……」
大雑把なリョーコには呆れるが、どことなく
「そういえばマフラーよく着けてるよね?」
リョーコはオレのマフラーの
「うん。師匠からプレゼントしてくれたぞ。夏だって冷却してくれるから暑くないし、むしろ
「冷却付きマフラー!? あらビックリ!?」
ノリに乗ってリアクションしてくれるリョーコ。しばしの間、沈黙したのち「あはは」と笑い合う。
「ってかずっと着けてるからなんかの“
「『トレジャーXトレジャー』かい! ……まぁ、そんな感じかな?」
そういえば気にしてなかったけど、師匠が「これずっと着けて」ってたから着けてたけどなんか意味があるのかなぞ?
忘れて外出しても、いつのまにか首に巻かれてたし。
「まぁ、いっか。気付いたら身に付いてるし」
「え? 気にしないの!?」
リョーコは驚きのリアクションする。
「呪いのアイテムってか、むしろ体の一部!!」
キリッと開き直り、親指を立てた拳を見せる。それに対し、
「教会で解呪してもらえ──!」
某ゲームのネタで突っ込む、ジト目でにやけ口のリョーコ。ほんと明るくてノリがいいなぁ。こういうコミュケーションなら、毎日が楽しみになるなぞ……。
スッと気持ちがスッキリするような心地良さを、彼女とのやり取りで得られていた。
それはそうと刺してくる視線がなんか痛い気がするんですけど……?
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