第15話 魔女の力2
葉っぱを持った例の子が来たので、時計を見る。
午後五時前。
「もうこんな時間か」と呟きながら、身体を伸ばす。
受け取った葉っぱの枚数を数えて、塩おにぎりと交換。余っているので、今日も一つおまけをする。
これにて交換及び、本日の営業終了。
朝のジョーさんのおかげで、合計二十四個売れた。新記録だ。
このペースでいけば、百個売り上げるまでにあと三日といったところ。
最初のゴールが見えた気がして、少し嬉しくなった。
本当に百個で変化があるかは、わからないがな!
商品説明のポップを追加した割に売り上げに変化がなかったと思いつつも、いつものように、トリスさんに声をかけて閉店作業を開始。
残り物の廃棄をして、洗い物を済ませ部屋へと戻る。
夕食にハンバーグ定食を選び、食べる。
ケチャップ寄りの味付け。個人的には、デミグラスソースに近い方が好みだけれど、これはこれで美味い。照り焼きソースや、おろしポン酢も好き。結局美味しければいい。
四分の一を残して、部屋に備え付けの皿へと移しておく。これは明日の朝食にパン系を選んで、のせて食べる用。少し楽しみ。
食べ終わったので片づけをして、流れるように風呂の準備。
タブレット端末で少し増えた残金を確認しながら、気分良く次に買うべきものを探していく。
日々増えていく未処理の葉っぱのことを考えると、干し網が最優先といったところか。あとは、考え付いたことをメモしておくための用紙や、シャーペンなどの筆記用具も欲しい。
残金が七千ウィッチを越えていたので、思い切って両方買う。
干し網は、少し大きめの物にした。二個同じものを買うよりも少し干せる数が増えるから。見た目的に、同じサイズを並べた方がいいかもしれないが、今のところは効率重視。
メモ用紙は、コピー用紙で代用することにした。定番のA4サイズが、五百枚で五百ウィッチと安かったのが理由。
筆記用具は、シャーペン本体に芯と消しゴム、それからボールペンのセットでこちらも五百ウィッチ。
全部で三千ウィッチの出費となり、残金は四千三百五十ウィッチとなった。
お風呂が沸いたが、先に新しい干し網を持って厨房へ向かいセットする。
終わるとすぐにお風呂タイム。
今日も一日の振り返りをして、身体が温まったので出る。
そのまま寝る準備をして、ベッドでお試しペットについて調べる。
さすがにホワイトタイガーは無理なようだが、大型犬は選べる。大きさ的にそれ程の違いがあるようには思えないので、金額の問題だろう。
いや、もしかするとこの魔獣のホワイトタイガーかなりの大きさだったり?
画像だけでは、判断が付かない。
せっかくなら選べる中で、高額なのを選びたくなるのが人の性。
順番に見ていくと、本来一日二万する魔獣のジャガーが目に入った。模様は普通。ただ、お試しなので猫サイズなのだとか。これなら猫のベンガルを選んでもそんなに変わらない気がするが、魔獣というのが俺の心をくすぐってくる。
他の候補としては、魔獣の狼、キツネ、タヌキか。キツネはなんとなくわかるが、日本の田舎だと馴染みのあるタヌキが高いのは解せない。だが、可愛いのは認める。あと雑食なので飼うのは楽そう。
異世界らしいのだと、スライム。ただこれは元々安いし、意思疎通がまったくできなさそうな気がして選べない。
考えていると眠くなってきたので、店舗のレベルが上がるなどした時に記念として利用しようと誓いながら寝ることにした。
五日目の朝。
予定通り、パン系の朝食を選択。
今日は卵ペーストが付いていたので、ハンバーグとミニサラダの野菜を一緒にのせて食べる。個人的には、この味がごちゃごちゃしたのも好き。コンビニとかで売ってるハムカツに卵ペーストが付いたのもあり。味がマイルドになる。
そんなことを考えていたら、ハムカツが食べたくなった。夕飯の候補として、メモしておく。
メモ用紙の最初が「ハムカツ」なのは、俺らしくて良いかもしれない。
昨日と同じように準備を始め、開店前に放置おにぎりの状態を見る。
常温保存の物が、昨日から変わっていない。食べちゃダメそうな紺色になるとそこからは変わらないのかもしれない。
本当はこのまま、経過観察するつもりだったがカビが生えるリスクを考え、ここで終了として廃棄する。同じく冷蔵庫の物も廃棄。
ホットショーケースの物は、継続して経過観察。
昨日と同じくらいの時間になったので、開店する。
オーニングが開くと子供の顔が見えるかと思っていたら、ジョーさんでビックリ!
「開いた! よーし、間に合いそうだな!」
「おはようございます。待ってたんですか?」
「おうよ! やっぱ魔女すげえわ。どうも鬼系だけだけどよ、効果あんだわ!」
「鬼ですか?」
「ああ。小鬼とか鬼とかな。てことで、今日も八つくれや」
「はい。少々お待ちください」
昨日のジョーさんの話の時点では半信半疑だったんだけど、二回続けて効果があったのなら、本当にこの塩おにぎりには特別な力があるようだ。
少し嬉しくなりながら、急いでいるようなのでササっと八つ用意して渡す。
「うっし! ありがとよ! 釜二枚ここに置いとくぜ。じゃあな!」
ジョーさんは、受け取ると小走りで去って行った。
キャッシュトレイから釜のコインを拾い上げ、レジを操作。
おにぎりだから鬼に効果あるのかな?
「鬼切りってか。ふざけすぎじゃね?」
そう呟きながら販売用のカウンターの方を見ると、葉っぱを持った子供がこちらを見ていた。
独り言を聞かれた気がして少し恥ずかしくなったが、この子は感情があまり表情にでないので、パッと見た感じいつも通り。俺的に、この子の好感度が若干上がった。
「おはようさん。ジョーさんが居たから待っててくれたのか?」
いつもより少し優しい口調で話しかけると、子供は二度頷いた。
「そっかそっか。ちゃんと待てるのは偉いな。朝だけど、おまけしとくよ」
そう言って二つ包み、葉っぱと交換する。
「また閉店前にも来るんだろ? じゃ、あとでな。まいど」
頷いた後、去っていく子供を見送ると、葉っぱを持って厨房へ移動。減ってしまった塩おにぎりの補充をしなければいけない。
ジョーさんが毎日来るとは思えないが、このままだと朝一から開店前に用意した塩おにぎりが売り切れる状態となってしまう。
解決方法を考えるが、早起きが最初に思い浮かび首を横にふる。
これ以上早くから起きたくない!
他の方法は……と考えていると、ホットショーケースが目に入った。
この設備も、中に置いてある塩おにぎりの劣化が見られないことから、魔女の不思議な力の影響を受けている。
今日までの実験で、閉店前に召喚した物を入れておいて、朝販売することは可能であることはわかっている。
問題は、取り出したあとの劣化速度。
売った後、急速に劣化するとなるとトラブルの元となる。
開店前は常温と冷蔵の分は処分したので、確認作業が楽になると思っていたが、また増えそうで少しげんなり。
とりあえずということで、上段の入れっぱなしの物から一つ選び常温保存を開始する。常温での劣化速度は、だいたい把握している。後は閉店までに数回見ればわかるだろう。
ふぅ。と一息つき、販売スペースへ移動。
こういう気分の時に、やはりペットが居てくれると良さそう。
目の前の道を通る馬を見て、そう思った。
「魔女の集金システムは、本当に良く出来ているな」
そんな俺の声を拾ったようで、馬は一瞬こちらに目を向けたが、止まることなくそのまま通り過ぎていった。
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