第52話 戦闘(4)
スクロールは手尺で一尺ほどの円柱に紙がくるくると巻かれている平凡な巻物だった。 その端をつかんで振り払うと、がらりと広がった。 幅の2倍ほどの長さの
ミルは詳しい使い方を言ってくれなかったが、彼女がスクロールをどう使ったのかはさっきはっきり見た。 私はバットを置き、スクロールの両端を両手で握った。
スクロールの真ん中をつかんでずーっと切り裂いた。 少し外れて裂かれたが確実に作動した。 なぜわかるかというと、スクロールから熱い気がふわりと染み出てくるのが感じられたからだ。
炭酸ドリンクのカンを開ける時、ふたを一度で完全に開けずに軽く押してガスを抜いたことがある。その微弱に漏れる炭酸ガスのように、圧縮されていた力が吹き出してくる感じだった。
【この魔法に何を望んで、何を具現化したいのかをホウジが考えるの。そのイメージをまとめる言葉を思い出せるなら、それでいい。】
ミルの言葉を思い出しながら、私は小さくつぶやいた。
頭の中に浮かぶイメージ? そんなの、決まっているだろう。
「
始動語を唱えるのと同時に、力いっぱい振ったカンから炭酸が発するように熱い気がファッと噴き出してきた。まるで灼熱の真夏日差しの下で感じられるほどの熱気だ。
スクロールは自らが噴き出すパワーに耐えられず、火がついて燃え尽いてしまった。 スクロールから放出された熱い魔力が右手に集まり、手のひらの上で団子を転がすようにまとまっていった。
「これが、ファイヤーボールの魔法。」
右手に宿った真っ赤な魔法のオーラは、拳ほど大きさに圧着され、火の球となり私の手に握られた。 まるで小さな太陽が手の中にあるような感覚だった。球の中で台風のように渦巻いている激しいオーラは確かに感じられた。
こちらの様子がおかしいことに気づいたのか、イマエールとその側近たちがようやく緊張する姿を見せた。 まだ距離は遠いし、ミルのように弓を持ったわけでもないから、すぐに攻撃しそうに見えないだろう?
私は軽く肩を回しながら腕を緩めた。 右手にはちょうどいい重さが感じられた。 この世界ではこのように完全な球形の物体を余程見ることがなかったため、このグリップ感がはるかに懐かしく感じた。
腕は大きく回さない。 それがピッチャーではなく内野手だった私のスタイルだった。 送球は短く、簡潔に、強く、そして正確に。 ミルが弓の弦を引くように、私の右手も肩の近くにしっかりと装填される。
発射台のようにステップを踏む。
鍵を回す感覚でヒップから始めて胴体が回転する。
その力はそのまま腕に伝わる。
滑走路を走る戦闘機のように一気に加速のついた腕を…
ファイヤーボールは真っ赤な軌跡を空中に描きながら、恐ろしいスピードで飛んだ。向こうで対峙していたウズクマルタカと敵の連中もこちらを振り返すほどだった。 いや、自分自身さえも戦いの途中だったことすら忘れ、この会心の一球を満喫していた。 私の意識の奥、その一番深いところに溜まっていたエラーの記憶まで打ち砕くような爽やかな軌跡だ。
3塁から1塁までの距離を知っているか?
およそ38メートル。 球場によって多少の差はあるが、だいたい40メートル前後だ
そうだ。今、私が投げている、この距離だ。
非常に短い、しかし一生忘れられない飛行を終えたファイヤーボールは、私が狙ったところに正確に着弾した。
– クァアアアン!
炎とともに、ものすごい爆音が響き渡った。 今、私の体の中に震えてくるこの振動が、会心の送球を完成させた喜びの戦慄なのか、それともこの森を揺るがした爆発の残響なのか。 一つ確かなのは、少なくともこれを、あそこで飛んでいるやつらは全身で感じているだろう。
イマエールを護衛していた連中は、着弾が引き起こした嵐に巻き込まれ、空中に投げられてそのまま地面にたたきつけられた。
「インマエールは!?」
残念なこと、イマエールは生きていた。 後ろに倒れたままぶるぶる震えていた。その様子を見ると着弾の瞬間に部下の一人を盾にして爆発の直撃を避けたようだった。
いったいどこまで卑怯で卑劣なやつなんだ。
「ひ、ひぃぃぃ!?!」
「イマエェェル!」
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