第49話 戦闘(1)
「あのオーク野郎は俺がぶっ殺してやる。」
「まあ、あの弱虫は一発でくたばりそうだな。」
不良たちは汚いおしゃべりを交わしながら、ゆっくりとこちらに近づいてきた。どんなに高く評価しても精鋭な兵士、とは言えないが、確かに乱暴さや喧嘩の経験だけは豊かに見えた。
そして、どちらも私には絶対的に足りない部分だ。私は固唾を呑んで、バットを背中から取り出してしっかりと握った。
「ホウジ。力が入りすぎた。」 【法次、力が入りすぎたじゃん!】
ウズクマルタカが落ち着いた声で与える助言にお父さんの声が重なる。 何だ?なんでよりによって、こういう時に…
「力が入り過ぎると隙ができる。平常心を失わず、冷静に対応するんだ。」
「はい。」
大きく深呼吸をし、足で地面を2、3回掘り出した。
ウズクマルタカは不思議な目で私をことを見たが、これは私なりの儀式である。 打席に入る前にいつもやっていたルーティン。確かに一段と心が落ち着き、震えが止まった。
「メイは私の後ろで動かないで。ホウジとウズクマルタカさんは距離に気をつけて。特にホウジは一対多の接近戦は避けるように。」
私とウズクマルタカの間に立って、ミルは小さい声でささやきのように指示を出した。そして、深緑のマントを片方の肩にかけ、しっかりと固定させた。マントの下に隠されていた腰帯には、矢の一束が入った矢筒といくつかのスクロールが整列されていた。
「オーケー。」
「任せたまえ。」
一歩、二歩とふざけながら近づいてきた不良たちも、少しずつ近づくと、その目に殺気を抱いて、スピードを上げ始めた。
「イヤアアア!」
来るぞ。
ミルは弓を持った左手を前に堂々と差し出した。 しかし矢は?
矢筒には矢がいっぱい入っていたが、ミルの右手には何も持たれていなかった。いや、訂正する。いつの間にか,彼女の手には開かれたスクロールが風にはためいていた。
ミルが小さくつぶやく声が風に乗って私の耳元に聞こえてきた。
「女の子だからって、勝手にするな。韓国でも、ここでも、誰もお前なんかに使われるために人生を生きてこなかったから。いいわ。二度とそんなクズのようなこと言わせないわよ。
呪文のようなつぶやきに続いてミルは朗々と叫んだ。
「
初めて見た、あれが本物の魔法のスクロールなのか?
スクロールにぱっと火がつき、閃光が飛び出してミルの弓を包んだ。ミルは魔法が抜けだして真っ黒になってしまったスクロールを投げすてて、代わりに光に染まった弓の弦を引いた。
矢をつがえてない空っぽの弓を。
パバババ。
ミルが空っぽの弦を引っ張ると、弓には数発の光の矢が姿を現した。 一気に二、三本の矢を同時にかけて撃つのは映画なんかで見たことがあるが、あんなに多くの矢がつがえる姿は非現実的で、文字通り魔法のような姿だった。
「マジックアローか!だが、こんなにたくさんの矢を同時に使うのは初めて見た!」
「バレンブルクの魔法力と私の故郷の特産品を結合した試作品ですから。」
ウズクマルタカの感嘆に、ミルは何ともなく答え、そのまま弦を手放した。
シュシュッー! シュシュシュート!
「マジックアローだ!」
「ちくしょう、魔法使いがいるとは言ってなかったじゃん!」
「スクロールだ! あの女! スクロールを持ってる!」
まるで元の世界の多連装ロケット砲がミサイルを放つように、マジックアローは長い光の軌跡を描きながら、放射状に広がった。 勢いよく襲い掛かってきた不良どもは、慌てふためき、伏せたり避けたりするのに精一杯だった。
「クアアッ!」
正確に照準して撃つ狙撃ではなく、放射状に散らされた散弾のようなマジックアローなので命中率は低かったが、その中でも運が悪い二人くらいのやつらは矢を撃たれて、まるで車にひかれたように跳ね返された。
ミルは遅滞なく、まだ光の気がこもっている弓の弦を再び引っ張ってから、撃った。
シュシュッー! シュッー!シュッー!
もう一度マジックアローの第2波が奴らに降り注ぎ、矢の雨が止んだかと思って頭を上げていた性急なやつらの何人かがあごや顔面に光のミサイルを打たれ倒れた。
ミルは最後として第3波を撃った。 今度はあえて顔を上げようとする者さえおらず、光の矢は虚空を切り裂くように消えていった。
発射を終えたミルは、タッ、タッ、と2回のバックステップで後ろに下がった。光が消えた弓を手にしたまま。 魔法の力が尽きたのだ。
もう、これから私とウズクマルタカの出番だ。
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