男に裏切られた私、親友で幼馴染の財閥令嬢の婚約者(?)現る

  私達のいる客間に現れたのは、高そうなスーツをみに纏った、イケメンの部類に入る男性だった。そんな男性に続いて慌てた様子でやって来たのは、この家のメイドさんだった。


「ちょっ!?秀男ひでお様!困ります!?この部屋は終わるまで誰も通すなと言われておりますのに!?」


  やって来たメイドさんは、秀男と呼ばれた男性を止めようと必死で男性の腕を引く。よく見ると、メイドさんの胸のプレートはピンク色で、前に聞いた話だが、東堂家のメイドさんは胸のネームプレートの色で階級が決まっていて、ピンクはまだ新人を表す色だったはず。新人メイドさんしからいない時を狙ってこの男性はやって来たのだろうか?


「えぇい!!うるさい!新人メイド如きが僕に意見するな!僕はこの東堂家の分家!東林とうりん家の東林 秀男だぞ!つまりは!この家の関係者だぞ!」


「えぇ、そうよ。そして、可愛い可愛い私の息子でもあるわ」


メイドさんを振り解き、そう堂々と宣言した男性に加え、やたらと派手なドレスに高価そうなジュエリーをみに纏った女性が現れそう言った。その現れた2人を見て徹おじさんが溜息をついた。


「秀男……それに、高美たかび。いきなり来て、こんな騒ぎを起こして一体何しに来た」


「あら?私がここに来て何か問題あるのかしら?ねぇ、お兄様」


高美と呼ばれたその女性は、宗介おじさんを見てハッキリそう告げた。そこで、私はようやく私は百合花に現れた男性と女性について聞いた。


「おじさんの事をお兄様って……もしかして、あの女性って……」


「えぇ。やたらと派手なあの女性は東林 高美さん。結婚して苗字は変わってるけど、間違いなくうちの父さんの妹よ。そして、1番最初に現れて迷惑かけてる男性が、高美さんの息子の東林 秀男よ」


私達が2人で小声でそんな話をしていると、その秀男さんが百合花の前までやって来た。


「百合花さん!これは一体どういうつもりだい!?僕は君の婚約者だろ!?それなのにこのような宴を開くなんて!?」


「えっ!?婚約者!?そうなの!?」


秀男さんの言葉に驚き、私は百合花の方を向くと、当の百合花はいつもと変わらぬ涼しい顔で秀男さんに言葉に反応する。


「うちの嫁がいる前で勘違いさせるようや事を言わないでくれる。貴方と婚約関係になった覚えはないのだけど」


その冷え冷えとした口調と鋭い視線で告げられ、秀男さんは思わず後退るもすぐに反論する。


「しかし!僕と結婚してくれると言ったじゃないか!?」


秀男さんの言葉に、私は「そうなの?」という言葉の意味を含めた視線を百合花に向ける。百合花は一口お茶を啜り


「確かに、それは言ったわね」


「そうだろう!そうだろう!つまり僕らは立派な婚約関係に……」


「あまりにも貴方からの求婚がしつこいから、30歳までに私が茜を口説き落とせなかったら、貴方との結婚を考えてあげると言ったわね」


百合花がそう告げると、百合花は再び静音さんを呼んだ。静音さんはやはり何処からともなく現れると、何枚かの紙を徹おじさんや薫さん達にその紙を手渡した。


「ふむ。誓約書として書かせたのか……確かに、誓約書には30歳までに茜君を口説き落とせなかったら、秀男君との結婚を考えると書いてあるな」


「えぇ、ですから僕らは婚約関係で……」


「しかし、あくまで考えるだ。出来なかった場合すぐに結婚するとは書いていない」


ズバリとそう告げた宗介おじさんに続き、徹さん達も言葉を紡ぐ。


「それに、期間内は婚約関係になるとも書いてないし、これで婚約者とは言えないだろ」


「だな。そもそも、期間内に百合花は茜を口説き落としたしな」


「つまり、この結婚を考えるというのも無くなったという事になるわね」


散々言われて、秀男さんはしばし悔しそうに歯軋りしたが、やがてキッと私を睨むと


「そ!!そもそも!この女は百合花さんの相手に相応しくないッ!!」


秀男さんは私の方を指さしてそう叫んだ。

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