男に裏切られた私、親友で幼馴染の財閥令嬢の家で元彼について知るす

  お酒があまり得意ではない咲良さんは、出されたお茶を一口啜った後、軽く息を吐いて裏切君の衝撃の事実を口にした。


「そもそも、彼は第二選考の面接以前に、第一選考の書類審査の時点で落ちてるはずなのよ」


「えっ!?そうだったんですか!?でも、私裏切君のメールを見ましたけど、間違いなく私と同じ第二選考合格通知でしたよ?」


東堂コンツェルンの合否通知はメールで送られてくる。故に、当時はお互い合格メールが来た事に喜びあった。まさかあんな裏切られ方するとも知らずに……


「えぇ、私も確認したけど本当に合格を知らせるメールだったから、手違いでしたって追い返す訳にもいかないから、一応第三次選考のプレゼンとディベートを受けさせたんだけど……」


  その当時を思い出したのか、咲良さんは重い溜息をついて続きの話をした。


「資料やプレゼン内容はとても魅力的なのに、肝心の発表する側が全くその内容を把握してなくて、全然語れてない上に、質問をしても全く答えが返ってこない。これは間違いなく人のプレゼン内容や資料を奪って発表してる確信して不採用にしたわ」


咲良さんの話を聞いて、私は苦笑を浮かべるしか出来なかった。やっぱり、裏切君は私のプレゼンデータを奪い、それを使って挑んだだなぁ……


「というより、茜ちゃん。どうしてあんな男と付き合ってたの?彼、高校時代から女遊びが激しくて度々問題になってたんだけど」


「えっ?そうなんですか!?」


「そうよ。だから、書類審査の時点で本当は落としてるはずなんだけど……」


「そうだったんですか……合コンで知り合って、そこから仲良くなった時はそんな風には感じなかったんですが……」


裏切君とは友人に無理矢理誘われた合コンで知り合った。彼がグイグイと積極的に私を口説いてきたので、つい流されて恋人関係になってしまったが、今にして思えばそれがいけなかったんだろう。


「合コン……ね。その話後で詳しく聞かせてもらえる?」


私の肩に手を置き、ニコリと黒い笑みを浮かべる百合花に私は「ヒイィ!?」と悲鳴を上げる。


「しかし、本当落ちているはずの人間が合格になっているか……これは、社内調査をする必要がありそうだな」


「当然したわ。けど、何故か人事部のパソコンが弄られたと思われる時間帯に、監視カメラが不具合を起こしていたわ」


「何だと?うちの監視カメラまで弄られるとは……完全に内部の人間の仕業だな」


「えぇ、だからこの事は詳しく調べてみるわ。茜ちゃんの件もあるし。絶対言い逃れが出来ない確固たる証拠を掴みとるつもりよ」


薫さんと咲良さんが完全に仕事モードで会話を始め、私はそれを呆然と眺めていた。すると、美香が私に声をかけてきた。


「ってか、お姉ちゃんって本当に男運ないよね。小中高と近づいてきた男性は皆百合花さん狙いで、お姉ちゃんに近づいたって話ばっかだし……」


「うぐっ!?今更昔の古傷に塩を振らないでよ!?」


「おまけに、今回百合花さんと上手くいった件も、元はまた男に裏切られたって話らしいじゃん」


「あぁ、そういえばその話も具体的に聞いてなかったわね。という訳で話してくれるわよね?」


有無を言わさぬ迫力ある黒い笑みを浮かべる百合花に、私はまたつい最近男に裏切られた話をせざるを得なかった……

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