男に裏切られた私、親友で幼馴染の財閥令嬢の家に結婚報告しました2

  うちの父さんと百合花の父さんが乾杯の声を上げ、そこから両家で和やかな食事会が始まった。すると、百合花のお兄さんであり東堂家の次期当主になる東堂 かおるさんと、その薫さんの婚約者藤林ぶしばやし 咲良さくらさんが声をかけてきた。


「百合花。茜君。結婚おめでとう。しかし、これでようやく百合花も念願の目標を叶えた訳か」


「ふふふ……本当に、いつも百合花ちゃんは茜ちゃんと結婚するんだって言ってたものね」


「兄さん。咲良さん。ありがとう。それと、私が何度も言った事はいちいち言わなくていいから」


百合花が軽く溜息をついてそう言うと、百合花の姉の東堂 麗花れいかさんがニヤリと笑いながら百合花に近づいて声をかけた。


「事実言ってたんがら仕方ねぇじゃん!小さい頃からお前の口癖は『茜と結婚する!』だったんだからよぉ!」


「だから、姉さん止めてよ!もう酔ってるの?」


「はっ!私が一杯ぐらいの酒で酔う訳ないだろう!」


  何事もクールにこなす百合花も、麗花さんの前じゃ妹らしくなるんだなぁとどうでもいい事を考えたが、私はここでようやく思っていた言葉を口に出す。


「あの……皆さん……私と百合花の結婚を反対に思ってたりしないんですか……?」


私がそう言葉を口にした途端、この場にいる全員がポカンとした表情になった。しばし、全員がポカンとしていたが先に口を開いたのは百合花のお父さんだった。


「何故だ?本当にどこぞの馬の骨がうちの娘を奪ったのならいざ知らず、娘のように思ってる茜ちゃんが本当に娘になってくれるんなら、こんなに喜ばしい事はないじゃないか」


「だな!俺も百合花ちゃんが本当の娘になるなら嬉しいしな!」


百合花のお父さんの言葉に、うちの父さんが何度も首を縦に振ってそう言った。


「もしかして、同性同士の結婚の事を問題に思っているのかい?もう同性同士の結婚は法律で認められているし、何も問題ないだろ」


  薫さんが言うように、現在この国では同性同士の結婚が認められている。と言っても、私が学生時代の頃は認められていなかった。

  が、4大財閥の一つである西園寺家の令嬢が、同性同士でも子供を作れる方法開発した為、生産性がどうのこうの言って人達を黙らせた。これにより、宗教的に認めない国以外は世界的に同性同士の結婚が認められた。


「だな。私の婚約者も女だからな。だから、そこはもう気にする事じゃないだろ」


  麗花さんは東堂家エリアのホストやキャバクラなどの夜のお店関連全体のオーナーを務めていて、「夜の女王」と呼ばれている。そして、今は彼女が最初に経営していたキャバクラの元No.1の娘と婚約している。ちなみに、その婚約者は現在はそのお店の店長を勤めている。


「まぁ、そういう事だから私達は百合花と茜ちゃんとの結婚に一切反対しないわよ」


「そうね。私も早く百合花ちゃんが娘にきてくれたら嬉しいわぁ〜」


百合花のお母さんと私の母が微笑みを浮かべそう言った事で、この話題はお終いとなり、それを察した百合花の妹である東堂 六花りっかと、私の妹である浅間 美香みかが私達の両親に近づいて声をかけた。


「お父様。お母様。私達からも報告があります」


「ん?どうしたんだい?2人とも改まって……」


「あの……その……実は……私達も……付き合ってます……」


「付き合ってる……って、まさか……うちの娘とかい……?」


「はい。もちろんです。お父様。それにおじさま」


  美香は顔を真っ赤にモジモジとしながらそう言い、六花ちゃんが美香の腕を嬉しうに組みながらそう答えると、この場にいる者達が沸いた。


「おぉ!それはめでたい!娘に思ってる子が2人に増える訳か!」


「だな!宗ちゃん!今日は宴だ!宴!飲むぞ!呑むぞ!」


「もう、貴方ってば。嬉しいのは分かるけど落ち着いて」


「貴方もよ!全く、いつまで経っても子供なんだから!」


「まぁ、父さん達の気持ちはよく分かるよ」


「そうねぇ。こんな嬉しいお話を2つも聞けるなんてね」


「だな!アタシも婚約者連れて来るんだったなぁ〜」


みんながそれぞれそんな事を言っているが、私は2人の報告を受けポカンとしていたが、すぐに美香を問い詰めた。


「ちょっ!?美香!いつの間に!?いつから付き合ってたの!?」


「えっと……その……高校の時から……」


美香は私の6つ下で、現在20歳の現役大学生。六花ちゃんも美香と同い年で同じ大学に通ってる。確か、私達と同じく高校も同じだったが……


「そんな前から!?何で言わなかったのよ!?」


「いや……それは……その……」


何故か言いにくそうにしている美香。そんな美香の様子を察したうちの母が口を開く。


「あぁ……もしかして、2人が付き合い出したのって、茜が何故か落ち込んで部屋に引きこもっていたあの時?」


うちの母の言葉を受け、美香が気まずそうに頷いた。母の言葉で、あの時の事を思い出した私は思わず口元が引きつる。


「その話。詳しく聞かせてくれる?」


百合花が物凄い黒い笑顔を浮かべながら私の肩に手をポンと置いてそう言った。その迫力に、思わず「ヒイィ!?」と悲鳴を上げ、あの当時の事を百合花にちゃんと詳しく話す事になった。




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