フィットニア

帰ってきた彼女に声をかけた。

「よかったら…遊びに行かない?」

「え?」

彼女は少し不思議そうな顔でこちらを伺う。

『そこまで仲良かったっけ。』

心の奥が少し黒ずんだ。

「良かったらでいいんだけど。」

「もー、何それ!全然いいよ!いつ遊ぶ〜?」

パッと花咲いた笑顔に私は胸を撫で下ろした。

「ここ最近だとね〜」

スクロールするカレンダーアプリにはぎっしりと文字が詰まっていた。

歯医者、

塾、

ピアノ、

ライブ、

〇〇とご飯、

〇〇と映画、

私もカレンダーアプリを一応見てみる。

バイト、

バイト、

バイト、

なんてJKらしさのないカレンダーなんだ。

「今日もいけるけどどう?」

「今日…。」

私は分かっていながらも今日の日にちを探す。

心臓がうるさい。

今日?今日って、なんの準備もしてないよ。

髪のセットとか、お金とか、持ち物だって。

心のどこかで行きたくない、と思う。

でも、それ以上に、

「行く。」

彼女の周りで花が舞う。

「うん!じゃあ、一緒に帰ろ!カラオケでもいい?」

「うん。ありがとう。」

私は緩んだ口元をスマホで隠した。

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