第9話ファッションセンター

 鮪は鮪に、自分の重ね着していたパーカーを着せていた。それ以外は何も着せていなかった。


 衝動で始めた旅の初日に財閥令嬢のヒモになり、上げ膳据え膳当たり前。着る物の世話もしてもらっていたので、そこを飛び出したら元の着た切り雀である鮪。

 ただいま竹馬で相乗り中なので、後ろの方の鮪を下から覗き込まれたら丸見えである。

 そんな折、運良くタオルファッションセンターを見つけた鮪。ちょうどいいと旅の装いを揃えることにした。


 上からタオルキャップ、タオルパーカー、貼るタオル、タオルスニーカー。全身タオルファッションに身を包んだ鮪を竹馬の後ろに乗せて、鮪は今日の宿をどうするか考えていた。


 考えに考えた結果、海岸沿いの岩場に留まり、竹馬の上で寝ることにした。

 脇見運転で、岩場に竹馬が刺さって抜けなくなったのだ。

 鍵もかけずに竹馬から離れるわけにはいかないので、鮪と鮪は二本一組である竹馬の特性を生かして、間にぶら下がるようにテントを張って寝ることにした。

 鮪は鮪にテントになってもらった。テントの形を想像して全身を愛撫したらなった。


(明日は何を想像しながら触ろう)


 岩場に潮が満ちようとしていた。

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