第8話同一人物同士
上から下まで、足の爪から髪型まで、何から何まで同じ形である自分そのままの存在に手を触れる鮪。
目の前の外向き垂れ気味Jカップを鷲掴みにすると、自分の外向き垂れ気味Jカップが、目の前の自分に鷲掴みにされた。
違いがあるとすれば、目の前の鮪は無反応であった。
それが何だか面白くない鮪が、ももを目の前の自分の脚の間で擦り始めると、体勢的に目の前の自分も擦れ始めた。
それでもなお無反応なのが面白くない鮪は、今度は体を打ち付けるように強く擦り合わせ始めた。
向こうの鮪も打ち付けるように強く擦り合わせ始めると、鮪と鮪の体はぶつかり合い、浴室に響き渡るほどの快音を上げた。
次に体を打ち付け合うと、それほどいい音は鳴らなかった。
それが鮪に火をつけたらしく、鮪は鮪の体に体を打ちつけた。すると鮪は鮪の体に、お返しとばかりに体を打ちつけた。鮪が鮪の体に体を打ち付けると鮪の体に鮪の体を打ち付けるが鮪が鮪を打ち付けると鮪が体を鮪の体に打ち付けたため鮪の体は鮪の体に打ち付けられ鮪の体は鮪の体であった。
鮪の体は鮪の体だったのである。
快音を出し過ぎてタオルバーを出禁になった鮪と鮪が、バーの入り口から塩まみれになって出てくると、先程ぶりの女子高生フォークデュオと出会った。
手を振りながら近づくと、背の低い方が話しかけてきた。
「え?双子だったんですか」
「いや、両方とも私」
背の高い方がたずねる。
「一卵性っていうやつですか?」
「いや、両方とも私だったの。ビックリだよね」
自分達はからかわれているのだと思った身長差女子高生フォークデュオは、質問を続けた。
「顔がよく思い出せないんですけど、おっきいカステラの人一緒じゃないんですか?」
「洗った」
「えっ!いないってことは、溶けちゃったんですか?」
「いや、隣にいる私がカステラだったの」
何を言っているのかわからないという顔をしている身長差女子高生フォークデュオに、鮪はことのあらましを話した。
「タオルバーでカステラ洗ってたらそれが自分の体に似てきてさ、本当に自分の体にそっくりだなぁってさわってたら、何とそれ自分の体だったの」
「はあ、ゆりっぺわかった?」
「わかんない。じゃあ、さおたんにはわかるわけないか」
「いや、聞けし」
身長差女子高生フォークデュオ「しましまはんどたおる's」は、もう少し話を聞いてみることにした。
「何か体、白くないですか?」
「ああコレ?迷惑行為とかで出禁になってさ」
「できん」
「出入り禁止の略だよ、さおたん」
「は?わかってますが?」
「塩撒かれる人初めて見た。何したんですか?」
「ん?オナニー」
「潮撒いたんですか?」と、ゆりっぺは切り返そうとしたが、隣のさおたんを見ることでブレーキがかかった。
「オナニー…だと思うんだけどなぁ。私と私とでしてたし。声出てなかったと思ったんだけど、パーン!パーン!っていい音出てたからなー。で、セックスしてると勘違いされたらしくてさ」
鮪は自分の言葉に合わせて、両手の平を打ち合わせた。
「で、帰る時フロントで「施設内での性交渉は罰金」て言われたから、「いやいや、オナッてただけだから、同一人物同士だから」ってさっきみたいな説明をしたら言い合いになっちゃったんだわ」
しましまはんどたおる'sは、結局最後まで聞いてもまったくわからない話を聞かせてくれた観光客の背中を、手を振って見送った。
「さおたん」
「どしたん、ゆりっぺ」
「いっしょにタオルバー行かない?」
「いくよ。いこうって言ったからここまで来て、ほんでここであのおねぇさん達と再開したんじゃん」
「同じ部屋?」
「なにが」
「同じ部屋入るの?」
「いつもそんなこと聴いてこないじゃん。なに、あらたまって」
「同じ部屋でいい?」
「しつこっ」
「一緒の部屋入るの?」
「いつも一緒に同じ部屋入るじゃん。なんでわざわざ聴いてくるかな」
「そうだけど、そうなんだ。へー」
40分後、しましまはんどたおる'sはタオルバーを後にした。
自分たちは出禁にならなかったので、あのおねぇさん達はどんだけ激しく音を出したんだろうと思った。
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