第7話転がしカステラの洗い鮪
屋台巡りを堪能した鮪とカステラ。今日の締めくくりに、タオルパンフレットに載っていた今注目の店へと向かった。
「二人です」
「32号室へご案内ー」
ここは今一番ホットな今治限定ローカルチェーン店、タオルバーである。
今治の名産品であるタオルを堪能するための店だそうで、二人はまず個室に通されると五種類の色•肌触り•香りの異なるおしぼりを楽しんだ。
ここはそれらを参考にバスタオルを注文したら、奥の個室風呂で入浴がてら様々なタオル素材製品を楽しむという風営法余裕の健全店である。
地元ならではの店を堪能したかったというのもあったが、鮪がこの店を選んだのには他に理由があった。
カステラを転がし過ぎたのである。
鮪は自分の体をひとしきり洗うと、バスマットの上で棒立ちのカステラを洗い始めた。転がして運ぶ時、車道をガンガン転がしたことを悪いと思っていたからである。
カステラの汚れっぷりは豪快で、全身黒いブツブツがこびりついていた。シャワーで全体を流し、張り付いていた軍手を剥がし終えると、鮪は垢すりタオルでカステラを磨き始めた。
鮪はカステラの体を一擦りするごとに、不思議な感覚にのまれていった。影が薄いというか、目の前にいるのに印象程度しか認識できなかったカステラの全体像が、タオルで擦るたびにハッキリしてきたのである。
いうなれば、触覚が視覚に作用している感覚であった。カステラの全身を洗い終えた頃には、鮪は隅から隅まで触ったソレをハッキリと視覚的に認識していた。
いや、触った事で視覚的に形を認識したのではなく、自分が隅々まで触った事のある形にカステラが変化したのだと、鮪は思い直した。
当たり前だが、人の形が触った人間の記憶で変化するわけがない。しかし、その前提を覆さなければ説明できないことが今、鮪の目の前で起きているのだ。
「改めまして。私は鮪」
自己紹介したJカップ美少女に返事が返される。
「奇遇ですね」
「ね」
目の前に立っていたのは、全く同じ姿のJカップ美少女であった。
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