第5話旅の道連れ
香川に用は無いので、上陸せず瀬戸内海を行く鮪。独立国家小豆島の前を横切っていると、ヒッチハイカーに出くわした。
「あのー私、地球内生命体なんですけど」
そう自己紹介してきたヒッチハイカーに、鮪はなんとも評し難い印象を受けた。目の前にいるのに、印象しか存在しないのだ。しいていうなれば、パンダ臭のするカステラであった。ねじ止めの余地がある。
「あなたの乗っているソレ、この星では一般的な乗り物なんですか?」
竹馬も知らないとは、都会人に違いない。そう思った鮪は親切にこたえた。
「コレは伊賀地方で有名な忍者の武器だよ」
パンカスは鳴門の渦に自分の乗り物を取られてしまったそうで、有体力学を思い浮かべることで海面に浮上し、漂いに漂って今ここにいたるらしい。
「ニンジャとは何ですか?」
「伊賀地方に住む人だよ。わたしのように。この乗り物は竹馬。広い歩幅を活かして高速で移動できるよ。昔は下の方を斜めに切って、敵を踏みつけたりしてたんだって」
波まかせにしか動けないパンカスに頼まれて、鮪は竹馬でパンカスに蹴りを入れ続けた。パンカスは鮪以上に行くあてのない旅をしているらしく、鮪の向かう先でいいので陸地まで蹴り込んで欲しいというのだ。
到着した地は、今治であった。
さすが今治。そこかしこがタオル地で出来ている。
初めての四国に胸を踊らせながら、鮪は「もうここでいいよ」と言い出さないパンカスを蹴り転がし、観光に繰り出した。
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