第4話幸福
鮪が橋桁で出会った女性の名前は、シャーリー橋桁。この世の全ての橋桁を独占する、橋桁一族の娘である。
シャーリーは鮪に、望むものから望まないものまで、何でも与えた。
鮪から「勢いで旅に出たため着替えを持っていない」と聞けば、自分とお揃いのブランドの服を着せてポケットまみれにした。
鮪の腹の虫が鳴けば竹馬に二人乗りして、向かいの橋桁にある自分の所有するリゾートホテルまで、散歩がてら食事をしにいった。
鮪が芸術家志望だと言えば、自分がモデルをかって出て、絵をホテルに飾らせた。
鮪が肘をついて食事をすれば母親になって叱り、映画館に行きたいと言えば友達になり、当てがわれた部屋で鱒を描くことに熱中していると知れば乱入して恋人ぶった。
鮪が与えられる生活を受け入れ続けて、トイレットペーパーが4ロールは消費された頃だった。
リビングでシャーリーと重なっている時、鮪がすりおろされる大根のようにしていると、シャーリーがその様子をスマホでムービー撮映しながらこう言った。
「マグちゃんが上で私が下だと、私達お寿司になっちゃうね」
果てた後、鮪は橋桁に来た時のままのいでたちに戻り、眠るシャーリーのもとを去った。
与えられた物とリュックの中身は全て置き去りにし、西へと向かった。
その日シャーリーを起こしたのは、買ったまま仕舞い込んでいたはずの炊飯器から流れた、炊きあがりを告げる電子音だった。
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