第2話旅の空

 ポートタワーを横切った頃、竹馬に波がぶつかる感覚にも慣れた鮪は、足の裏に伝わる波ではない「何か」による違和感を感じ取った。

 旅の足に何かあっては大変と、鮪は明石海峡大橋の橋桁でメンテナンスオナニーご飯トイレ休憩をとることにした。


 橋桁に腰掛け竹馬を引き上げると、そこには様々な魚が突き刺さっていた。

 しゃにむに瀬戸内海を走り続けた鮪は、座って一息ついたせいか、思った以上の疲労感に襲われ横になった。


 果てた後、鮪は片方だけ日焼けした胸をしまうと、食事の準備を始めた。

 魚が刺さったままの竹馬を腕いっぱいに太陽へと伸ばすと、距離感を無視したのが良かったのか、焼き魚が完成した。


 食後、用を足せる死角はないものかと後ろを振り返ると、鮪は誰かが橋脚の陰から自分を見ていた事に気が付いた。

 完全に目が合ってしまった相手は、橋桁に上陸してからの一部始終を見ていた気不味さを誤魔化すために、舞台上であれば喝采を浴びるくらいの口笛を吹いて、軽やかなステップを踏んで鮪への接近を開始した。

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