第44話 挑戦の日

専門学校の入学試験の日が近づいてきた。真一は日々試験に向けた準備を進めながら、書店でのアルバイトや学校生活をいつも通り続けていた。緊張や不安が混ざり合う中で、それでも彼の心には、「自分の言葉を届けたい」という目標がしっかりと根付いていた。


試験前夜


試験の前日、真一は机に向かい、自己表現の課題用に書き上げた文章をもう一度読み直していた。


完成した文章の一部:

「本は、私にとって救いの手を差し伸べてくれる存在でした。中学時代、学校生活に悩んでいたとき、本の中の言葉が私の背中を押してくれました。今では書店での経験を通じて、私もその言葉を誰かに届ける仕事がしたいと強く思っています。

未来に向けて、私は本が持つ力を信じ、その力を最大限に活かす仕事をしたいです。」


書き終えた文章を読み返しながら、真一は自分の思いを形にすることができたことに小さな自信を感じていた。


試験当日


試験当日、真一は少し緊張しながらも、書店での経験や学校での学びが背中を押してくれていると感じていた。試験会場に入ると、同じように緊張した面持ちの受験生たちが席に座り、それぞれが自分の未来を切り開こうとしているのが伝わってきた。


最初の筆記試験は、国語や文章作成の問題だった。真一は一問一問丁寧に取り組み、自分が学んできたことを思い出しながらペンを動かしていった。


自己表現の課題


最後に行われたのは、真一が最も大切にしていた自己表現の課題だった。与えられた時間内に自分の思いを言葉にし、試験官に向けて発表する形式だった。


真一の番が回ってきたとき、緊張で手が少し震えたが、深呼吸をして心を落ち着けた。そして、静かに自分の文章を読み上げ始めた。


「本は、私の人生を変えるきっかけをくれました。私はこれからも、本を通じて誰かの背中を押し、未来を切り開く手助けをしたいと思っています。そのために、この学校で学び、言葉を届ける力を磨きたいです。」


読み終わったとき、教室内は静かだったが、試験官の一人が微笑みながらうなずいたのが目に入り、真一は少しだけ肩の力が抜けた。


試験後の帰り道


試験が終わり、真一は解放感と共に疲れを感じながら帰り道を歩いていた。結果がどうなるかは分からないが、自分の全力を出せたことに満足していた。


「自分の言葉が届いているといいな……」


ふと夜空を見上げると、そこにはいつもと変わらない星たちが輝いていた。その光は、自分が進むべき道を静かに照らしているように感じられた。


夜空の下での決意


家に帰り、ノートを開いて今日の出来事を書き記した。


ノートの記録:

「初めての挑戦を終えた。結果がどうであれ、自分の言葉を信じて前に進めたことに意味がある。これからも、言葉を届ける力を磨いていこう。」


真一は少しだけ深呼吸をして、夜空に目を向けた。そして、自分の未来に向けてまた一歩を踏み出す決意を新たにした。星たちの光が、確かにその道を見守っているようだった。

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朝が弱くて、マルチが苦手で、一点集中するしか出来なかった1461日 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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