第15話 自分の居場所を探すということ

居場所とは何だろう。誰かにとっては家族や友人のいる場所かもしれないし、仕事や趣味の中にそれを見出す人もいるだろう。しかし、私にとって「居場所」とは、自分が無理をせずにいられる空間のことだと思う。けれど、それを見つけるのは意外と難しい。


中学校の頃、私は自分の居場所を持っていなかった。教室のどこに座っていても、誰といても、自分がそこに属しているとは感じられなかった。むしろ、そこにいる自分が「場違い」な存在であるような気がしてならなかった。笑われるたびに、自分の存在を否定されたように思い、学校に行くこと自体が苦痛だった。


高校に進学しても、居場所を見つけるのは簡単ではなかった。夜間高校という独特な環境では、みんなが違う目的や事情を抱えている。昼間に働く人、家庭を支える人、再出発を目指す人。それぞれの背景が違いすぎて、話を合わせることが難しいと感じることもある。


そんな中で気づいたのは、居場所を探すためには「少しだけ勇気が必要だ」ということだ。自分から話しかけてみる、苦手だと思っていたことに挑戦してみる。それがうまくいかなくても、「自分は努力した」という感覚が少しだけ自分を軽くしてくれる。


それでも、居場所を見つけるのは一朝一夕ではいかない。時には失敗し、孤独を感じることもある。けれど、少しずつ自分のペースで歩いていけば、いつか「ここだ」と思える場所にたどり着けるのではないかと思う。


今の私にとって居場所は、学校の中に少しだけ広がり始めている。授業で意見を求められ、うまく答えられたとき。グループワークで「ありがとう」と言われたとき。それはまだ曖昧なものだけれど、確かに存在している。


居場所を見つけるというのは、きっと「自分自身を受け入れる」ことでもあるのだろう。誰かに否定されることが怖くて縮こまっていた自分が、「少しくらい失敗してもいい」と思えるようになった。それが、私の小さな進歩だ。


居場所は待っているだけでは見つからない。少しの勇気と、小さな行動。それが、私を変え始めている。だから、これからも自分のペースで、自分だけの居場所を探していきたいと思う。

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